「GELマガ」鹿島アントラーズ番記者・田中滋WEBマガジン

トンネル脱出のキーワードは「余裕」/【プレビュー】明治安田生命J1リーグ第12節 Vファーレン長崎戦

なにかを断言することは難しい。言った途端に嘘になることが多いからだ。

例えば、「球際を強く行こう」とチームで決めたとする。シンプルな約束事が有効に機能する場面があるかもしれない一方で、闇雲にボールを奪いに行けば剥がされ、そこから崩される端緒となるかもしれない。

だから、条件を付けたくなる。「こういう場面ではAプラン」「こういう場面ではBプラン」と。細かく見れば見るほど、五月雨式に選択肢は増えていく。結果的に、最初に決めたプランはぼんやりとした約束事になってしまい、チームとしてなにを基本指針に戦うのかわからなくなってしまう。

 

いい監督とは、それをわかった上でシンプルな約束事を伝えることができる能力を有する。自分たち選手の置かれているメンタリティ、相手チームの特長などを踏まえ、最適な作戦を立案できる。

前節、内田篤人は「笑わないで」と言いながら、自分がイメージする鹿島アントラーズというチームを漫画「SLAM DUNK」に登場する王者・山王に例え、「終盤に湘北に追い上げられるチームじゃないよね」と話した。

その「SLAM DUNK」に登場する安西先生は、山王に翻弄され肩で息をする流川楓を捕まえて「とりあえず…君は日本一の高校生になりなさい。アメリカはそれからでも遅くはない」と指示した。もし、「守備で相手のエースである沢北を抑えつつ、攻撃でも点を取りなさい」と指示していたら、「どうやって?」と聞き返されるところだろうが、流川のプライドをくすぐることで、やるべきことを明確にしたのである。

 

翻って、鹿島アントラーズである。

いま、鹿島に必要な言葉はその類いのものではないだろうか。守備では球際で行かなければならないし、ブロックをつくらなければならない。どちらも大事なのだ。いちばん怖いのは、その判断が選手のなかで違ったときだが、それを避けるために選手たちが導き出した答えは「余裕」。今節のキーワードである。

 

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