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「星野はいつも胃が痛い」らしいが……【第16節・磐田戦レビュー】

 

「前半がすべて」と嶋田は言った

 

昨年はこのスタジアムで0−6という大量失点を味わった。今年は点差こそ縮まったが、個人的にはそれに勝るとも劣らない後味の悪さが残った。……試合直後は、だ。

 

それは試合終盤のイメージに引っ張られていたからだったのかもしれない。選手交代を重ねていくとゴールの匂いは少なくなっていったが、それはこれまでも同じ。一朝一夕には解消されない課題だろう。失点してからはミスのオンパレードだったし、敵のブロックに突撃してボールを失いカウンターを受けるという光景は昨シーズンよく見た光景。パスもドリブルもキープも状況判断も、イージーなミスが多すぎた。相手のプレッシャーとも呼べないくらいのプレッシャーでロストをしているようでは試合にならない。そこは戦術や采配以前の問題だろう。

 

あらためて見返してみると、前半は極端に悪いわけではなかった。「前半はけっこう点を取れる匂いもチームとしてあった」というのは嶋田慎太郎。丹羽詩温にしても嶋田にしても、やや「自分が、自分が」という気持ちが前面に出た場面もあったが、彼らには難しい局面で決める技術もあるし、これまでもシュートテクニックを見せている(嶋田の試合後のカードに少し救われた思いもあったが、そのことについては明日各予定)。

 

「ジュビロもあまりよくなくて、ミスもあったので、先制できればよかった。前半がすべて。そこで点がとれるかどうか。ああいう外国人ひとりでやられるのは仕方のないこと。とれるところでとっておかないといけない」と嶋田。ニアを抜かれてはしまった後藤雅明は「自分としてはやられていけないところをやられてしまった」と反省の弁を述べている。この試合でも安定感抜群で、これまでも何度もピンチを防いできた後藤にしては珍しいプレーだったが、嶋田も口にしたようにルキアンぐらいになれば一発はあると思わなければいけない。

 

だからこそ決めるべきところで決めることが重要だった。瀬沼優司の24分の決定機は悔やんでも仕方がない。1000回同じシーンがあったなら、瀬沼自身も998回ぐらいは決められるだろう。チームが悪循環に入っているときというのはそういうことが起こりがちだ。前節の終了間際に丹羽詩温のシュートが相手にあたったのにゴールキックと判定されたのも同じことだろう。

 

準備してきたことを出せないもどかしさ

 

もちろんうまくいっていないところもあった。セカンドボールを拾えない、選手間の距離が遠い、攻撃のスイッチが入ったときにミスが出るという課題はほとんど解決されていない。柳下監督も攻守における選手間の距離については気にしており、「お互いの距離感が遠すぎるとダメだから、そこを修正するしかない。慎太郎がボールをもったときに2トップがふたりとも離れている」とも口にしていた。

 

それに加えて藤村慶太や松田陸や嶋田、丹羽なども開幕時とくらべると少し元気がないのが気になる。昨日の試合に限っては太平洋側の暑さの洗礼もあったようだ。公式記録上では25.7℃、湿度48%だったが、昨年の北九州のように、前半から疲れていた選手たちもいたとのこと。数字以上に戦いにくいコンディションだったのかもしれない。

 

さらに柳下監督が最も強調していたのが、スカウティングをして練習で落とし込んだにもかかわらず、その狙いが出せていないということ。「準備していたことをやってやられるのなら仕方ない。それをやらないのでは修正のしようがない」。

 

映像を見返してみても、攻撃時には右も左もサイドにスペースはある。タイミングよくパスを出したり動き出せば、もう少しチャンスに繋がりそうな場面もあった。10分には伊藤洋輝、松本昌也を前に釣りだして石尾崚雅がフィード。丹羽がそのスペースに走り込んで繋ぎ、最後は嶋田がミドルシュートを打っている。また、8分には柳下監督がテクニカルエリアで「泰基」と叫んでいたが、その直前にホドルフォが裏をとっていたところで渡邊はパスを出せなかった。指揮官は「そんなにチャンスがあるわけでもないから、隙ができたときに狙わないといけない」とも話していたが、渡邊にとっては前にいかにタイミングよく出せるかは、長くつきまとっている課題だ。

 

「狙いはこうだよってトレーニングしているわけだから、やってほしい。やって難しかったら変えるから。泰基にも『縦パスがミスになってもいい』と言っている」。柳下監督はこうも言うが、どうもうまくいかない。選手とコーチングスタッフの間でどこかにボタンの掛け違いがあるのかもしれない。

 

かなり大きな声を出していた指揮官は磐田戦では柳下監督はのど飴をなめていたという。大分は浅田飴がスポンサーになったが、金沢ものど飴製造会社を早急に探すべきかもしれない。「星野はいつも胃が痛い」ではないが「柳下はいつも喉が痛い」。

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