「GELマガ」鹿島アントラーズ番記者・田中滋WEBマガジン

☆無料記事☆ファン・サポーターの習慣を消さないために/【ニュース】2019年度決算概要について

 24日、鹿島アントラーズの定時株主総会が行われ、それに伴い19年度決算概要が発表された。また、メディア向けにもオンライン説明会が行われた。

 

2019年度 決算概要について(鹿島アントラーズ公式サイトより)

 

 営業収入は2018年度から微減。73億3000万円→67億6800万円に。広告料収入が多少増えたものの、ルヴァン杯などの試合数が減ったことで入場料収入が減り、なにより18年はAFCチャンピオンズリーグ制覇による賞金があったことで大きな増収となっていた。その分がなくなったと考える、「それ以外は堅調だった」と小泉文明社長は説明した。

 営業費用も2018年度から微減。67億4600万円→66億7300万円に。ACLの試合数は減り、クラブワールドカップがなくなったためトップチームの運営経費も減った。

 

 ただ、問題となるのは今季の見通しだろう。現在、6、7、8月からの再開に向けてJリーグは実現可能なプランをいくつか用意して検討を繰り返しているが、いまの状況ではわからない部分が多い。また、たとえ無観客試合でリーグを再開できたとしても、10億円近くあった入場料収入が大きく減ることになる。その他、アカデミー関連事業やウェルネスプラザなどの施設もすべて運営が休止している状態だ。

「10億、20億で落ち込むかもしれない。損失の規模は見えない」(小泉社長)

 期末にはクラブにとってはかなり厳しい数字がもたらされそうだ。

 

 

 とはいえ、単年度の経営についてはそこまで悲観することもないだろう。小泉社長によると、親会社のメルカリではすでに10億円規模の融資を用意。さらに追加での融資も今後検討されるという。小泉社長は選手だけでなく、クラブ職員の人件費については「最後まで守っていきたい」と話した。

 小泉社長がもっとも懸念していたのは、毎週末、Jリーグを観るという習慣がサポーターやファンから無くなってしまうことだ。

 2011年、東日本大震災が起き、鹿島は被災した。そのときの影響は小さくなかった。3連覇を果たしたこともありクラブの人気は最高潮に達し、2010年の総入場者数は35万人を数えていた。しかし、11年は27万人、12年も26万人、13年も27万人。14年でようやく30万人に回復したが、15年は再び27万人に落ち込み、30万人以上をキープできるようになったのは16年からだ。じつに5年間も影響を受けた計算になる。

「習慣化を取り戻すのは難しい。東日本大震災のときもサポーターが戻るのに時間がかかった」(小泉社長)

 だからこそ、クラブはデジタル施策を次々と打っていく姿勢を打ち出す。柱となるのは3つ。クラウドファンディングと投げ銭のシステム、そしてデジタル上のファンコミュニティである。

 無観客試合になったとき、クラウドファンディングで試合前にはチケットを買う気分でクラブに、試合後には試合で活躍した選手のユニフォームやスパイク、サインボールなどにプレミアムをつけて提供するなど、イメージは付きやすい。

 投げ銭システムは、以前から小泉社長は「日本人に馴染みやすい」と話していた。海外ではスポーツベッティング(賭け)がポピュラーであり、DAZNにも投げ銭のシステムは搭載されていない。別途用意することになるが、そこは開発担当がすでに準備を進めているだろう。

「試合で感動するポイントとお金を払うポイントが一致するようにしたい」(小泉社長)

 クラブにサポーターをつなぎ止め、習慣化を消さないためのデジタル施策だが、小泉社長は前向きな課題として捉えている。将来的には、日本全国に散らばっている鹿島サポーターに、カシマスタジアムで試合を観戦しているときと同じような感動を提供することが求められる。そのタイミングが少し先に来てしまっただけであり、いずれやらなければならない課題を先取りしてアクションを起こそうとしていた。

 オンライン説明会のなかでは「まだ言えないのですが」と、すでになにかしらの施策を用意しているということだった。

 

 メルカリから出向されている齋藤友紀さんのTwitterに、小泉社長がスポーツビジネスサミットプラスの内容がまとめられたnoteが紹介されていた。

 

 これを読むと、試合が無いため2020年の新ユニフォームは万単位で売れ残っているという。デジタル施策がいくつも用意されているといっても、それ単体で何億もの売り上げを生むものではないはずだ。それでも、小さな利益を積み重ねることで大きな利益に変わる。

 

 

 できる限りクラブに貢献していきたい。

 

 

 

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