「GELマガ」鹿島アントラーズ番記者・田中滋WEBマガジン

MF13中村充孝「必死にね。似合わんけど」/【プレイヤーズファイル】

太陽の光がオレンジ色に変わる時刻となり、選手たちはファンゾーンを通り抜け宿舎に戻っていく。そのなかを一人、黙々とランニングする選手がいた。真っ黒に日焼けした顔と赤茶けた髪の毛。天性のテクニシャンは来る日も来る日も、練習が終わったあとゆっくりグランドを周回する。雨が降りしきる翌日も、その姿勢に変わりはなかった。

彼に向けられた期待は何度目だろう。そのほとんどが裏切られ、同時に背番号13の重みと価値も廃れてきた。

ただ、J-STEPに来てから、ことある毎にそのプレーに目が引き寄せられる。ズドンという重い音を立てた鋭い弾道が飛ぶと、その多くは同じ人物が放ったもの。残念ながら、シュートはゴールの枠上を超えゴールネットが揺れたことはない。それでも、その回数の多さは積極性の表れだ。

それだけなら驚きはないだろう。しかし、ルーズボールを小笠原満男に競り勝ち地べたに這わせ、スペースを埋めるべく必死に走り、永木亮太に粘り強く食らい付いてボールを奪い、鋭いフェイントで犬飼智也を抜き去る。味方のパスミスが誰もいないスペースに転がったとき誰より速く駆け寄る。

巧いけれども勝負に対する熱さや執念が感じられない淡々とした姿を払拭するプレーの数々。

こんな中村充孝は、いままで見たことがなかった。

 

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