デイリーホーリーホック

【HHレポート】[HOLY SPONSORS]第15回・医療法人社団大平医院、おおひらクリニック「『あんな小さなクラブだったのにね』と言える日を待ち侘びて」(2013/8/27) ※全文無料公開

水戸ホーリーホックを支えてくれるスポンサーさんにお話を聞く企画「HOLY SPONSORS」。第15回目にレポートさせていただいたのは、8月11日開催のJ2リーグ第28節 栃木SC戦よりピッチ看板スポンサーとして支援していただいている「医療法人社団大平医院 おおひらクリニック」です。どのような思いを抱いて水戸の支援を続けているのか、おおひらクリニックの大平直院長にその経緯や今後の水戸へ期待すること等をインタビューした模様をお伝えします。

ピッチ看板スポンサー
おおひらクリニック 院長 大平直さん

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【写真 米村優子】

3年前の常磐大学コラボデーからサポーターへ


水戸ホーリーホックに興味を持ち始めたのは、最初はテレビ番組がキッカケでしたね。
ホーリーホックがJ2に上がって間もない頃、全員プロじゃなくて、アルバイトをしながら生活しているというクラブの環境について特集されていたのです。
大洗や那珂湊などの水産加工会社で月10数万のアルバイト収入を得ながら、プロサッカー選手として活躍している選手もいます、という内容でした。
私はひたちなか市出身なのですが、それまでは「J2チームが水戸にあるんだな」と認識しているぐらいでしたので驚きましたね。
しかし、サッカーに関しては、2001年から水戸赤十字病院に勤務するために故郷に戻って来ても、日本代表の試合を観て、鹿島アントラーズの試合結果だけ気にする程度。
笠松運動公園まで観に行くのも億劫でしたし、ホーリーホックの事は特に気に留めていませんでした。

そして月日は流れ、最初にスタジアムへ足を運んだのは、2010年8月の常磐大学とのコラボデーの日でした。
息子が当時、常磐大学の附属幼稚園に通っていまして、格安で試合が観られたのです。
KSスタも自宅から自転車でいけるぐらいの距離だし、家族で行ってみようという事になりました。
サガン鳥栖戦でしたが、勝敗は覚えていませんね。ですが、水戸の試合が面白いと思ったのはこの時からです。
一際プレーが上手かった吉原宏太選手が特に印象に残りました。
その内、子どもが漫画の影響でサッカーを観るようになり、スタジアム観戦の回数が増えていきました。

「40しかないJクラブの一つがこんな近所にあるのに、もったいない」

観戦を続ける中で、段々と水戸ホーリーホックについて興味が沸き、過去の成績を調べたら、だいたい下の方。
観客数も「J2だし、こんなものなのかな?」と思っていたら、ワースト。
木山監督の頃のチームは結構良かったけれど、その後、選手が引き抜かれてみんないなくなってしまっていた。
そして、このチームにお金がない事が分かりました。

2009年12月に診療所を始めたのですが、ちょうどある程度軌道に乗ってきた所でした。
「せっかく40しかないJクラブの一つがこんな近所にあるのに、もったいない!」。
そんな思いから、2012年8月からサポートシップスポンサーを始めました。
ですので、まだスポンサーになってからは歴史が浅いのです。

他には自分に何が出来るかと考えた所、「身近な人を巻き込んでいこう!」と思い付きました。
何度か一緒に試合観戦をしたことがある私の親に、サポートシップスポンサーとなるように持ち掛けてみた所、快諾してくれまして、年間の上限金額よりも多く資金を提供しようという事になりました。
そしたら、クラブ側から「その金額でしたらピッチ看板スポンサーになれますよ」と言われ、親が経営している「医療法人社団 大平医院」との連名で、8月11日開催の栃木SC戦からピッチ看板を出す事になりました。

水戸は予算も少ないが、今は借金もない。
だったらあとは予算を増やすだけです。
一昨年と比べれば、少しずつ観客数も増えています。
水戸に大きな会社がある訳ではないですけれども、うちみたいな小さな事業所はたくさんある。
サポートシップスポンサーになっている水戸市内の診療所は結構多いですよ。
うちの病院では、スポンサーになった時に貰ったホーリーくんの人形を一番目立つ診察室のデスク上に飾ってありますが、子どもの食い付きがいいですよ!
「何これ?」とは言われる事はまずないです。知名度もどんどん上がっているのでしょうね。

また、沼田社長の存在もスポンサー支援を続ける理由の一つですね。
県内で働く水戸一高卒の医者の集まりがありまして、その特別講演が沼田邦郎社長だったのです。
そこで聞いたJリーグやクラブの収支、社長の今度の理想など興味深かったですね。クラブの体制が整ってきた事も大きいです。

水戸ホーリーホックは大企業一社が支えている訳ではありませんので、突然大きな資金を得る事はないでしょうけれども、横浜フリューゲルスのようなに潰れることにはならないと思います。
少ない額でも少しずつ集まれば、最終的には大きな額になります。
「お金がないから水戸は弱い」と言っているだけではそこで終わってしまう。
周りを巻き込んで観に行くということは出来ていないのですが、少しずつでも自分に出来る事をやっていこうと思っています。

私自身、プレーヤーの経験はありませんので、茨城にJクラブがなければ、こんなにサッカーを観ていないと思いますよ。
今の優先順位はまず水戸ホーリーホック。その次に日本代表ですね。
日本代表がW杯で負ける度に「日頃のJリーグから観ないとダメだ」と思っていた所に良い機会が水戸にある。
本当、たまたま地元にチームがあるというのは幸運ですよね。
週一回、いわき市内の病院で診療しているのですが、向こうの新聞を読むと、「福島ユナイテッドをJリーグへ!」という内容の記事が必ず出ています。
昔、水戸にもそういう盛り上がりがあったのでしょうが、Jリーグに加入していないクラブは今現在ものすごく奮闘している。
それが水戸には既にある訳ですから、「地元のJクラブをもっと盛り上げていこうよ!」と尚更思います。

スタジアム問題も個人ではどうにも出来ませんし、クラブの公式発表を見て、「あぁ、またか…」とは思いましたが、潔いと思いましたね。
あのタイミングで発表した方が「何で?」とみんなが興味を持つキッカケになると思います。
あとは、ライセンス会議がある頃に6位以内になる事が大事。
「6位以内にいるのに、本当にプレーオフにも出られないのですか?」とJリーグや世論に問い掛けられますし、もっとスタジアムをいっぱいにして、「椅子の数も少ないですけれども、それが埋まるぐらいは入っているのですから、特例で…」と訴えかける事も出来るのではないでしょうか。

若手とベテランのバランスが取れた期待のチーム

今季は柱谷体制の集大成。
シーズン序盤は、試合途中からやけ酒を始めた「どん底の愛媛戦」もありましたが、監督がしっかり途中修正しましたし、昨年は前半良くて、中盤から失速していきましたけれども、今年は暑い時期でもペースを落とさずにしっかりと保てている。連敗も一回しかしていませんしね。
選手も若い選手とベテランとが上手くバランスが取れていて良いのかなと思います。気になるのは、FWの得点不足という所ですね。
3バックになってサイドの攻撃が良くなりましたけれども、西岡謙太選手の負担がすごく大きく、その両脇を突かれている。ボランチをどのようにしていくのか、今後の監督の采配が楽しみですね。
プレーオフ圏内の順位までわずかな差ですし、ライセンスの話があってからの方が勝っている気がします。監督、選手共々、本当有難いですよね。
選手層も厚くなって、今年はローテーションしながらなんとかやれそうですし、良い調子で行けるんじゃないかなと思いますけれどもね。
特定の選手というよりはチーム全体を応援していますので、水戸の選手ならば誰でも応援しています。ミスターホーリーホックの本間幸司選手がいつまで現役でいられるかというのは気になっています。
サポーターとしてはJ2リーグ450試合出場記念Tシャツを買ったばかりの時に、試合前のサイン会でサインを貰えたのは嬉しかったですけれども、胸骨を折ったのは驚きましたね。

最近、2部ならではの面白さも見つけました。それは、J2のクラブには元日本代表、日本代表の選手もたくさん在籍しているという事。
今年、初めてアウェイゲームも観に行ったのですが、栃木は最後に三都主(アレサンドロ)、ヴェルディは高原(直泰)と西(紀寛)が出場しました。
日頃うちの息子に「いいか!鈴木隆行はワールドカップでゴールを決めたんだぞ!」と言っているんですけれども、同じ時期に三都主や高原も日本代表をしていました。
岐阜は服部(年宏)もいますし、コンフェデレーションズカップで観られませんでしたが、遠藤(保仁)や今野(泰幸)、残念ながらまだカズさん(三浦知良)は観たことないのですが…。
サッカーとは面白いもので、誰だか分からなくても、上手い選手というのは自然と目につきます。
一昨年、天皇杯でFC東京と対戦した時、「あのDF、すごくポジショニングが良いな。アイツがいるから攻撃できないじゃないか」と後で調べると、現ガンバ所属の今野選手でした。そういう発見も面白い。

「あんな小さなクラブだったのにね」と言える日が来たら嬉しい

ライセンス問題の後も観客は増えているし、今の時期にこの順位ならばいけるんじゃないかと思います。
去年と違って、アウェイで勝てるようになりましたしね。
暇な時に、昨年のJ2クラブのホーム戦、アウェイ戦の勝ち点をそれぞれ数えてみたのですけれども、ホームだけだったら水戸ホーリーホックは4位だったのです。アウェイだけだと18位か19位。
もちろん監督も分かっている事でしょうけれども、これが昨年ダメだった原因じゃないかと思いますね。
昨年みたいに無敗記録は続いていないですけれども、アウェイとホームの勝利数が今季はあまり変わらないですよね。バランスの取れた良いチームになれたと思います。

もっと先の話になりますが、これを今季だけでなく、継続していく事が大事ですよね。
そのためにも人とお金と、みんなで支えていく市民クラブになっていければと思います。
松本山雅FCは、地元の人々が自分達のクラブだと思っていて、J2なのに一万人もスタジアムに来る。理想はあんなクラブですよね。
ガンバの人達だって、J2に落ちてもあんなにたくさん来ていましたし。
静かに観るだけでもいいから、水戸ホーリーホックをみんなが気にするぐらいになるためには、今観ている我々が少しずつ周囲を巻き込んでいければいいのではないかと思います。
近所の人でもお父さんがホーリーホックを好きで、子どもを巻き込んで観に行っている。
きっとその子が大きくなったら、また観に行きますよね。
時間は掛かるでしょうけれども、そうして少しずつ輪を大きくしていく事が重要ですよね。

選手獲得の部分では、規模の大きなチームにはどうしても勝てませんので、活躍した選手はいつもどこか行ってしまう。
ヨーロッパだと、「アイツ、うちで育った選手なんだぜ!」と自慢しながら観るようですが、いつも引き抜かれてしまうばかりだと、それも寂しい。
天皇杯の決勝戦とかで「アイツもコイツも水戸にいたんだな~。みんな水戸にいたら…」なんて思うのは出来ればしたくありません。

今、水戸は良いルーキーを見つけて、ベテラン選手を教育係に置いて、少しずつ大きくしていくしかありませんのでね。
選手を育てて売るだけでは嫌だから、選手が活躍できるクラブに成長していければなりません。
J2にいたベガルタ仙台があんな位置にまで行って、ガンバがJ2にいるぐらいですから、今のJリーグならあり得ない話ではない。
2、3年でなれる事ではないけれども、長いスパンで見て、「あんな小さなクラブだったのにね」と言える日が来たら嬉しいですよね。

医療法人社団 大平医院
茨城県ひたちなか市八幡町9-7
Tel.029-263-3922

医療法人社団 大平医院 おおひらクリニック
茨城県水戸市笠原町1568-1
Tel. 029-291-6173

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診療科目は泌尿器科、内科。泌尿器科に関すること以外でも、健康上の悩みや不安に真摯に向き合う「地域のみなさまに信頼されるかかりつけ医」として地域医療に貢献している。

(米村優子)

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