「GELマガ」鹿島アントラーズ番記者・田中滋WEBマガジン

相馬監督の選ぶシンプルな言葉が今季初の連勝をもたらす/【レビュー】明治安田J1第13節 鹿島アントラーズ対FC東京

 言葉には力がある。そして、言葉を操ることができる監督は、チームの力を一段階上に引き上げることができる。相馬直樹監督の言葉は、シンプルだからこそ選手に響く力を宿していた。

 就任当初から使い続けてきた「チャレンジャー」という言葉もそうだ。いまのチームに国内最多の20冠は関係ない。「決して常勝ではない」と位置づけ、「勝っていてもはいつくばって、また勝ちを取りに行っていたんだよ、そういうところを出していかなければいけないんだ」と訴える。迷いが生じていたチームの戦い方もシンプルに変えたからこそ、多少不器用に見えても90分間集中を切らさず勝ちに徹して戦う姿勢は、瞬く間にチームに浸透した。

 今季初の連勝を狙う場面でも、選ばれた言葉はシンプルだった。

「パワーを出そう」「エネルギーを持ってチャレンジしよう」

 就任以来、相馬監督は3勝3分で一度も負けていない。しかし、敢えて、いままでどおりではダメだと訴えた。いままで以上にパワーが必要だ、エネルギーが必要だと呼びかけた。

 そのパワーを出さないとこれまでと同じになる。そうではなくて、これを勝ち切って、勝ちのサイクルをつくっていこう。その意味では、この試合が重要だ。

 

 以前であれば、それは選手自身が感じ取り、いつも以上に集中力を増して試合への準備を進めることができた。明らかに練習から気合いが入っていても小笠原満男に聞くと「いつもと変わりません」とそっけない答えが返ってくる。それでも、DAZNの内田篤人の番組の中で金崎夢生との対談を聞くと、やはり大事な試合が控える週は練習の段階から違っていたことを認めていた。

 ザーゴさんは、鹿島をビッグクラブだと捉えていた。だからこそ、昨季も結果が出ないときモチベーションの上げ方について問われると「こういうビッグクラブに行けば行くほど、そういうメンタルの部分、心構えというものを持って、ここにいなくてはいけない。悪い方向に向かうことを考えるということは、そこでもうプロフェッショナルではないと思う」と、選手の自主性に頼っていた。

 しかし、実力のないチームにビッグクラブとしての振る舞いを求めても勘違いを生み、尊大になるだけだ。選手を奮い立たせるためには地に足ついた言葉が必要だった。

 

 選手たちから発せられる熱量は、いつも以上に熱かった。

 セットプレーで先制点を奪い、前半終了間際に追加点。さらに、後半の終わり際に3点目を奪い、最後まで相手が嫌がる采配をゆるめない。

「僕もピッチの脇で見てて、ものすごくそういうものを感じた」

「選手たちが、ゲームに入ったところから、最後終わるまで集中しきって、エネルギーを出し切ってくれた。ほんとに感謝したいなと思います」

 相馬監督の目尻も自然と下がる。今季初の連勝は、監督も高く評価する3−0の完勝だった。

 

 

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