デイリーホーリーホック

【HHレポート】「『社会性を含めて将来を背負い立つ選手を育てる』 ジュニアユース初の海外遠征」 (2016/4/25) ※無料記事

(写真左から)行川陸キャプテン、関寛太副キャプテン 【写真 米村優子】

(写真左から)行川陸キャプテン、関寛太副キャプテン
【写真 米村優子】

U-14世代が9日間のオランダ遠征に挑戦

3月22~30日から9日間、ジュニアユース初の海外遠征が実施され、U-14(現U-15)の選手19人がオランダ・ロッテルダムで開かれたジュニアユース世代の国際大会「ロッテルダムフットボールカップ」に出場しました。

ホーリーホックのアカデミーに在籍する選手は、プロを目指す子ども達。
今後世界レベルで活躍するために、海外でのコンディション調整、時差への対応、対戦相手とのコミュニケーション、現地での食事、移動の仕方など、若年層の時代からグローバルな経験を積むことは、大きなアドバンテージとなります。
そこでクラブは現在のU-15世代以降から保護者の協力で遠征費を積み立て、今回のオランダ遠征を実現させたのです。

何カ国か候補があった中、欧州のトップレベルの下部組織と対戦できるオランダの国際大会に決めたという北川佳男監督。
「ほとんど選手が海外の渡航経験がないので、社会性も含めて、将来を背負立つ選手に育つような経験を積んで欲しい。サッカーだけでなく、生活面などのパーソナリティーの部分も引き出したい。この経験をピッチ内外で表現してもらいたいと思って挑みました」と狙いを語ります。
今回の遠征は国際大会への出場だけでなく、欧州クラブの下部組織とのトレーニングマッチ、クラブハウス見学、オランダ対フランスの国際親善試合の観戦、アムステルダムやロッテルダムの観光もあり、盛り沢山のスケジュールが組まれました。

7カ国12チームが出場した国際大会で欧州の強豪クラブと対戦

ジュニアユース一行は11時間半のロングフライトとバスの長時間の移動を経て、試合会場となるロッテルダムへ。
現地入りした翌日から本格的に遠征がスタートし、地元強豪チームとのトレーニングマッチが行われました。
初戦はオランダ1部所属、小倉隆史名古屋グランパス監督が過去に在籍していたエクセルシオール・ロッテルダムと対戦。なんとエールディビジのチームに水戸が2-1で勝利。
次の相手、オランダ2部所属のFCドルトレヒトとの試合はスコアレスドローと、練習試合は幸先良く負けなしの好発進となりました。

そして到着6日目、「ロッテルダムフットボールカップ」がいよいよ開幕。
参加チームはエクセルシオールなどオランダのクラブを中心に、UEFAチャンピオンズカップで優勝経験もあるベルギー1部のクラブ・ブルージュ、北アイルランドナショナルチーム、ノルウェー1部のスターベクIFなど7カ国12チームの豪華な面々。欧州中心に各国のトップレベルの中学生世代が集結しました。
実はイギリス・プレミアリーグ所属のチェルシーFCも今大会にエントリーしており、チェルシー対水戸という夢のカードが予定されていたのですが、ベルギーのテロ事件の影響で急遽出場キャンセルに…。
空いた枠にはオランダのクラブJVOZが出場し、2グループ6チームの予選リーグの後、順位決定戦となる2日間の熱戦が幕を開けました。
水戸はクラブ・ブルージュ、エクセルシオール、PSVアイントホーフェンなどの強豪クラブと対戦するグループB。
トレーニングマッチで手応えを掴んだ選手らの目標は、当然のごとく優勝。1日4試合という過酷なスケジュールの中、いざ初の国際大会に挑みました。

予選リーグ5試合のリザルトは、エクセルシオールに0-2、次はPSVアイントホーフェン(オランダ1部)に1-4、3試合目はJVOZに2-2、4試合目はクラブ・ブルージュに1-1、5試合目スターベクIFに0-2。
0勝2分3敗でグループBの5位となりました。
そして順位決定戦の初戦はグループAの6位、カピラン・パロ(フィンランド3部)と戦いましたが0-1の黒星を喫し、その後11、12位決定戦でスパルタ・ロッテルダム(オランダ2部)に1-3で敗れ、最終的に最下位12位に。世界の壁を目の当たりにした結果となりました。
北川監督は「サッカーを知っている選手が多かった印象。体格差も含めて、個人の技術、チーム戦術の差がありましたし、モチベーションも含めて、大会中に100%の力を引き出すことが継続できませんでした。しかしこの経験は、選手にとって様々な気付きの材料となったと思います」と今大会を評しました。
ちなみに優勝は、クラブ・ブルージュ。北アイルランドナショナルチームに1-0で競り勝ち、ビッグクラブとしての底力を見せたようです。

遠征を糧に全国大会出場を目指す新U-15

行川陸キャプテンは「外国の選手はとにかくフィジカルが強い。それに今後どう対応していくかも課題ですし、守備や決め切るメンタルがまだまだ足りないと感じました。対応できた足元の技術はこれからも伸ばしていきたいです」と約一週間の遠征を振り返り、「親元を離れた生活の大変さも実感したので、これからは生活の面でも何でも自分でできるようにしたいです」と日常生活の意識改革にも本腰を入れている模様。
「外国人選手のフィジカルや球際の強さを実感した」という関寛太副キャプテンは「自分の持ち味であるドリブルが通用した部分もあるので、そこに磨きをかけていきたい。たくさん食べて、トレーニングをしてフィジカルを鍛えれば、世界で戦えると思いました」と自信を覗かせていました。
残念ながら公式試合は散々な結果に終わりましたが、選手らは練習場やホテル、食事なども充実した環境の中で世界を肌で感じ、公私共に実り多き遠征となったようです。

オランダの国際大会での課題に取り組む新U-15メンバーは、現在IFAリーグ、関東クラブユース茨城県大会に出場中。
「個々のスキルが高い選手がいるので、それぞれのパーソナリティー、チーム力を上げていきたい。まだまだメンタルも幼いので、意識の高いプレーが継続できるように変えていきたいと思います」と北川監督。
今季は、関東クラブユース大会で一回戦を突破した昨年以上の好成績を残し、全国大会出場を目標に掲げて日々練習を重ねています。

「自己実現を目指す目標意識」「組織(社会)の中の個人」「うまく生きるだけではなく、良く生きるための学習期間」という3つの「人格的な成長」を重視しながら、クラブを背負い立つ選手を一貫指導で育成している水戸アカデミー。
これから毎年恒例となるジュニアユース世代の海外遠征を通じて、アカデミー全体のレベルアップを図るとともに、今後トップチーム、世界で通用する選手を多数輩出していくことに期待したいですね。

オランダ遠征後、FC古河とのトレーニングマッチに挑んだ新U-15のメンバー。レギュラー組を中心に高い意識の中、課題克服に取り組んでいる。 【写真 米村優子】

オランダ遠征後、FC古河とのトレーニングマッチに挑んだ新U-15のメンバー。レギュラー組を中心に高い意識の中、課題克服に取り組んでいる。
【写真 米村優子】

(米村優子)

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