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西村卓朗強化部長インタビュー(前編)「今シーズンのチーム編成の狙いと意図」【インタビュー】※無料記事

【写真 佐藤拓也】

例年のように昨季の主力を引き抜かれ、戦力低下が懸念された中、
そんな不安を払拭するようにリーグ序盤で昨季以上のチーム力を見せている。
それも西村強化部長が行うチーム編成に確固たる信念とビジョンがあったからこそ。
今季に向けて、どのような狙いと意図を持ってチーム編成を行ったのか。
リーグが開幕した今だからこそ明かせる、様々な話を語ってもらった。

理想の8割ぐらいのチーム編成はできた

Q.リーグ戦が開幕して、5節を終了時点で3勝2分と好スタートを切れました。西村強化部長はどのようにチームを見ていますか?
「いいスタートは切れたと思います。チーム編成で自分がいつも心がけているのはいろんな要素をチームの中に集めること。昨年、監督交代があり、その中でチーム編成を行いましたが、監督がどういう選手を好むか、実際のバランスだとか、そういうのは試合をしてみないと分からないものがありました。今季に向けては、監督の好みも理解できましたし、昨季の足りなかった要素も分かっていました。それを踏まえたチーム編成ができたと思います。理想の8割ぐらいのチーム編成はできました。実際、今のところは結果もついてきています。そういう意味でもいいスタートを切れたと思っています」

Q.チームのパフォーマンスも狙い通りですか?
「今季に向けて、監督が求める攻撃的なサッカーや連動したサッカー、ファーストディフェンスの質をさらに高めようということで準備してきました。昨季から何人か主力が抜けましたが、残った選手にどういう選手を組み合わせるかというところを考えてチーム編成を行いました。たとえば、昨季のチーム得点王ジェフェルソン・バイアーノ(山形)は強さがありました。ターゲットにもなれました。でも、連動という点に関しては攻守において弱かった。そこを補う選手として獲得したのが清水慎太郎です。今のところ、攻守において、周りとの関わりはいいものを見せてくれていると思います。守備に関しても、これから時間が経てばもっとよくなると思います。特に攻撃においてのターゲットとしての役割や周りの使い方、時間の作り方に関しては、昨季より質の高いものを見せてくれていますね。昨季右MFだった黒川(淳史)を今年はFWで起用しています。伊藤涼太郎(大分)が大分への移籍が決まった時、このポジションに誰を獲ろうか考えました。ただ、契約交渉の中で黒川と話をしたとき、『真ん中のポジションで勝負したい』と主張してきました。それは僕の頭の中にありました。昨季、たった一度だけでしたが、キャンプ時の琉球戦で小島幹敏(大宮)とボランチを組んだことがあったんですよ。僕の中でその時の印象がすごくよくて、黒川は真ん中のポジションもできるという印象がありました。日本サッカー界の中で右MFでプレーできる人材は少ないんですよ。でも、彼はそのポジションを昨季は攻守において十分こなしてくれていました。それ以外の役割を昨季はなかなか与えられなかったのですが、今季のプレーを見る限り、彼は真ん中でも特徴が出せることは証明しています。攻撃だけでなく、守備においても前線からプレスをかけて彼がボールを奪う回数は1試合の中で2~3回あるんですよ。これはリーグの中でトップだと思います。スピーディーで展開の速い現代サッカーに非常にマッチした選手だと思います。(第6節終了時点で)得点がないことは彼の課題ではありますが、貢献度に関しては、昨季の伊藤涼太郎とまた違ったものを見せられていると思っています」

Q.昨季よりも攻守の連動が高まっています。それは狙い通りということですね。
「守備の連動の課題は各ポジションにあるのですが、攻撃の連動に関しては非常にいいものを出せていると思っています。まだ出場機会に恵まれていない選手もそこに入っていける選手はいます。たとえば、浅野雄也、平塚悠知、村田航一といった選手は十分入っていけると思いますし、森勇人も今までの選手とは違ったパーソナリティという要素を持っているので、間違いなく力になってくれると思っています」

【写真 水戸ホーリーホック】

両サイドバックはもっとよくなる

Q.小島選手が抜けたボランチには実績のある選手の補強がありませんでした。そこは平野佑一選手がいるから大丈夫という判断だったのでしょうか?
「昨年1年見てきて、なかなかスタメンを取れなかった選手の中でも田中恵太(琉球)だったり、平野だったり、レギュラークラスの力を備えた選手がいたんです。小島が抜けることは途中で分かりましたが、同等のレベルの選手を他チームから獲得するよりも1年間準備をした選手で大丈夫なんじゃないかという感覚があったので、平野に期待して補強をしませんでした。それは彼にも伝えました。背番号でサッカーをするわけではありませんが、彼にはそういうメンタリティーや自覚を持ってもらいたかったので、彼と話をして、6番に変更しました。でも、彼はもっともっとできると思っています。とはいえ、J2の中で力を発揮できるとは思っているので、そこは想定通りですね。ボランチは彼だけではなく、ウチのチームでは古株になった白井永地もいますし、平塚という才能のある選手も獲得できたので、4人で競争できれば、小島の穴は埋まると思っています。穴を埋めるだけでなく、小島になかったよさを今のボランチの選手たちは出せると思っています」

Q.データにも出ていますが、今年はサイド攻撃が増えています。両サイドバックに攻撃的な選手を獲得しましたが、彼らのよさを生かすためにも展開力のあるボランチが必要だったと思います。そういう意味でも平野選手がフィットしているのでは?
「私が平野をはじめて見たのは大学2年生の時でした。その時はAチームではなく、Bチームでの試合だったのですが、『こんな賢いボランチがいるのか』と驚かされました。プレーする時の姿勢がすごくいいですし、視野が広い。だから、いろんなプレーができる。左右両足でサイドチェンジをいい球筋で蹴れる。そして、現代サッカーで重要な斜めのグラウンダーのパスを2タッチやダイレクトで出せる。そこが彼の圧倒的なよさ。攻撃の方向を変えることができます。その方向の変え方やサイズの出し方は素晴らしいものがありますね」

Q.両サイドバックも期待通りの活躍を見せていますか?
「2人とももっとできると思っています。昨季の田向泰輝(徳島)とジエゴ(徳島)は非常に個人能力の高い選手でした。局面を守ることが非常に上手な選手で、個で対応することに長けた選手でした。ただ、攻撃におけるかかわりに関しては、改善点もありました。なので、今季はより攻撃の感覚を持った選手を入れるということは以前から自分の頭の中にありました。攻撃のつながりにおいては、志知孝明も岸田翔平もいいものを持っている。今のところ、ある程度は出せていると思います。でも、精度やつながり方はもう少し時間をかければ、もっとよくなると思いますし、組み合わせなどでもっと能力を発揮されるものが出てくるんじゃないかと思っています。ただ、守備のところにおいての状況の整理などはまだ課題もあります。守備がよくなれば、攻撃のつながり方ももっとよくなると思います。それもやりながら高めていくという作業になります。現段階で勝ち点を積み上げながらそういう作業ができているということは非常にポジティブだととらえています」

Q.攻撃的なポジションでプレーしていた志知選手をなぜサイドバックにコンバートしようと思ったのですか?
「自分が選手をしていた時もそうでしたし、監督を経験した時もそうだったのですが、やるべき戦術やプレーモデルやゲームシチュエーションをしっかり定義して伝えることができれば、十分に異なるポジションでもやれるという感覚が自分の中にあるんです。こういうことって、既成概念があって、やらないケースがあるのかもしれませんが、戦術的なことは後天的に十分身につけられると思っています。身につける要素を整理できれば、しっかり伝えられるという自信が自分の中にありました。そういうことを監督やコーチ陣とは、特に今年度において、共有できています。そこの部分があったので、コンバートに関して心配はしていませんでした。むしろ、志知の体の強さやボールの置き所や見るところや局面の判断を評価していますし、今からそういうことを高める方が難しい。なので、そういう能力がある選手に後天的に戦術を身につけさせた方がやりやすいと思いましたし、松本時代にはウイングバックでプレーした経験もあり、アングルが大きく変わることもないので大丈夫だろうと考えて獲得を決めました。彼も水戸を選んで来てくれました」

【写真 水戸ホーリーホック】

MVPはクラブの信念の取り組みとして続けていきたい

Q.ルーキーについて話を聞かせてください。質の高い選手を獲得できたと思いますが、彼らを獲得できたのはなぜですか?
「水戸の弱点はスカウトがいないこと。その中でどうやって選手を獲得するか。当然ですが、できる限り足を運ぶようにはしています。大学に関して、各校1試合は必ず見るようにしています。でも、それでは追いつかないんですよね。特に関西方面は。なので、仲介人や大学の先生や監督など一定の筋から売り込みがあった場合は練習に呼んで見るようにしています。昨年は40人ぐらい練習生を呼びました。村田も浅野もそこで獲得を決めました。村田はリーグ戦でよく見ていたものの、浅野はそれまで見たことがなかった。1度練習で見て『これはいいぞ』と思い、リーグ戦を大阪まで見に行きました。その試合には出なかったんですけど(苦笑)。スピードがあり、左利きの選手を狙っていたので、迷いなく獲得を決めました」

Q.浅野選手はスカウト陣から注目されていなかったのですか?
「浅野拓磨の弟という認知はされていたと思いますが、彼は大学の試合に先発としてコンスタントに出ていなかったんですよ。なので、どのクラブも躊躇したんじゃないですかね。ボニ(ンドカ・ボニフェイス選手)もそうでしたね。自分の中で先天的に持っているものと後天的に身につけさせるものの整理はできています。両方を兼ね備えている選手はJ1クラブに行ってしまう。なので、ウチとしては何かに目を瞑りながら、重視する要素を整理して先天的なものを持っている選手と判断すれば、獲得するようにしています。そういう点で浅野はまったく迷いがありませんでした。村田に関しては他のクラブに獲られるんじゃないかと思っていたんですよ。でも、どのクラブからもオファーが来ていないとのことだったので、チャンスがあるなと。ただ、いい選手だから獲得するというわけにもいかないんですよ。既存の選手の状況もありますから。村田の獲得を考えていた時、宮本(拓弥選手)はまだFWでプレーしていたんです。もしかしたら、FWで大成するかもしれないという状況でした。宮本と村田は同タイプだと見ていました。でも、宮本がDFにコンバートすることとなり、村田を獲得できるかもしれないという状況になりました。その時、岸本(武流)が残るかどうかという状況でした。村田は岸本と宮本の両方のよさを持っている選手という評価をしていて、どうするかということとなり、監督とも相当議論をしました。でも、監督は村田のことを高く評価していて、獲得したいという意向を示してくれました。岸本に関しては、期限付きを延長する保障がなかったので、オファーを出しました。村田は練習参加した際、Make Value Project(MVP)にも参加させたんです。彼は内定が決まっていたり、サッカーだけでない将来設計があるということを知っていました。そういうこともあり、村田は水戸にすごく興味を持ってくれたみたいです。なので、水戸を選んで来てくれました。黒川も水戸に残ってくれた理由として、MVPなどの新しい取り組みを評価してくれたみたいです。なので、MVPはクラブの信念の取り組みとして続けていきたいと思います。人が育ち、クラブが育ち、街が育つというのはクラブのテーマですが、『育つ』ための一つの取り組みとして大切にしていきたいですね」

【写真 水戸ホーリーホック】

(取材・構成 佐藤拓也)

※後編に続く。後編は4月16日公開予定。

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