デイリーホーリーホック

本間幸司選手「『3月11日』という日を深く噛みしめながらプレーしないといけない。そして、見ている人に『さらに前に進もう』というメッセージを届けたい」【コメント】※無料記事

【写真 佐藤拓也】

Q.次節讃岐戦は3月11日に行われます。
「3月11日が近づいてくると、当時のことを思い出しますね。だけど、日常生活において、忘れてはいないけど、どうしても薄れていくところがある。だからこそ、『3月11日』にはそういう思いや気持ちを思い出さないといけない。僕らは今は普通に生活できるようになりましたが、まだ苦しんでいる人もたくさんいるし、つらい思いをしている人もいる。当時は苦しんでいる人やつらい思いをしている方々の思いを少しでも和らげることができればと思ってサッカーに取り組んでいました。ちょっとした光や希望や勇気、見ている人に何かを伝えたいという思いでプレーしていた7年前の思いは絶対に忘れてはいけない。自分のためとか、チームのため、クラブのためとかではなく、もしそういう方々が見てくれていた時に恥ずかしくないプレーをしないといけないという真摯な思いを全員が持っていた。そういうところをしっかり思い出して、もう一度そこに気持ちを戻してプレーしたいと思います」

Q.あの震災がクラブ発展の契機になったような気がします。以降、地域との距離が近くなったのでは?
「大きなきっかけにはなったと思います。でも、本当はそれがきっかけになってはいけなかったとは思います。被災地のプロクラブとして何をすべきかを考えて、ホーリーホックにとってやるべきことが見つかったというか、今までやれなかったことにチャレンジできるようになった。その大きなきっかけになったと思います。ただ、当時はそんな先のことを考えずにとにかく地域のためを思って、支援活動を行いましたし、自分たちにできることをやろうと思っていました。その中で僕たちだけでなく、サポーターや地域の方々とともに歩んでいきたいという思いが強くなりました。それまでクラブ自体がまとまったことがなかったのですが、あの震災以降、ホーリーホックに関わる人が一つになったらすごく大きな力を発揮できるんだということに気づくことができた。それがすごくいい経験になりました。ただ、震災を機に俺たちみたいな経験をした人というか、地域の力をあらためて感じた人は多いと思う。あれから7年、さらにその力を大きくしていくことが大事だと思う」

Q.被災地のクラブとして伝えるべきことがありますね。
「茨城は『忘れられた被災地』と言われていて、被災地と思われてないことが多いんですよね。一番強く思ったのは、震災チャリティーサッカーに参加した際、『被災地のチーム』に入れてもらえなかったこと(苦笑)(2011年12月23日に開催されたJPFA(日本プロサッカー選手会)主催『JPFAクリスマス・チャリティーマッチサッカー2011』において、本間幸司選手は被災地のクラブ在籍選手で編成された『東北選抜メンバー』ではなく、それ以外の選手で編成される『JPFA選抜メンバー』の一員としてプレーした)。被災地は東北だけと思われていたんですよね。被災地側のチームに入れてほしかったという思いはありました。被害の大小はあれども、茨城も大きな被害を受けたわけで。そういうことをもっと伝えたいという思いが当時からありました。茨城の人も苦しい思いをしたし、怖い思いもした。茨城よりも東北の方がはるかに被害は大きかったと思いますが、思いは同じだということをもっといろんな人に知ってもらいたいと思っていました」

Q.クラブは3月17日の第4節山口戦からホームゲーム3試合を「東日本大震災復興支援」として21市町村の方を3回に分けて無料で招待するという活動を今年も行います(詳細はこちらwww.mito-hollyhock.net/news/8237/)。
「クラブの人も同じ思いだと思うんですよ。なので、選手もそういう気持ちで戦わないといけない。今年は新加入選手が多いですし、水戸に来るのがはじめてという選手も多い。でも、彼らにもそういうことを知ってもらいたい。おそらく今の水戸の町を見ても、気づかないと思うんですよ。ただ、言葉で伝えるのは難しい。なので、こうやってメディアで伝えることも大切なことだと思います。何年経っても忘れてはいけないし、活動を続けていかないといけない。チームが勝つことが大事ですし、結果を出すためにサッカーをしているけど、当時はJリーガー全員が見ている人たちに少しでも元気だったり、明るい気持ちだったり、笑顔になってもらいたいと思ってプレーしていたと思う。その気持ちが大切だと思います。3月11日の試合はスタジアムに来る人だけでなく、DAZNで見る人もそういう思いで試合を見ると思う。だから、僕らは『3月11日』という日を深く噛みしめながらプレーしないといけない。ちょっと記憶が薄れてしまったけど、ここでもう一度思い出して、『さらに前に進んでいこう』というメッセージを届けられるようにしたい。僕たち選手だけでなく、水戸のサポーターだけでなく、相手のサポーターとも一緒になって、そういうスタジアムの雰囲気を作っていけたらいいと思いますね」

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