「GELマガ」鹿島アントラーズ番記者・田中滋WEBマガジン

【宮崎キャンプレポート】非凡な才能を感じさせた久保田和音と腕組みするトニーニョ・セレーゾ/(2015.01.25)

 宮崎キャンプが始まるといよいよシーズンの目前という感じがしてくる。チームに遅れること3日、キャンプに合流したのでさっそくチームの様子をお伝えしたい。
 ここ数日、午前中は、若手+新加入選手のみが集められ、チームとしてどういう攻撃の組み立て方をするのかに主眼が置かれているそうだ。この日は、クラブハウスでもよくやっているディフェンスを入れずにオフェンスだけでパスをまわすビルドアップの練習を実施。高崎寛之、ファン・ソッコ、久保田和音、鈴木優磨、大橋尚史らにチームの約束事を叩き込むことが第一の目的のようだ(加えて、キャンプにはユースから千葉、田中、平戸、町田が参加している)。
 CBからSBに一度当ててから逆サイドに展開する。これがセレーゾの基本の攻め方。逆サイドに展開するパターンはCBからまわす場合もあれば、ボランチを経由する場合もあり、いくつものバリエーションを持って実践されていた。

ポジションに付いていた選手は以下の通り。

左SB:鈴木隆雅
左CB:山村和也or町田浩樹
右CB:ファン・ソッコ
右SB:伊東幸敏、平戸太貴
ボランチ:久保田和音、大橋尚史、千葉健太
右SH:杉本太郎、鈴木優磨
左SH:高崎寛之、田中稔也

 

その後、主力選手たちも合流し、行われたのはキャンプに入って初の紅白戦だった。

【ビブス有り】
-------高崎-------
----------------
-豊川----土居----遠藤-
----------------
----大橋----梅鉢----
----------------
-隆雅--山村--ソッコ--西-
----------------
------曽ヶ端-------

■途中交代
土居 → 優磨
西 → 平戸

【ビブス無し】
-------赤﨑-------
----------------
-中村----本山----杉本-
----------------
----久保田--小笠原----
----------------
-山本--町田--青木--伊東-
----------------
-------佐藤-------

■途中交代
本山 → 田中
小笠原 → 千葉

 

 全体的な印象は悪くなかった。ボールに対して激しくプレッシャーにいくことができており、どちらのチームも遜色なく、やるべきことがやれていたように思えた。しかし、時間の経過と共に(疲労のせいか)動きは鈍くなり、ミスが目立つようになってきた。
 そうなるとトニーニョ・セレーゾは明らかに不機嫌な様子となり、ずっと腕を組んでパスまわしを凝視するばかり。いつもは動き回って選手に指示を出したするのだが、ミスが多くなる時間帯からジッと動かなくなってしまった。
 その前にやった練習の成果があまりみられなかったことが原因だろう。腕組みしてブツブツ言っている場面の多くは、サイドで攻撃が詰まってしまったときだった。その前の練習では、相手を惹きつけて逆サイドにすばやく展開することをやったはずなのに、それを意識している若手が少ないことが原因だったように思う。
 それを示すかのように、ファン・ソッコや梅鉢貴秀がサイドチェンジのパスをミスしても、セレーゾは「いいぞ。いい狙いだ」と褒めていた。キャンプでは、監督が狙うところをきちんと理解できているかどうかを示すことが選手には求められる。その意味では、若手はまだ、付いていくのに精一杯のように見えた。

 気になる新加入選手について。

 ファン・ソッコについては、通訳の李康行が紅白戦時もライン際に貼りついて、セレーゾの指示→高井蘭堂の通訳→李康行の通訳、という経路を経て、監督の指示が伝わるように腐心していた。一度、SBが上がったときに必ずボランチを1枚下げさせることを、自然とソッコが実践したのを見て、石井コーチが「ソッコ、それそれ!」と賞賛していたのが印象的だった。戦術理解度は高そうだ。
 苦労していたのは高崎寛之。なかなか思うような位置でボールをもらうことができず、たまにサイドで開いてパスを受けただけで終わってしまっていた。一度、速攻からサイドに抜け出した場面ではゴール前に折り返すのではなく、遅れて走り込んできた梅鉢貴秀にマイナスのクロスを送り、セレーゾに呼び止められていた。名前ではなく「アタッカンチ(FWの意)」と呼ばれていたので、まだ名前を覚えてもらっていないのだろう。練習後、遠藤に「サイドに寄らない方が良い?ドリブルの邪魔になる?」と話しかけていた。チームのなかで機能するようになるにはもう少し時間がかかりそうだ。
 非凡な才能を随所に感じさせたのが久保田和音だ。彼は大きく化ける素材になるかもしれない。まず、プレーが落ち着いており、とてもクレバーだ。パスの選択も非常に正確。小さい身体ながらミートがうまくシュート練習でも鋭い弾道を放っていた。期待を裏切らない存在となるだろう。
 大橋尚史は、元気よく相手のボールに詰めていったが、あまりにも遠くの相手にいってしまったため、曽ヶ端から「行く必要ない。まわりの状況を見てプレーしろ」と言われてから、変に意識してしまい思い切りの良さが影を潜めてしまった。曽ヶ端の忠告を早めに消化する必要があるかもしれない。
 鈴木優磨についてはプレー時間が少なく、これからを楽しみにしたい。

 なお、カイオが練習に参加できていないが、怪我や痛めている箇所があるわけではなく、昨季の疲労などが溜まっておりコンディション不足ということのようだ。

 

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