監督・永井秀樹は稀代のロマンチストかリアリスティックな戦術家か(海江田哲朗)
『タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。
永井秀樹監督の本領はこれから発揮されるか。
監督・永井秀樹は稀代のロマンチストかリアリスティックな戦術家か(海江田哲朗)[えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]十五段目
こうも見事な大風呂敷を広げる監督は久しぶりだ。
今夏、東京ヴェルディの指揮官に就任した永井秀樹監督。徹底的にボールを握り倒し、目安となるポゼッション率は80%。シュートを18本以上打って、5‐1での勝利(失点はセットプレーやミドルシュートからゴールを許すこともあるだろうとの想定)。東京Vのサッカーとは何か、そのスタイルをつくり上げる。などなど、威勢のいい言葉が次々に出てくる。
大抵、あとで付け込まれないように予防線を張るものだが、そんな逃げ道の用意はなし。せせこましい話に辟易することもあった身としては、いっそ清々しいくらいだ。銀行の金利だとか投資信託の元本保証だとか、間違いのなさ、確実性の見込まれる話が聞きたかったらどこか別の世界に出入りしている。
もっとも、大風呂敷――は、実現不可能の意味だから言葉として適当ではない。ひょうひょうと振る舞う永井監督は、できると思ったことを口にしているにすぎないのだろう。
これまでいやと言うほど現実を見せられ、苦渋で煮しめられたサポーターの一部には冷ややかな反応も見られる。ここ2シーズンはJ1参入プレーオフに進出し、昨年は大願成就にあと一歩のところまで迫ったのだからなおさらだ。ヒリヒリした緊張感、勝者と敗者を分かつ歴然とした差、最終局面でしか味わえないサッカーのコクを知ってしまった。
稀代のロマンチストか。いや、そうとも言い切れまい。永井監督と同い年で、付き合いの長い藤吉信次コーチはこう語っている。
「選手としてキャリアをどう積んでいくのかという部分は、自分と永井では考え方が分かれました。昔は移籍がいまほど活発ではなく、出場機会を求めてほかのチームにいくのは負けというか、どうしても都落ちのイメージがあったんですね。ところが、永井はそんな周りの目を気にせず、下のカテゴリーだろうと必要とされる場所、評価してくれるチームに出向いていった」
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