「GELマガ」鹿島アントラーズ番記者・田中滋WEBマガジン

選手の個性が噛み合う手応えを久々に感じられた試合/【レビュー】明治安田生命J1リーグ第10節 ヴィッセル神戸戦

短い時間のなかでどうすれば改善できるのか諦めずに取り組んだことが成果として表れた。勝点3という最良の結果こそ得られなかったが、今季初めてと言っていいほど相手を圧倒し、ゴール前に釘付けにする時間帯もつくることができた。土居聖真をトップ下で起用する”新布陣”の効果は大きかった。

勝利を手にすることはできなかったが、試合後の内田篤人の声は明るかった。

「試合内容としてはだいぶよくなってると思う。ちょっとフォーメーションをいじりましたけど、それがうまくポジションというかみんなの距離感がだいぶよくなったと思います。いままでフラットで4枚が中盤に並びましたけど、今日はちょっとダイヤ。トップ下に聖真を入れて。そうすると夢生とか個人でいける選手がプレーできるエリアが広がるんで、これはちょっとヒントじゃないかと思います」

川崎F後は厳しい現実を突きつける言葉が並んだが、今回はチームに自信を吹き込むような言葉を選ぶ。勝てなかったことで遠藤康や土居聖真など渋い表情を見せる選手もいたが、内田は終始ポジティブに受け止めていた。そこにはいろいろな意味が込められていたように思う。

 

一つは、サポーターがつくった雰囲気が、結果が出なくともずっとティブなものだったことへの感謝だろう。川崎F戦の大敗後、ブーイングが起きるのをかき消すようにチームを鼓舞する声がゴール裏から送られた。オフ明けから神戸戦を迎えるに練習に向かえば、いままで以上に数多くの横断幕がクラブハウス練習場の周囲に張られている。そのメッセージもすべてポジティブなものだった。チームが苦しい状況にあることを理解し、それを全力でサポートすることを伝えるサポーターからの言葉は、少なからず力になったようだ。試合を終えて場内を一周するとき、内田はゴール裏のサポーターに声をかけている。

「最後、サポーターの方と話したんだけど、練習の時に横断幕を張ってくれてる。ここ何日かはネガティブなことがなかった。そういうのはすごいありがたい。練習も、その横断幕を見ながら練習するんでね。雰囲気はここからよくなる。今日がヒントだと思うよ」

 

もう一つは、自身のパフォーマンスに対する手応えだろう。フォアを狙ったクロスがことごとく合わず、精度の低さは試合を通して気になったが、それでもあれだけの回数でスプリントを仕掛けてクロスまでいけたことに、内田本人は大きな手応えを感じていた。いけることがわかれば、今後は落ち着いて中の状況を見ながら合わせることもできる。中3日でも十分にやれることを示し、終盤まで走れることに自信を掴んだからこそ、この結果を非常に前向きに捉えていた。

 

 

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