デイリーホーリーホック

【シーズンオフ特別企画】ボランティアグループ「Tifare」代表補佐・栗原賢二さんコラム「裏方魂 『聴戦』のススメ」(2012/12/17)※全文無料公開

観客のリアクションから試合展開を読み取る

皆さんは野球やマラソンなど、スポーツ中継をラジオで楽しんだ事はありますか?
TVなどに比べ状況が目に見えない不便さはあるものの、アナウンサーの迫力ある実況や
頭の中で戦いの模様をイメージする独特の面白さは、なかなかクセになります。

私達ボランティアスタッフは試合中もそれぞれ持ち場で運営に関わっているため、休憩以外は基本的に観戦ができません。ゲーム内容が気になる時はあるものの、慣れてくるとスタジアムから聴こえるサポーターの応援歌やお客さんのリアクションから、ある程度展開を読み取る能力が身につきます。「押し込んでるけど決定力がないなあ」「お互い内容は良くないね。でも最終的には勝つ流れだな」など。

とはいえ私達、エスパーではありません(笑)そこには根拠も法則もあって。サポーターの歌う曲目はかなりヒントになるけど、長くなってしまうのでひとまず割愛します。

今回は客席の「歓声」「悲鳴」「どよめき」などの組み合わせから、主にゴール前がどういう状況になっているかを解説させていただきます。基本編ですね。

<押し込まれてるシーン>
「悲鳴 → どよめき」 = 敵のシュートが枠をそれた
「悲鳴 → 拍手」 = 敵のシュートをGKセーブ
「悲鳴 → 静寂」 = 失点・・・
「悲鳴 → 一瞬の静寂 → どよめき」 = 失点と思われたがオフサイド等でノーゴール

<攻め込んでるシーン>
「歓声 → ため息」 = 味方のシュートが枠をそれた
「歓声 → どよめき」 = 外れたけどかなり良いシュートだった
「歓声 → どよめき → 拍手」 = シュートは防がれたがコーナーキック獲得

「歓声 → 一瞬の静寂 → 歓声と拍手」 = PK獲得

「歓声 → 大歓声」 = ゴール!!!
「歓声 → ため息 → 大歓声」 = 一旦シュートは弾かれるも押し込んでゴール!
「歓声 → 一瞬の静寂 → 大歓声」 = ゴールインか微妙だったが得点を認められた

<番外>
「悲鳴 → 怒声 → 荒っぽい拍手」 = 相手にカードが出た

いかがでしたか? つまらなかったらごめんなさい(汗)

ボランティアで「動物的な本能」が養われる!?

この「聴戦」で一番恐ろしいのは、15分間ぐらい客席から何のリアクションも起こらない時。消極的な潰し合いのゲームと読み取れるので、観客動員が心配になってくるんですよね。なるべく悲鳴は聴きたくないけど、攻守めまぐるしいエキサイティングな展開を期待します。

ちょっと真面目な話をすると、「不便な行動をあえて取る」のは、決して無意味じゃないと思います。試合だって観た方が楽しいかもしれないけど、聴くという行為から得られるものも大きいと。

昔のサッカー漫画で読んだエピソードで、ある国の代表選手が子供のころ経済的に恵まれなくて家にTVも、スタジアムに行くお金もなかった。プロのプレーに触れられる機会はラジオの試合中継だけ。放送で流れてくる選手の姿をあれこれ想像しながら、「ボールはこう蹴ったのかな?」と自分なりに工夫してるうち、誰にも真似できない創造的なスタイルが身についたと。漫画の世界だけどこの話、私は大好きです。ボランティアに関わってると社会的なスキルや判断力に加え、予測や洞察力など「動物的な本能」も磨かれます。少し大げさでしょうか(笑)

情報にあふれた現代、「見ればわかる」「調べればわかる」事だらけかもしれませんがあえて見ない。調べない。時には自分の耳と頭だけでやってみるのも、道を開くきっかけになるかもしれません。皆さんも奥が深い「サッカー聴戦」、おすすめします。私達が優しくコツを教えますよ(笑)

(栗原賢二)

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ