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【無料記事】全力を尽くして見えた、福島ユナイテッドFCの今の実力【天皇杯2回戦浦和戦レビュー】

天皇杯2回戦

浦和レッズ1-0(前半0-0/後半1-0)福島ユナイテッドFC
得点者
(浦和)47分明本考浩

天皇杯JFA第102回全日本サッカー選手権大会2回戦は浦和駒場スタジアムにて、J1浦和レッズと対戦した。福島ユナイテッドFCはJ3リーグ10試合で3失点という守備力の高さを見せ、前半はピンチもありながら無失点で切り抜けたが、後半開始早々の47分MFダヴィド・モーベルグからパスを受けたDF明本考浩に素晴らしいミドルシュートを決められ、先制を許した。その後福島は途中交代で入ったFW森晃太やMF橋本陸がシュートを放ったが決めきれず、0-1で敗戦し、天皇杯敗退となった。

主に攻撃面ではなかなかシュートまで持ち込めず、前半はシュート0本、後半もシュート2本に押し込まれ、浦和のシュートが14本だったことを考えると、敗戦は妥当といったところだろう。

それでも守備では嫌なスペースに入り込まれ、多くのピンチはありながらも、最後まで集中して体を張り続け、明本のスーパーミドルによる失点の他は、全力で抑え込んだ。

相手に呑まれて力を出し切れなかった、ということはなく、全力を出し切った結果の敗戦。今の自分たちの実力を知ることのできた試合だった。

1.思うに任せない攻撃、それでもチャレンジし続けた

福島は宮崎戦と同じメンバー。服部監督が事前に予告した通りここ最近のベストメンバーを揃えてきた。

浦和もほぼベストメンバー。過密日程の中だが、ベストメンバー同士での戦いとなった。

福島はこれまでJ3で得意としてきた、縦パスを起点として決定機をつくり出し、クロスボールからシュートチャンスをつくるといったことが、相手の高い察知能力もあってなかなかできなかった。

ボールを奪えても、その次のパスがずれてしまうこともあれば、トラップが大きくなってまた相手に奪われてしまうこともあった。良い狙いがありJ3レベルであれば通っていたであろうパスも、相手の素速い察知能力でカットされてしまうこともあった。「守備のレベルが上がればパスが通ったりクロスが通ったりしなくなります」と服部年宏監督も相手の守備レベルが普段のJ3での対戦相手よりもかなり上だったことを認めた。

MF諸岡裕人は「自分自身もそうですが周りの選手も見えないプレッシャーと戦っていたとすごく感じます」と相手に呑まれたとまではいかないが、いつもと違う雰囲気、大観衆の中のプレーということも影響したかもしれない。またGK山本海人は「思ったよりも浦和さんの取られたあとのプレスが速いことに驚きましたし、切り替えの速さは僕たちももっと追求していかなければならないな、と感じました」と語る通り、J1のプレー強度の中での切り替えの速さにはかなり苦しんだ。

それでもいつも通りの攻撃の形を出そうと、選手たちはチャレンジを続けた。雪江悠人やDF大武峻はカットされても果敢に縦パスを入れて、何とか攻撃のリズムを作ろうとしていた。DF北村椋太やDF田中康介も何とかクロスまで持って行こうと奮闘していた。その結果、77分北村からボールを受けたFW森晃太のシュート、89分田中のクロスからのMF橋本陸のヘディングシュートにつながった。シュートチャンスはこの2本だけだったが、いずれも可能性を感じられたチャンスで、諦めずにチャレンジし続けた成果であろう。

2.評価できる最少失点に抑えた守備

一方の守備も、いつもの試合以上に決定機をつくられた。山本は「J3のレベルと比べると、しっかり崩されてピンチを作られた場面もありますし、これくらいでいいだろうとか、これくらいで飛んでこないだろうというシュートが、失点もそうですが、良いシュートとなって飛んできます。それがJ1の質だと思いますし、普段自分たちがやっていることがまだまだ完成形ではないということが分かったんじゃないかと思います」と浦和の攻撃の質の高さを語った。諸岡も「0-1以上の差を感じた」と語り、「失点の部分も自分がもう1個寄せていればとか、スライドの意識とか考えました」と悔やんだ。

それでも、相手をよく見て立ち位置を取るスライドの意識と、タイミング良く球際に強く行くプレー、そしてFWがプレスバックして守備陣を助けるということは、90分間やり続けることができていた。もちろん相手にかわされピンチになった場面もあったが、そういう時は最後に体を投げ出して止めることもできていた。これまで積み上げてきた守備については一定の評価ができる。

服部監督は疲れの見えていたFW高橋潤哉を早めに代えたのも功を奏した。「連戦というところもあって少しミスがあったり、動き出しが遅い時間があったり、守備のところでさらに負荷がかかるので早めに代えたというところです」と、奮闘は見せていたものの守備面での貢献が難しくなってきたのを冷静に見極めて、早めに交代して、MF新井光と森の推進力に賭けたのは好采配だった。

3.選手たちの個の成長を促すきっかけに

J3である程度結果が出ていると、どうしてもこのくらいで良いだろうと目の前の結果が出ていることに満足しがちである。

しかし、実際にJ1のチームとやることで、上には上がいて、もっともっと個がレベルアップして「J3の良い選手」ではなく「J3では別格で圧倒的で、J1やJ2でもプレーできる選手」を目指していかなければいけないということが実感できたのではないだろうか。5年間出場できなかった天皇杯本戦だったが、J1相手に真剣勝負をやったことの意義は非常に大きい。

「浦和と試合ができて良かったね」で終わってはいけない。選手はそれぞれ通用したプレーとそうでなかったプレーを体感したと思う。それをJ3リーグに持ち帰って、日々チャレンジし続け、チャレンジの質を上げる努力を積み重ねなければいけない。J2昇格はその先にある。ぜひ、日々の練習、そして次の藤枝MYFC戦から果敢なチャレンジを見せてほしい。

最後にベストメンバーを揃え、サポーターも含めて全力でぶつかっていただいた浦和には本当に感謝したい。「攻撃的でやるべきことが整理されていて、福島は好きなやり方のサッカーだった」と最大限のリスペクトを示してくれたリカルド・ロドリゲス監督にも感謝したい。おかげで選手たちの成長の糧が多く見つかったことがこの試合の一番の収穫だった。

(本日6月2日夕方はJ3第11節藤枝戦に向けた選手コメントをお送りいたします)

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