「GELマガ」鹿島アントラーズ番記者・田中滋WEBマガジン

【プレイヤーズファイル】MF13中村充孝「俺が変わるしかない」(2017.10.27)

“無数の死を養分に花が咲くように、この美しい世界の底には数え切れない悲劇が埋もれている。当事者でもない限り、君がそれを知ることはない。君はただ、目も眩まんばかりの美しさに心を奪われ、大地を踏みしめて進めばいい。君の悲劇は糧となり、新たな花を咲かせることだろう。”

(出典:メイドインアビス)

 

「申し訳なかった」

「後悔している」

 そんな言葉を無意識のうちに求めていたのかもしれない。なにも変わりはしないのに。

 落とした試合を取り戻すことはできない。失ったタイトルにチャレンジするには次の年まで待たねばならない。時計の針を戻すことはできない。ぽっかり空いた穴に沈み込み、悲しみや悔しさに溺れてもなにかを手にすることはできない。唯一、前に進むこと。それだけが次のタイトルをもたらす。

  顔をゆがめて悔しさをむき出しにするようなわかりやすさは、中村充孝にはない。ぶっきらぼうな受け答えは誤解を招く恐れもある。

 “同じ状況を迎えたらどうする?”

 その問いに対し迷うことなく「行きますね」と応えた。しかし、言葉を重ねると真意は別のところにあることが伝わってくる。男は悔いていた。

「まわりが声をかけて助けてくれるとも思っていない。俺が変わるしかない」

 

(残り 1135文字/全文: 1648文字)

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