今だから明かせるJ2のキーマン対策法。戦術家・北野誠のスカウティングレポート(J論)

デイリーホーリーホック

J2第9節ヴァンフォーレ甲府戦「志知のFKで劇的逆転勝利! たくましく戦い抜き、首位を奪還」【レビュー】※無料記事

【写真 水戸ホーリーホック】

失点後に見せた精神的な成長

90+4分、ペナルティエリア前で得たFK。キッカーの志知孝明が左足を振り抜くと、ボールは壁の一番外に入った清水慎太郎がしゃがんだ頭上をピンポイントで抜けていき、ゴールネットに突き刺さった。GKが一歩も動けない、完璧なシュートであった。劇的ゴールにピッチの中、そしてベンチで選手とスタッフは喜びを爆発させた。長谷部体制51試合目にして初の逆転勝利。新たな可能性の扉を切り開いた。

「無敗対決」は予想通り、非常にタフなゲームとなった。甲府は今季初めて外国籍選手を前線に並べる形を採用し、彼らの個の力を生かして攻撃を仕掛けてきた。そして開始2分、ピーター・ウタカの個人突破を阻止して与えたCKからゴールを奪われ、いきなりビハインドを負ってしまう。「あってはいけない失点でした」と長谷部茂利監督が振り返るように、試合の入りに隙を与えてしまったことは今後に向けての反省点だ。しかし、そこからチームとしての成長を選手たちは示してみせた。

「昨年は失点後に追加点を決められることが多かった」(黒川淳史)。悪い流れを断ち切れず、失点を重ねて苦しい展開に持ち込まれてしまったのが昨季までの水戸だった。しかし、この日は失点しても、すぐに気持ちを切り替えて当初のプラン通りのプレーを選手たちはまっとうした。「失点した後も落ち着いて、ボールを保持しながらゴールに迫ることができていた。昨年から主力としてプレーしている選手が何人かいるので、そういう選手が中心となって流れや雰囲気を感じながらプレーできたと思います」と黒川が胸を張ったように、これまで積み上げてきた自信を選手たちは失うことなくプレーし続けた。

両サイドから果敢に攻め立てチャンスを作り出し、26分に白井永地からのロビングボールを受けた村田航一が体を張って落としたボールを黒川が拾い、甲府DF2人をかわし、最後はGKの頭上を抜くループシュートを決めて試合を振り出しに戻した。

攻撃的な選手を投入。勝ち点3へのメッセージ

その後も水戸がボールを支配して攻め込む展開が続いたものの、予想通り、後半途中から甲府はギアを上げて水戸ゴールに襲い掛かってきた。反撃のスイッチとなったのは67分の佐藤洸一の投入。外国籍選手と交代しての投入かと思われたが、右ウイングバックの田中佑昌を下げ、システムを4-4-2、実際は4-2-4のような形に変更して、前線にさらにパワーをかけて押し込んできたのだ。

そこから水戸は苦しんだ。シンプルに両サイドの外国籍選手にボールを入れてくる甲府に対して、水戸はプレスをかけることができず、守勢を余儀なくされた。69分には右サイドを突破されて上げられたクロスに対して、必死に戻ってスライディングした細川淳矢の足に当たったボールがゴールポストに直撃するなど、ギリギリの攻防の中、苦しい時間帯を乗り切った。

水戸も負けじとギアを上げた。59分に清水慎太郎、75分に浅野雄也、88分にはジョーといった個で打開できる攻撃的な選手を次々に投入。勝ち点1ではなく、勝ち点3を取りに行くメッセージを感じさせた。終盤、オープンな展開になった中、甲府を凌駕したのは水戸の脅威の運動量だった。終盤まで出足で上回った水戸の勢いは失われることはなかった。そして、後半アディショナルタイム、中盤でボールを奪った前寛之が縦パスを入れ、ジョーが相手をかわしたところ、ファウルを受けてFKを獲得。そして、志知の値千金のミラクルゴールが生まれたのだった。

水戸のサッカーがこの2年で大きく変わっている

「選手たちは本当にたくましくなったなと思います」。長谷部監督が発したこの言葉がすべてと言えるだろう。ただ、いきなりたくましくなったわけではない。過去最高順位を記録しながらも、リーグ序盤の快進撃から一転して失速したことや2度の4連敗を喫するなど数々の痛みを受けた経験を選手たちは無駄にせずに糧にしてきたからこそ、身につけた“たくましさ”である。それを今節体現してみせたのだ。「1人1人が時間帯を考えて、変えないといけないのか、このままでいいのか、判断しながらプレーできつつあるし、それを共有できていることが今日の逆転につながっているような気がします」と前は誇らしげな表情で口にした。

「水戸のサッカーがこの2年で大きく変わっている」(前)。間違いなく、今、水戸は大きな転換期にいる。それを実感することができた逆転勝利であった。しかし、ここがゴールではないことは言うまでもない。まだ転換期の真っただ中。この“たくましさ”が当たり前になった時が本当の“変化”であり、その先にある“結果”を掴み取ることが真の目的だ。

この状況を「春の珍事」にするのか、それとも、「定着」させていくのか、すべては今後の戦い次第。しっかり心と体を整え、次節に挑んでもらいたい。

戦いはまだまだ続く。そして、水戸はもっともっと強くなる。

(佐藤拓也)

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