「GELマガ」鹿島アントラーズ番記者・田中滋WEBマガジン

相手の思惑にまんまとはまった90分/【レビュー】明治安田J1第29節 柏レイソル戦

 改めてサッカーの難しさを感じさせられた。手の中に収めたと思った途端、スルリと抜け落ちていく。単純化して理解したつもりになっていたのは間違いだった。

 一番の間違いは敵将がネルシーニョであることを忘れていたことかもしれない。老獪なベテラン監督は、時として思い切った作戦を練ってくることがある。よもや柏が布陣を変えてくるとは思わなかった。完全にカウンターに特化した[5−4−1]は、前線にオルンガ、その背後にクリスティアーノと江坂任が控えることで彼らの攻撃力を倍化した。守備になれば全員がチームオーダーを守り、人数をかけて守ることでスペースを消す。まんまと相手の注文相撲にはまってしまった。

 涼しい顔で「前半の展開からすればもう少し点が取れた」と振り返るネルシーニョ監督とは対照的に、ザーゴ監督は苛立ちを隠せずにいた。

「相手はいろんな状況があったのでカウンター1本を狙っているのは、もうわかっていた。そういう相手に対して先制点を与えてしまえばもっと引かれて守られてしまう。自分たちから苦しい状況になってしまう。あとは2点目、3点目、4点目は全てカウンターという状況だった。いくら勝ちたくても自分たちからバランスを崩すことは僕は要求してないし、好んでいない。そこはやり方を最後まで貫くことはもう一度強調したいと思います」

 2位のG大阪が川崎Fに0−5で敗れたため、川崎Fがリーグ優勝を決めただけでなく、G大阪との勝点を詰めるチャンスだった。しかし、それをふいにしたばかりか、勝点を逃したことで一気に苦しい状況に追い込まれた。G大阪、名古屋、C大阪、FC東京に加え、まだ6試合を残す柏も可能性を残すことになった。いままでは“勝てばなんとかなる”だったが、これからは“勝ってもどうなるかわからない”状況だ。精神的に辛いところではあるが、弱気になっている場合ではない。とにかく残り3つを勝つしかない。

 

 

(残り 2855文字/全文: 3685文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ