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「昇格請負人」小林伸二が語る監督のリアリズム【1】現場とフロントどちらをまず変えるべきか?

大分、山形、徳島、清水と過去に4クラブをJ1昇格に導いた昇格請負人・小林伸二。どんなチームも最後まで泥臭く戦い、勝負強い集団に変えてきた、まさにいぶし銀ともいうべき手腕が評価され、今年からギラヴァンツ北九州の監督兼スポーツダイレクターに就任した。
自ら退路を断って北九州の立て直しという重責を引き受けたのは、自身の仕事の集大成にしたいという思いがあった…。
Jリーグ屈指の仕事人にこれまでの監督道を振り返ってもらいながら指導論からマネジメント論、サッカー論までじっくりノンストップで語ってもらった。
ライター・ひぐらしひなつによる、15000字の濃密すぎるインタビューを3回に分けてお届けする。

 


写真提供:ギラヴァンツ北九州

 

■フロントと現場がタイアップしていかなくてはクラブの力にはならない

――J2復帰を目指す北九州の監督に就任されるとき、会社全体を見ていかなくてはということで現在の形を選ばれました。その意図は。

はい。監督兼スポーツダイレクターという肩書きをもらっています。通常、現場の環境や思いを上層部につなげる際には、間に人を介することになりますが、そこを兼務できれば、スムーズに社長とのやりとりが出来ると考えたんです。

監督のオファーを受けるにあたり、社長と話をしながら決定しました。可能性のあるチームがスタジアムを作ったにもかかわらず、上手くジャンプできていない。そういうときには多分、いろんな問題が出てきていると思うんですね。現場が変わるにあたってどうしたほうがいいのかというのを、間に人を介さずに現状を社長に伝えることが出来たほうがいいと思い立ったんです。

いままではそういう兼任はしたことがなかったんですね。してほしいと言われたことがあっても、そういうのはちょっと難しいと断ってきた。ですけど、逆に今回はそっちのほうがいいんじゃないかと。それはひとつには、人間の体は二つに出来ないにしても、会社が少し見えてきますよね。現場を中心に現場の状況を伝える視点と、逆にフロントが現場をどういうふうに見ているのかという視点。そういう意味でも今回はよかったと思っているんですよ。

――それはこの会社の現状を御覧になっての判断ですか、あるいはご自身の中の動機でしょうか。

そうですね、「今度はこういうことをする」ということではなかったです。現状が上手くいっていないので、現場だけでは多分、響きが薄いのかなと。これはクラブワークですから、フロントと現場がタイアップしていかなくてはクラブの力にはならない。多くのところで、われわれ現場は上手くいっていないわけじゃないですか。でも、フロントとしては予算をそれほど落としているわけでもない。観客数が落ちていてもJ3の中では上位。現場は一所懸命なんですけど、この現場の匂いをフロントに伝える役目を、しばらくは自分がやったほうがいいんじゃないかと感じたんですね。

 

■観客もスポンサーも増えない…。まず現場を変えるのが一番の近道だった

――アビスパ福岡でフロント(チーム統括グループ長)のお仕事をされた経験も下敷きに。

少しフロントの仕事をそこでやっていますし、現場はいろんなところに行った中で、当然どこにだって、いいところもウィークなところもある。だから、いいところを表現しながらウィークのところをどういうふうにしていくか。

たとえばここには立派なスタジアムがあるじゃないですか。でも捉えようによっては、あのスタジアムがあまり立派すぎてというふうにもなりますよね。市長選の前になれば、そういうことまで市長は言われます。われわれにとってはすごくいい、立派なスタジアムだから、それを上手く使って興行としてパフォーマンスを上げ、人を集めることも出来る。サッカー専用ですから、少しでもいいプレーをすれば、トラックのあるスタジアムよりも身近であふれる臨場感を感じさせることが出来ます。もう、それだけで違う。このスタジアムはクラブのものではないですけど、ホームゲームではそこを使えるという利点がありますよね。そこで現場がどうなのかが会社にどう伝わっているかは、実はすごく大事なことで。

一方で、この地域にどういうチームが根付くとかいうヴィジョンが、あまり見えてこない。こういう地域でどういう色のあるクラブにしていくかというのは、少しずつ考えられたと思うんですよ。北九州という地域の風土に合わせるのは一体何だ、というものを、クラブは少しずつ見出そうとしたわけですよね。

でも、僕はそういうことじゃないと思っていて。スポーツはやはり感動を与えるということですよね。サッカーを知らない人にも来てもらおうと思ったときに、やはり有効なのはインパクトなんです。サッカーを知らなくても「一所懸命よく走るなあ」とか「危ないんだけど壊れないのかな」とか、僕はそういうものだと思うんですよ。そういうところがスポーツの原点で、人に感動を与える。われわれはサッカーをやってるんだけど感動を与えられているのかなと思ったときに、この地域も当然そうですけど、強くなろうと思ったら最後まで諦めないとか、闘い続けるとか、最後まで走るとか。言葉で言えばそうですよね。それを実際に支えるのは選手なので、体力がない選手は出来ないんですよ。そうやって少しずつシンプルにしていけば、それなりの形にはなるじゃないですか。

結果が出ないときに、弱いチームだと、やっぱり負ける。最後まで闘わないとか、走れないとか、最後でロスタイムにやられるとか。チームとクラブって、似てるんですよね。

クラブの考え方に対してグラウンドがどうで、そのグラウンドでわれわれがどういうトレーニングをしなくちゃならないかにつながっていく。そういうものを聞きつつ、であれば、現場とフロントをつなぐ考えの人を探してくるよりも、自分が兼務して現場の思いをストレートに会社に伝えて、近い存在にしたほうがいいと。それにここは、クラブの事務所と練習場が、少し離れてるんですよね。

もうひとつは、アカデミーをトップチームにつなげるために、試合や練習に呼ぶといったことを積極的にしているんですね。今日も指導者が練習に来てくれました。強制じゃないんだけど、時間があるときにはそうやって来てくれて、選手も指導者も、やっとつながりつつあるんです。

でもそれは、自分が監督としてOKしないかぎりは無理じゃないですか。あるいは監督はやりたいんだけど強化部長はやらせたくないとかいうことも起こり得る。そこが一人だったらスムーズです。そういう部分は、いまのところ上手くいっていると感じています。

 

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