デイリーホーリーホック

「西村GMが総合人材サービスを手掛けるパソナグループのトークイベントに登壇。多様なキャリアを歩むアスリートと後悔しない競技人生をアシスト」【HHレポート】※無料記事

【写真 株式会社パソナグループ提供】

8月3日、総合人材サービスを手掛ける株式会社パソナグループ主催のトークイベント「後悔しないアスリート人生とは~これからのアスリートキャリアをデザインする~」が東京都千代田区大手町のパソナグループJOB HUB SQUARE 2階ホールで開かれ、西村卓朗GMが基調講演とパネルディスカッションに登壇しました。

コロナ禍による大会の中止や延期、無観客開催などの影響で、今後の競技生活のあり方や引退後のライフプランについて考えるアスリートが増加している中、現役生活中はセカンドキャリア等に関する十分な情報が得られないことで、不安を抱える人も多い現状があります。
そんなアスリート達をサポートしようと開かれたトークイベントに、あらゆる競技の現役選手やスポーツチーム運営者など約140名が参加しました。
冒頭では、若い世代のスポーツ振興に取り組むパソナグループの「兵庫アスリートナビゲーター」に就任しているベルギー1部シント=トロイデン所属の香川真司選手からのビデオメッセージが流れ、「今はネットや環境の変化でどこでも知識を身に着けることができるので、アスリートは限られた時間の中で何をするか、どう動くかが大事です」と力強いエールからイベントがスタート。

【写真 株式会社パソナグループ提供】

そして、2018年から選手やパートナー企業のキャリア形成に関する知識習得・人材育成研修プログラム「Make Value Project(MVP)」を考案し、現在も実践している西村GMが「これからの時代のアスリートキャリアを考える」と題した基調講演を実施しました。

最初は、国内外のクラブやFリーグなど計11年6チームでプロ選手としてプレーし、引退後は浦和の下部組織、Jリーグ新人研修の講師、VONDS市原で監督兼GM、2016年から水戸で強化部長やGMを歴任した自身の多彩な経歴を紹介。

そして、2016年にJクラブ強化担当者へ実施された「長く活躍する選手に必要な能力とは?」に関する大規模アンケートの結果を例に挙げ、「技術力、身体能力、人間力の中で、半数以上が『人間力』と回答し、中でも『傾聴力』『主張力』が必要とのことでした。これは他の業界にも通ずる所があると思います」とサッカーやスポーツのみならず、社会で求められる能力について語りました。
サッカー選手が持つ力は、テクニカルスキル(専門性)が最上位ですが、それを支えるポータブルスキル(社会人基礎力)、スタンス(価値観・使命感)という2つの土台があります。
水戸ホーリーホックでは土台部分のポータブルスキルとスタンスを大切にしていることを強調し、また、クラブで18歳から44歳まで幅広い年代の選手を採用している中で、若手の価値観の多様化、柔軟性が求められる時代に伴い、アスリートマネジメントに変化が生じていることも明かしていました。

【写真 株式会社パソナグループ提供】

そして話題は“育成の水戸”の根幹をなすMVPへ。
プロサッカー選手は、狭いコミュニティの中で偏った価値観やスタンスを形成されやすく、相対的な勝負を繰り返す中で絶対的な自分を確立しづらい環境であり、「うまくなる」「勝つ」「続けていく」ことが目的になりがちです。
しかし、プロサッカー選手は自分自身の経営者。一社会人として、自身の人生やビジネス面など様々なマネジメントをしていかなくてはなりません。
そのため、まず大切にしている価値観やこだわりを特定し、きっかけになった原体験を自覚、言語化して共有。
集合研修を通じて、様々な背景を持つ人々の多様な日常、価値観、使命感に触れながら、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を策定します。
その後も「なぜサッカーをするのか?」を問い続けることにより、一人称で完結しない社会や他者に貢献したいと思う目的を見つけることで、ピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質など人間力の向上につなげていくMVPの狙いを紹介しました。
MVPによる人材育成では、1on1面談(絶対的な自分を深める)、集合研修(相対的に自分を知る)、目標設定(なんのためにサッカーをするか)の3つが重要なポイントとなっています。

【写真 株式会社パソナグループ提供】

そして西村GMは、これからの時代のアスリートキャリアに必要なものは、「多様性」「交流」「Being(在り方を追求し続ける)」「Doing(行動をし続ける)」と、その重要性を強調。
「現役引退当時、準備はしていたものの、不安と迷いがありました。Doingはしていたけれども、Beingが少し足りなかったと思うことがあります。そんな原体験を踏まえて、選手教育の機会を作っています」と述べ、約20分の講演を締め括りました。

続いて、パネルディスカッションには、フリーアナウンサーの田中大貴さんが司会進行を務める中、西村GMの他、パソナグループのアスリート社員で女子15人制ラグビー日本代表の玉井希絵さん、男子ビーチバレーボール日本代表ジュニアヘッドコーチでパソナグループ所属アスリートコーチの草野歩さん、サラリーマンからボリビアプロサッカー選手や5人制サッカー日本代表となり、現在はパソナのスポーツメイト事業責任者の菊池康平さんが登壇。
「競技生活の経験で、今の仕事に役立っていることは?」「アスリート人生における一番の『学び』は?」などの質問に登壇者が意見交換する形で進められ、西村GMは真摯に挑戦を続けた現役時代やアスリートへのリスペクトが垣間見られるトークを展開しました。

「現役中にやっておけばよかったことは?」に対して、「起業」と西村GM。
「当時は現役に集中する流れだったのですが、今の時代だったらしていたような気がします。やってみたかったです」と、クラブ内でMVPや農業ブランド「GRASS ROOTS FARM」など話題性のある様々な新規事業に深く関わる西村GMらしさ全開のアンサーとなりました。

【写真 株式会社パソナグループ提供】

また、「どのような“想い”をもって、競技生活を送っていた?」には、「自分が成功することで、努力すれば辿り着ける『希望の証明』ができるのではと思っていました。もう一つは周囲への『感謝』。プロになりたての頃は自分を見せたい、認めてもらいたい思いが強かったですが、最初に所属したチームを1試合も出場することなく次のチームに行った時、自分がどうありたいか考え直しました。その中で『感謝』を伝えたいと思うことで、道が開けるようになりました」とプロ時代の心構えについて明かしていました。

そして、「後悔させないアスリート人生を送るために、指導者はどうあるべきか?」という参加者からの質問には、「自己認識を高め、深めてあげること。現状の認識をさせること。それを上手にやりくりすることが大事です」とアドバイス。

最後に西村GMは、「ずっとスポーツに関わっていますが、必ず社会や世の中に役立つもので、更に可能性を感じています。キャリアは競技だけではなく、アスリート人生は前半で、その後は後半あり、両方がセットです。引退後も活き活きと活躍することで、スポーツの価値も高まっていきます。そういう価値を皆さんとともに作っていきたいと思います」と抱負を語りました。

終わりの見えないコロナ禍で、アスリート達はまだまだ厳しい環境にあります。
今回のトークイベントで知り得た水戸ホーリーホックの人材育成の取り組みや、西村GMら多様なキャリアを歩むアスリート達の金言は、現役選手らが既存のやり方に囚われず、充足感に満ちた競技人生を模索する機会となったのではないでしょうか。

【写真 株式会社パソナグループ提供】

(佐藤拓也)

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