「GELマガ」鹿島アントラーズ番記者・田中滋WEBマガジン

内田篤人「鹿島が鹿島である理由をここから見せないといけない」/【練習レポート】4/12@クラブハウス

ショッキングな敗戦から一夜、チームの雰囲気は決して明るいとは言えなかった。

試合に先発した選手たちは調整だけで終え、ピッチに出てきたのは山田大樹を加えたGKチームと、小笠原満男、内田篤人、昌子源、久保田和音、金森健志、三竿雄斗、小田逸稀、山口一真、田中稔也、中村充孝というフィールドプレーヤー10人。遠藤康はBグランドで別メニュー調整を続けており、脇腹を痛めたペドロ・ジュニオールと左大腿部裏を痛めたレオ・シルバも別調整。人数が少ないこともありどうしても空気は重く感じられた。

練習の前には、1時間ほどのミーティングが行われた。

 

 

 

全員ではなかったようだが、ほとんどの選手がいま思っていることを発言した。意見をぶつけ合うというよりは、チーム全体に呼びかけ結束を高めたという。

練習後、何人かの選手に話しを聞いた。

さすがだったのは誰の口からも監督を非難したり、誰かに責任を押しつける言葉が一つもなかったことだ。植田直通は「いまはすごい苦しんでいる状態ですけど、みんなで苦しんでこの状況を乗り越えたいと思います」と話した。ミーティングのなかでは「勝ちたい気持ちはみんな一緒なので、みんなが向かうところを一つにしてこれからも戦おう」ということでまとまったという。植田は「一人一人がもっと戦える」と闘志をたぎらせていた。

 

チーム状況は楽観視できない。

それでも、まだなんとかなるのではないか。そう思わせてくれたのは内田篤人の落ち着いたたたずまいだった。

「みんなすごい頑張ってるけど噛み合ってない。一人分というより1.5倍くらいやろうとしてるからかぶってしまったり、動きが噛み合ってない。もっとシンプルなものだと思うよ。ミーティングでみんなとも話したし、個人個人で思っていることはあるけれど、次はホームでできる。お客さんが後押ししてくれれば勝利に近づくと思います」

内田は春先のエルゴラッソ本紙のインタビューでも「剛さんがやろうとしていることはあくまでもベース。そこにプラスαを個人が加えていかないと勝てない」と指摘している。ミーティングでも「1試合勝てば状況は変わる」と、若きチームメイトたちを諭したという。

 

ただ、左SBの山本脩斗が左膝後十字靭帯損傷という大怪我を負ってしまった。SBは再び層が薄くなった。練習には合流しているが内田は試合に出られるコンディションなのだろうか。すでに勝ち抜けが決まっている水原三星戦で出場できるのでは、と問うと「そんなに先?」という答えが返ってきた。

「やっと自分でもいいと思える状態になってきた。90分?いけると思いますよ。でも、決めるのは剛さんだから。苦しいときにチームを助けなきゃいけない存在だし、そのために取ってもらった訳だし。ほんとは最初から全部の試合に出るくらいじゃないといけないんだけどね」

「でも」、と自分の言葉を引き取った。

「強いチームはここから。鹿島が鹿島である理由をここから見せないといけない」

 

試合をずっとスタンドから見てきたのだ。チームが良い状態でないことは重々承知しているだろう。采配や戦術が不明瞭になっていることも、選手同士のコンビネーションが確立できていないことも、すべてわかっているはずだ。

それでも内田は、愛する”鹿島”を信じ、全力で守ろうとしていた。

 

 

※13日に加筆修正し、無料公開に変更しました。

 

 

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