デイリーホーリーホック

【特別寄稿】ボランティアグループ「Tifare」代表補佐・栗原賢二さんコラム「裏方魂⑫ 南三陸町フラッグの旅(後編)」(2013/6/13)※全文無料公開

自分はどうするべきだろう?

サイン入りチームフラッグを、宮城県南三陸町の商店街へ届ける旅。引き続きレポートさせていただきます。
水戸を出発したのは5月25日の朝10時。常磐高速から磐越道に乗り換え、福島県小野町から一般道へ。
小学校の夏休みに行った、あぶくま鍾乳洞が懐かしい。
避難区域の通行止めを迂回しながら田村市、葛尾村、川俣町、飯館村、南相馬市を走ります。

思えば震災前、行った事のない町ばかりでした。里山は美しい、だけど何かが変わっている。
役場近くをゆっくり歩くお爺ちゃんの姿を見ながら、自分はどうするべきだろう?心に問いかけるけど答えは出ません。
相馬市まで来た頃には日暮れ。名残惜しいけど今日のうち、仙台まで行かなくてはいけない。6号国道をひたすら北上します。
生きてるうちにこの道が、再び水戸までつながる時は来るでしょうか。

夜8時仙台に到着、ベガルタボランティアの方がご主人と出迎えてくれました。
宿泊先まで送ってくれる上、夕食はご馳走というご好意に甘えてしまう(汗)。
日本人は親切と言われますが、スポーツボランティアに関わる人は究極だと思います。
牛タンとビールで乾杯しつつ、「チームの鬼門」といったテーマで談笑。
規模は違えど裏方として汗をかく点は一緒、地域をこえた連帯感があります。
息子さんは学生時代、龍ケ崎市に住んでいたそうです。龍ケ崎が伊達藩の飛び地と、初めて知りました。

明けて26日。南三陸出身の方も合流し、目的地の商店街へ出発します。
仙台から高速を使って約2時間の道のり。連日の好意で車に便乗し案内してもらいました。
車内では貴重なACLボランティア体験談やチームマスコット、納豆の話で大盛り上がり(笑)。
JFLから昇格を狙う「ブラウブリッツ秋田」のマスコットが、ホーリー君に似ているそうです。
佐竹氏が秋田へ移封となった時の、生き別れの兄弟?勝手な裏設定も生まれます。

サッカーは地域と地域をつなぎ、日本と世界をつなぐ

ほどなく南三陸町歌津地区へ到着。
伊里前福幸(いさとまえふっこう)商店街には「復興市」が立ち、賑わいを見せていました。
写真⑥

Jリーグをはじめ野球、バスケ、バレーボールなど沢山のフラッグが並ぶ光景は壮観。
しかし海風にさらされて一年経つと、こんな状態に・・・。
写真⑦

サポーターが心を込めて寄せ書きしたもので破れてしまったのは残念だけど、
定期的にこの地を訪れる動機づけになりました。継続が何より大切な事だと。

商店街のブログや企画で精力的に活動されている会頭さんが、サイン入りフラッグの写真を撮ってくれました。
その場でタブレットを使いブログ、ツイッター、フェイスブックに上げるスピード感に、舌を巻きます。
写真⑧

名産のしろうお、マグロの唐揚げといった海の幸に舌鼓を打ち、ゆっくり流れる時間を楽しく過ごしました。
写真⑨

川沿いにアザラシが来た事で名付けられた「ウタちゃん橋」から全景を眺めると、不思議な気持ちになります。
写真⑩

自然の美しさ、残酷さ。人間の暖かさ、冷たさ。全てを包み込んで旗が風に揺れる。
生まれた場所が違うだけで、私達と同じように普通の生活を送っていた。
「絆」という言葉を使い何となく安心し、都合良く忘れ去る前にやるべき事は。
少しでも痛みを分け合って、側にいたい。・・・それができてないから自分に腹が立つ。

楽しいアイディアを発信し続ける商店街も、普段は客足が厳しいようです。
私も南三陸のロゴが入った手ぬぐいや、写真集を買いましたが、それきりにしてはいけない。
太平洋の海でつながる仲間、ともに参加し盛り上げていく事が大切だと思います。サッカーの関係性と同じですね。
写真⑪

写真⑫

6月23日には各地のサポーターと地元の子供が一緒に遊ぶイベントも企画されてます。
ぜひチェックしてみてください!
(商店街ホームページ)http://minamisanriku-mall.com/reported/index.cgi

サッカーは地域と地域をつなぎ、日本と世界をつなぐ。
勝ち負けは大切ですが、それ以上に大切な何かに気づく、きっかけをくれるスポーツだと思います。
訪れた南三陸町の商店街には敵も味方もなく、皆で元気になろうという想いが旗に込められていました。

復興とは何か?人の幸せとは何か?表面的なお金の使い方ばかりクローズアップされがちな昨今。
答えを出すのは難しいけど私達一人ひとり、「優しい心」を取り戻す事が全ての出発点じゃないかと。
水戸ホーリーホックも昇格という10年来の悲願を果たす一方で、暖かい雰囲気は失いたくないですね。

まとまらない文章となってしまいましたが、これで今回のレポートを締めさせていただきます。
車で5~6時間という距離に変わりはないので、皆さんもぜひ現地に足を運んでください。
がんばっぺ、南三陸!!がんばっぺ、東北!!私達も日々を大切に生き、闘います。

(栗原賢二)

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