西部謙司 フットボール・ラボ

【マリノス大展望】「J1最速クラスの攻撃」というジレンマ。川崎の牙城を崩すために解消すべき構造的な弱点とは?

NISSAN GT-R車のようなスピードで相手陣内に攻め込むマリノスのプレースタイル。スピード違反級の不変の攻撃姿勢はときに諸刃の剣となって自らをクラッシュさせてしまう。ブレーキをかけるべきか、アクセルを踏み続けるべきか、上級のエンジンを搭載したマリノスはいかにそのジレンマを解消して王者・川崎に挑むべきか、いざピットイン――。

失点が順位のバロメーターになっている打倒・川崎の一番手 

昨季2位の横浜F・マリノスは攻撃力が際立ちます。82ゴールは1点差ですが川崎フロンターレを上回る最多得点でした。一方で勝ち点は川崎と13ポイント差。一時は並びそうなところまで追い上げましたが、引き離されてしまっています。

数字だけで見ればやはり失点が多いということでしょうかね。優勝した川崎はわずか28失点なのに対して、横浜FM35失点。失点が20点台の川崎がむしろ異常なのであって、30点台ならそう多くはないです。ただ、得失点の多寡というより、得点が多いけど失点もそれなりというのは横浜FMのプレースタイルに起因するので、そこは来季へのポイントなのかなと思います。

アンジェ・ポステコグルー監督が就任した2018年の得失点がともに58でした。得点は優勝した川崎と1点差のリーグ2位。失点は降格したV・ファーレン長崎、15位だった名古屋グランパスの次の3番目の多さでした。このシーズンは12位です。プレースタイルを変革した初年度で完成度はまだまだだったわけですが、得点も失点も多いという体質はすでに表れていました。

優勝した2019年は最多68得点、失点も35と大幅に減らしています。2位のFC東京が29失点、3位鹿島アントラーズが30失点なので最少失点とまではいきませんが、爆発的な得点力があるのでこれぐらいの失点に抑えれば優勝に手が届くわけです。

2020年は得点69、失点59で9位。このシーズンは川崎が88ゴールという無茶苦茶な得点数なので遠く及びませんでしたが、それでもリーグ2位です。しかし、失点が2018年並みに戻ってしまった。

得点に関しては一貫してリーグの1、2位を維持している一方で、失点の数は波があります。昨季の失点数なら優勝してもおかしくなかったのですが、川崎の牙城を崩し切れなかったということでしょう。

主力移籍もしっかり補強。構造的な弱点を解消できれば優勝も 

失点を減らせばいいというと、まず守備力を強化しようと思いがちですが、横浜FMの武器は攻撃力ですからそれを鈍らせてしまっては元も子もありません。

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