「GELマガ」鹿島アントラーズ番記者・田中滋WEBマガジン

【家族の風景】岡本英也(現・新潟)「俺は元気じゃないっす(笑)」(2013.03.25)

 < 2012年、鹿島アントラーズ在籍 >

NACK5スタジアムは、ホーム大宮のファンが歓声を上げていた。後半26分に渡邉大剛に代わって投入されたルーキーの富山貴光が、ピッチに入ってからわずか5分で結果を出し、プロ初ゴールで待望の先制点をもたらしていたからだ。

追いつきたい新潟は、当然ながら攻撃のカードを切る。そして、柳下正明監督が呼び寄せたのは鈴木武蔵。この日の新潟は2トップを組んでおり、ブルーノ・ロペスと田中達也が先発していた。そして、途中投入されたのが川又堅碁と鈴木武蔵。最後までベンチに座ることになったFWは岡本英也だった。

ミックスゾーンで待っていると、こちらの姿に気がついた岡本は笑顔で近づいてきてくれた。

「元気そうっすね。俺は元気じゃないっす(笑)」

本音とも冗談ともつかない台詞が口を突く。この日の試合で明らかになったのはFWの5番手であるという現実だった。ついつい自嘲気味の言葉が出るのも無理はなかった。

「合宿のときは調子が良かったんです。調子が良すぎたのかもしれない」

岡本は、鹿島との契約をもう1年残していた。しかし、新潟は違約金を払ってでも岡本を欲しがってくれた。仲の良かった本田拓也などは「残った方がいい」と助言を送ったようだが、岡本は新天地での活躍を誓い鹿島をあとにしたのだった。

移籍先の新潟は想像以上の寒さだったそうだ。岡本は鹿島にいるときからその髪型をいじられることが多く、FREAKS(※1)でも「ボールが刺さる」など散々な言われようだったが、寒い新潟では「マジでガチガチに固まります。(整髪料は)なにもいらないくらい(笑)」と笑う。

ただ、予想外だったのは寒さだけではなかった。

「守備の役割を求められることはわかっていたのですが、想像以上でした」

新潟の指揮官を務めているのは柳下監督。FWにも細かな指示を出し、守備での献身性を求めていた。いままで無いものを求められることで成長が促されるという期待もあったのだろうが、現実は甘くなかった。

しかし、20日のナビスコ杯では90分のフル出場を果たす。放ったシュートは4本。後半には決定的な場面でゴール前に走り込むも、振り抜いた左足はクロスにうまくヒットせず枠を捉えることができなかった。

試合後には「決めないとダメ」と悔しさを露わにしたという。

福岡で結果を残し、意気揚々と鹿島へ移籍したがそこでは成果を残すことができなかった。そして、新潟へ移籍。そこでも同じような1年となってしまえば、岡本の選手としての価値はガタ落ちになる。代理人の戦略もあるのだろうが、一度は鹿島のユニホームに袖を通した選手だ。なんとか活躍をして4月10日の対戦では先発でピッチに立って欲しい。

※1 … 鹿島アントラーズの広報誌です。詳細は下記URLをご確認ください。
http://www.so-net.ne.jp/antlers/fanzone/freaks/index.html

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