J論プレミアム

アルビサポ「かりんとう」さんの緑色なジンクス(えのきどいちろう)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

アルビサポ「かりんとう」さんの緑なジンクス(えのきどいちろう)[えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]八段目

 

「わたしが行くとヴェルディが勝つんです」

平成も押し詰まったJ2第10節のことである。味の素スタジアムで「東京ヴェルディ×アルビレックス新潟」の試合が行われた。何しろ当「踊るアルキバンカーダ!」コラムは(タイトルがまだ僕にほ覚えられないのだが)海江田哲朗さんとのリレー連載である。そりゃもう絶対、ヴェルディ戦はネタにしたい。それも出来たらほのぼのとした小ネタが望ましい。あんまり海江田さんと「ヴェルディぶっ倒す!」「アルビ叩きつぶす!」的な殺伐としたやりとりはしたくないものだ。

1人のアルビサポの存在が脳裏に浮かんだ。新潟県南魚沼市出身の「かりんとう」さん。東京で就職し首都圏に住む、アルビサポ用語で「関東サポ」と呼ばれる女性だ。「関東サポ」は何がすごいってホームゲームが実質アウェーと同じになることだ。「かりんとう」さんは新幹線でビッグスワンに通っている。しかも実家に泊まらず、ホテルを押さえている。むしろ、今回のような首都圏アウェー戦のほうが圧倒的に安上がりだ。

僕は色んな地方クラブ(プロビンチャ)に「関東サポ」のような遠距離恋愛サポが存在するのだと思う。大学進学や就職で地元を離れて、それでもふるさとのクラブを応援している。サッカーを通じてふるさととのつながりを確認している。「かりんとう」さんはホームもアウェーもほぼ皆勤賞だ。サッカーライフが血肉化している。アルビの試合がない日は近場の川崎、東京V、町田、相模原の試合に行って、元アルビ戦士を応援したりする。

で、ある日、妙なことを言い出したのだ。

「わたし、たぶんですけどヴェルディの勝った試合しか見たことないんです」
「え、どういうこと?」
「わたしが行くとヴェルディが勝つんです。どんな連勝中の相手とやっても、前半どんなに点差つけられても最後はヴェルディが勝つんです…」

何か昔のプロ野球オヤジが「オレが見てると巨人が負ける」「だから見ないんだよ」などと言ってた感じにも似ている。一ファンの動向がプロ野球の勝敗を左右するとは到底思えなかったが、そういうことを言う人は大勢いたものだ。じゃ、Jリーグではどうかというと、それを口にするコアサポはちょっと想像しにくい。Jリーグサポはチームの勝敗にもっと濃密に関わり続ける。言うとしたら母数が少ないライト層だろう。

が、「かりんとう」さんはプロ野球オヤジとは事情が異なる。ねじれの位置に立っているのだ。「かりんとう」さんはぜんぜんヴェルディを応援していない。勝とうが負けようがどうでもいい。それなのに見に行くとヴェルディが勝つ。困るのはアルビと対戦するときだ。実はアルビレックス新潟は史上、ただの一度も東京ヴェルディに勝ったことがない。すべての対戦を「かりんとう」さんが生で見ているのだ。しばらくカテゴリーがJ1とJ2に分かれていたが、アルビのJ2降格にともなって昨シーズンから対戦が復活してしまった。

「かりんとう」さんの存在は海江田さんにも伝えたことがある。ヴェルディ側から見たら「勝利の女神」そのものだ。昨シーズンのJ1参入プレーオフ(2018年12月2日、横浜FC戦)の劇的勝利も「かりんとう」さんは三ツ沢で生観戦していた。海江田さんは「もう、全部来てほしいです。全試合無料招待できないですかねぇ」と言っていた。全試合招待してもアルビの試合日は向こうへ行ってしまうのが難点なのだが。

で、僕は「踊るアルキバンカーダ!」の特別企画として、「かりんとう」さんの謎のジンクス検証を思いついたのだ。思えば「応援していないのに勝たせてしまう」、謎のジンクスを認めるかどうかは、サポの存在意義の根本に関わることだ。なぜならサポとは「応援して勝たせる」存在だから。平成最後のヴェルディvsアルビ戦、果たして「かりんとう」ジンクスは破られるのかどうなのか。

 

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