「GELマガ」鹿島アントラーズ番記者・田中滋WEBマガジン

選手の目は死んでいない/【練習レポート】

 川崎F戦は深傷を残した。しかし、チームはその敗戦のショックに引きずり込まれることなく、前向きな姿勢を取り戻している。決して自暴自棄になっているわけでも、目標を諦めてしまったわけでもない。いまできることに対して、全員が積極的に取り組む。そうした前向きな空気が練習の中に溢れていた。

 トレーニングに対する集中力は高く、いいプレーが出るとピッチのあちこちから声が飛ぶ。選手たちが積極的に声を出すことで、いい雰囲気が生まれ、その雰囲気がさらにいいプレーを呼び込む好循環が生まれる。単調になりがちな攻撃のパターン練習も、次々とゴールネットを揺らし、力みすぎてシュートを吹かすことが多い場面でもしっかりミートしてコントロールされたシュートを放つ。最後にレオ・シルバのミドルシュートがゴール右隅に突き刺さると、大きな歓声が上がり、三竿健斗が拳を突き出してグータッチでシュートを讃えた。

 オンライン会見に応じたのは土居聖真だった。

「目標がACL出場というところしかもう無くなってしまったので、そこに向けて選手はすごいポジティブに前向きに、やっぱり失ったものをなんとか取り返そうと、取り返せるものではないかもしれないですけど、前に進もうというチームの雰囲気はすごく感じられます。僕もなるべくネガティブになるよりも、次の試合に向けていいものがチームとしても個人としても出せるように働きかけている。間は短いですけど、チームの雰囲気、士気はすごい高まっているんじゃないかと思います」

 ピッチにいる選手たちも、雰囲気、士気はすごい高まっていると感じているという。土居個人で言うと、練習の最中から監督のオーダーを汲み取り、選手たちに「練習だからやってみよう」と声をかけていく姿が印象的だった。クラブからメディア向けに配布された写真を見ると、どれもこれも表情がとても柔らかい。そこに写っているのは、精神的に追い込まれている選手たちでも、自信を失っている選手たちでもなく、モチベーションを失っていない姿だった。

 

©KASHIMA ANTLERS

 

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