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デイリーホーリーホック

「『ギフティング』『ライブコマース』――リーグ再開後を見据え、水戸はデジタルで攻める」【コラム】※無料記事

中断期間中も毎日情報を発信

「ホーリーくんのTシャツをデザインしてください」
進行のグッズ担当が指示すると、6つに分かれた画面の下に映し出された3人の選手が水戸ホーリーホックのマスコットであるホーリーくんのイラストを白いTシャツに描きはじめました。そして、三者三様の「ホーリーくんTシャツ」が完成。すると、グッズ担当から「これから3人がデザインしたTシャツを販売します」と発表されたのです。

5月23日に行われたオンラインイベント「水戸を愛する俺らの#stayhome」第5弾「選手がグッズ。をプロデュース」は、クラブ初となるライブコマースを導入したイベントとして開催されました。ライブコマースとはオンラインで生放送の動画を配信し、動画内で商品の紹介や販売を行えるシステム。ファッションイベントでモデルがランウェイに登場した瞬間に着用している服を購入できるシステムなど、アパレル業界では広く導入されていますが、今回、水戸はスポーツ界ではまだ馴染みの薄いその手法にトライしたのでした。その結果、この日販売した商品は完売。出演者は安堵した表情を見せ、配信は終了しました。はじめての試みとしては成功をおさめたと言えるでしょう。

リーグ中断期間中、水戸は積極的なデジタル戦略を展開しています。練習試合のインスタライブ配信をはじめ、4月には選手参加型の配信イベントを4度にわたって実施しました。さらにSNSと2月末に開設したオウンドメディア「ホーリーデジタル」で練習風景やオフショットなどの情報をチームの活動が停止になっても毎日発信し続けました。

「リーグが中断し、練習見学もできない状況が続き、ファンの人とチームが接点を持つ機会が極端に減ってしまうということが起きていました。なので、我々としては1日も発信物がとぎれないように意識しました。今もマーケティングと広報のチームは毎朝会議を行って、その日にどの情報を出すのか、空いている日がないのかチェックをして1日も空けないことを徹底しています」
そう語るのはマーケティング担当の片野翔大さん。かつてJリーグや東京ヤクルトスワローズでCRM活動に従事してきたデジタル戦略のスペシャリストです。昨年から水戸の一員となった片野さんを中心にデジタルコンテンツの充実を図ってきました。その成果が、中断期間中に発揮されることとなったのです。

5月からデジタル戦略は次のフェーズへ

5月に入ってから、水戸のデジタル戦略は次のフェーズに入りました。4月まではいわば「ファン・サポーターを楽しませる」ためのコンテンツがほとんどでした。一方、5月以降はデジタルコンテンツによる新たな収益システム構築へのトライも行われるようになりました。

5月16日に配信された森勇人選手出演の「勇人先生の世界一受けたい授業」ではクラブ初となる「ギフティング」システムを導入。さらに5月18日から24日にかけて昨季選手が実際に着用したユニフォームをネットオークションで販売。そして、23日に前述のライブコマースイベントが開催されたのです。

「もちろん、ファン・サポーターのみなさんに楽しんでもらうことが一番の目的です。そのうえで、リーグ再開後無観客で試合を行う可能性が出てきた中、スタジアムでの収入がなくなった場合にいかに収入を得るかということを考えるためのプロジェクトチームを立ち上げました。各部署を集めて、どこでマネタイズできるかを話し合いはじめ、その中でデジタルマーケティング周りに関して、いろんなことにトライしていくこととなったんです」
新たなデジタル戦略の狙いについて片野さんは語ってくれました。

「ギフティング」とは、web上で視聴者が配信者に金銭等の寄付ができるシステムのこと。
「DAZNを中心とした家庭での視聴の前後または試合中にできることは何かなと考えた中、試合前や試合後のコンテンツを作れば、ギフティングをセットにできるかもしれない。また、試合中も試合の映像を映さずに解説するような副音声的なコンテンツを作れればギフティングしてもらえるんじゃないかということでトライしてみました」
Jリーグとしても「ギフティング」の導入を検討しているという報道もありましたが、水戸の場合、リーグ再開に向けてクラブ独自でシステムを構築しようとしているのです。

デジタルコンテンツを新たな収益の一つの柱に

また、今後に向けたライブコマースに関しての狙いも明かしてくれました。
「たとえば試合後のインタビューで選手が着ているユニフォームをその場で販売することはできないかなと考えています。また、スポンサーさんとの共同商品が出来た時に選手が『これをぜひ買ってください』と言った瞬間から買えるようになったらいいですよね。それと、スタジアムで試合を見ている時にタオルマフラーを欲しくなったらグッズ売り場に行けば買えますが、無観客だとそれはできません。なので、試合を見ながら欲しいグッズを EC(電子商取引)で買えるようにしたい。他業種で行われていることを取り入れながらどういう状況に対しても備えられるようにしていこうと思っています」

リーグ再開後、無観客での試合開催や観客数の制限を強いられることとなれば、各クラブとも大きな減収が予想されます。水戸も例外ではありません。そんな事態を乗り越えて生き残っていくためにも、今までの概念にとらわれることなく、新たな収益構造を構築することが求められています。「デジタルコンテンツ」をその一つの柱とするために、水戸は攻めの姿勢を貫いているのです。

片野さんは言います。
「ギフティングもライブコマースも実際にやってみて、手応えはものすごくありました。今後、可能性は相当広がると思います。選手がたくさん出るようなイベントがあってもいいですし、逆に硬派なコンテンツがあってもいいかもしれない。様々な角度からコンテンツ化していけると面白いですね。収穫も課題も分かったことがたくさんあるので、この経験を今後に生かしたいと思います」
ピンチをチャンスに変えるためのトライはまだまだ続きます。

(佐藤拓也)

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