デイリーホーリーホック

【HHレポート】ヒューマンストーリー「『ホリスポ』を発行しているTifare代表補佐の栗原賢二さん」(2012/10/30) ※全文無料公開

「ホリスポ」で内部のモチベーションを上げたい

昇格争いから失速した2009年。オフに主力選手がごっそりと移籍し、急激にスタンドに観客がいなくなり、クラブ全体に徒労感が漂っていると感じた。
「10年、Jリーグで戦っているのに全然積み上げを感じない」「茨城にメディアがないから盛り上がらない」…。次々と上がった批判の声に「過去に素晴らしいサッカーや感動があったじゃないか!」と反論したかった。

そして、2010年3月、「選手が90分間走り続ける行為へのリスペクト」をベースとした、ホーム戦の時に不定期発行される、水戸フロント、マスコミ関係者、ボランティア向けの内部報「ホーリースポーツ水戸」、通称「ホリスポ」を一人で立ち上げた。

スポーツ新聞風の紙面には、水戸トップチームのコラム、同じ背番号を持った歴代の水戸の選手を紹介する「背番号物語」、ホーリーくんのぬいぐるみが各名所を訪ねる「たんけんホーリー君」、市民リーグで戦う社会人チームの奮闘を描いたサッカー小説「underdog へっぽこ社会人チーム 死闘の記録」などが連載されている。水戸愛溢れるこの手作り新聞を毎号楽しみにしているマスコミ関係者も少なくない。

「昔、アルビレックス新潟のボランティアに参加した際、関係者控え室に手作りの壁新聞が貼られていて『こりゃいい』と思ったんです。中学時代はFWとしてプレーし、高校では図書委員会で新聞作り、大学は演劇、ミュージカルで監督、役者、脚本を担当、社会人はSEで編集技術を学んで、そしてホーリーホックに夢中になった。全てホリスポに繋がっていたと思う。これを読んで、内部のモチベーションが上がってくれれば嬉しい」。


【写真 米村優子】

「恋」に落ちて水戸サポ、そしてボランティアスタッフへ

実は元々ジェフサポーター。90年代後半、愛するクラブは「貧乏、弱小、不人気」。負ければ負けるほど、「市原市民になりたいと思うほど」にのめり込んだ。しかし、イビチャ・オシム監督の就任、フクダ電子アリーナの完成で急激に存在感を増したジェフに対して、嬉しかった反面、「何か取り残された」ように感じた。

「クラブや地域の成長に直接関わってみたい」。
そう漠然と考えていた矢先、足元を見つめ直したら、そこにホーリーホックがあった。

2004年に初観戦すると、水戸のサッカーや笠松運動公園競技場よりもDJの寺田忍さんの声に魅力を感じてスタジアムへ通い続けた。そして2005年、ハーフラインから単独でドリブルしてそのままゴールを決めたデルリスのワンプレーで「水戸ホーリーホックに恋に落ちた」。

しかし、いざサポーターになってみると、スタンドでは選手のプレーに対して「失笑」ばかり。「演劇に携わっていた身としては寒い芝居なんて見たくない。何でもいいから自虐ネタを減らして、この状況を打開して、誇れるネタを増やしたい」。

そして、2006年9月、意気揚々と水戸ボランティア「Tifare」に所属。クラブやボランティア内部もネガティブな話題がはびこり、休日を返上して全てホーリーホックのために動き回るも空回り。苦しさの余りチームから離れることも頭によぎったが、ベガルタ仙台のボランティアに参加して全てが吹っ切れた。「皆、キラキラと楽しそうに活動し、自分のアイデアでトイレに花を飾っている女性を見て『俺、まだ何もやってないじゃん!』と感銘を受けました。あそこにあのタイミングで行ってなかったら辞めていたかもしれません。自分のやっていたことはクラブスタッフの延長。ボランティアとしてスタジアムを面白くする気遣い、アイデアを出すことが必要なんだと目が覚めました」。


【写真 米村優子】

運営もJ1レベルにするために

今ではTifare代表補佐として、チケットのもぎり、マッチデープログラム等の配布、座席案内など運営ボランティアの中核。J1、J2全チームのスタジアム、野球、バスケットボール、卓球、相撲などのプロスポーツの現場に足を運び、運営の参考とするためにスタッフの位置、導線、案内表示、演出などをチェックする。
Jリーグの10クラブのボランティアに参加したり、他チームのボランティア同士の温かな交流も活動の大きな支えの一つだ。

現在60部を全て自費で発行しているホリスポは、今季は次節、町田戦で最終号を迎える。
「OB戦や湊線イベントなど、紙面と取り上げていたものが実現したのが嬉しいです。僕達は市民クラブになっていく過程に携わっている。日本中の地方都市が今、弱り切っている。町の再生シンボルとして、お手本になりたいですね。Jリーグは地域のお祭りのようなもの。地域の大人として、運営ボランティアのシステムを地域の子ども達へ残していきたい。それに今がクラブ史としても面白い時期。関わらなかったら損ですよ」。

Ksスタの観客動員が増え、運営ボランティアは人手不足となり、現場は「『嬉しい悲鳴』を通り越して危機的状況」にある。だが、笑顔でこう意気込む。「水戸のボランティアスタッフの『判断力』『個の力』は日本一だと思う。チームのJ1昇格の目標に合わせて、運営もJ1レベルにするための『組織力』『選手層』を高めたい」。


【写真 米村優子】

栗原賢二さん
1980年那珂市生まれ。水戸市在住。会社員。2006年9月から水戸ホーリーホックボランティア「Tifare」所属。2008年からTifare代表補佐となり、運営ボランティアの中心としてホーム戦を支えている。2010年3月に「ホーリースポーツ水戸」を発刊。同年7月から2011年10月まで、内輪向けマッチデープログラム「蹴球狂ノ詩(サッカーきょうのうた)」を発行。ホーム戦当日はチケットのもぎり、マッチデープログラム等の配布、座席案内などをメインで手掛ける他、手作りの案内表示板の設置、ロッカールームに貼り付ける各選手への寄せ書き、メインスタンド側入口の階段上に設置されている机上のホーリーくんのコスプレ、ボランティア活動のコラム等を発信している「水戸ホーリーホックボランティア ブログ」(http://tifare.blog84.fc2.com/)などを担当中。座右の銘は「人生思った通りにはならないけど、やった通りにはなる」。

ボランティアに興味のある方は
http://www.mito-hollyhock.net/www/clubprofile/volunteer.htmlへアクセス!

(米村優子)

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