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攻撃偏重のチーム同士、最高の殴り合いを……J2第20節・東京V戦プレビュー

▼ハマったサウロの1トップ

チームの進化は第二段階に入ったと見ていいだろう。攻撃もマイナーチェンジが加えられた。前々節から“超人”サウロ・ミネイロが1トップに入り、シンプルに相手の最終ラインの裏へボールを送ってサウロを走らせる攻撃が増えた。ボールを奪われてもカウンターを受けるリスクが少なく、相手の守備ラインを下げることで間延びさせ、本来やりたいところのボールをつなぎやすくする効果もある。代わってシャドーに入った小川航基は、ライン間で受けてスルーパスという新境地を開拓しつつある。

サウロはそれまで、本人の希望もあってシャドーでの起用が多かった。1トップでの起用の理由を、「シャドーでは守備の負担などもあるので、総合的に考えて彼の良さを出すことにフォーカスした」と四方田監督は語っている。爆発的なスピードとパワー、特別な個の能力の持ち主である超人は、その特別さゆえに四方田サッカーの『型』になかなかハマらなかった。そこで『型』そのものを超人仕様にアレンジする、指揮官の決断だ。もともと最終ラインにはロングパスの名手をそろえていたこともそれを効果的にした。

前線からどんどんプレスをかけにいく場面が減ったのは、このサウロが1トップに入っていることとも無関係ではない。敵と味方の状況を把握して的確に守備のスイッチを入れる役を任せるには、サウロは感覚派すぎる。守備に頭とエネルギーを使わせて、肝心の攻撃力が鈍っては元も子もない。逆に言えば、最終ラインと中盤の守備強度が増したことで、サウロの1トップが可能になったということでもある。

今のところ、この攻守のマイナーチェンジは2連勝という結果を出している。相手の岩手にしても山口にしても、最終ラインを高くして前からプレスをかけてくるチームだったためにハマったという側面があり、相手が引いてスペースを消してきたときにサウロの1トップが機能するかという不安はあるが、とりあえず次節はその心配はない。東京ヴェルディは山口と同じ型のチームだからだ。

 

▼杉本竜士、小池純輝の両ウイング

前節の山口戦は、横浜FCにとってもヴェルディにとっても、今節に向けて非常に参考になる試合だった。ヴェルディは守備時は[4-4-2]で並ぶが、攻撃時は山口と同じ[4-3-3]。サイドバックが高い位置を取るのも同じだが、筆者が山口戦を見ながら「これはヤバそうだな」と思ったのは、前述したようにインサイドハーフの田中渉がサイドに出てボールを運ばれていたことだ。

ヴェルディも同様に、梶川諒太がサイドに出て、サイドバックやウイングとローテーションしながらプレーする。そしてリーグ2位タイの得点数が示すように、そこから最後の1/3を崩して点を取ることにヴェルディは長けている。左ウイングの杉本竜士は、横浜FC在籍時はあまり良い時間を過ごせなかったが、現在6ゴールを挙げている。1トップの佐藤凌我も今季6ゴール。身長178cmで、ルーキーイヤーの昨季は13ゴールを挙げており、サイドを崩したところでゴール前で合わせる感覚に優れている。ちなみに明治大で岩武克弥の2年後輩であり、学生時代に女性誌の『イケメン大学生アスリート』特集で取り上げられたこともあるイケメンだ。

同サイドを崩し切る力があるし、さらに厄介なのが梶川のサイドチェンジだ。小柄な体だがコンパクトな振りで正確なボールを逆サイドに飛ばしてくる。ちなみに長谷川竜也と顔は似ていないが、背格好や謙虚な性格など雰囲気が似ていて、練習場の近いヴェルディと川崎の両方の選手が通う定食屋で間違われたことがあるそうだ。

そのサイドチェンジを右サイドで受けるのが、横浜FCで2014〜15シーズンにプレーし、“エーコ”と呼ばれ親しまれた小池純輝。2019シーズンにヴェルディに移籍すると、それまで年間6ゴールだったキャリアハイを16ゴールへと、32歳にして大幅に更新。昨季はさらに17ゴールへと更新した。今季はまだ2ゴールだが、本人も言うように「恩返しゴールが多い」男だけに油断はできない。

山口同様、両ウイングがワイドに張るため横浜FCも[4-4-2]のブロックを組んで守ることが予想される。ボール回しは山口よりもさらに高いレベルにあり、プレスにハメるのは難しいだろう。ボールを持たれてもいかにスペースを与えず、穴をなくして守れるかにかかってくる。

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