J論プレミアム

茂庭照幸、JFLマルヤス岡崎で奮闘中。「黄金世代には負けられねえ」で戦い続ける【アテネ世代の今】

79年生まれを中心とした「黄金世代」に対し、81年生まれを中心としたアテネ世代は「谷間の世代」とも呼ばれていた。
その「アテネ世代」だが、現役を続ける選手はもちろん、サッカーとは違う場所でセカンドキャリアをスタートさせたりなど多士済々。
そんなアテネ世代に詳しいライター・元川悦子が複数回に渡り「アテネ世代の今」についてをJ論プレミアムにてお届けする。

 

▼JFLにアジャストするために試行錯誤

1カ月の夏場の中断期間を経て、8月25日の第18節から再開されている2019年日本フットボールリーグ(JFL)。FCマルヤス岡崎はリスタート初戦となったヴィアティン三重戦を1-0で勝利したものの、続く東京武蔵野シティFC戦とホンダロックSC戦で2戦未勝利。10月1日時点で11位と苦しい戦いを余儀なくされている

リーグ再開後から継続的にキャプテンマークを巻いている元日本代表DF茂庭照幸は「ウチの選手はみんなひたむきだし、練習環境や労働環境含めて恵まれているところも多少はある。JFL最強のHONDA FCに代わるチームになれるだけのポテンシャルはあると思うんですけどね…」と思うようにならない現実に苛立ちをのぞかせる。

それでも「自分もベテランなんで、指導者目線でチームメートに伝えることは意識していますよ。伝え方1つで選手のプレーが変わる。自分の感覚とか感情ばかりを押し付けず、聞く耳を持って若い選手に接しているつもりです」と自身の立ち位置を考えつつ、チームの底上げに尽力している。

ベルマーレ平塚(現湘南)、FC東京、セレッソ大阪でJリーグ通算377試合に出場し、日本代表としても2006年ドイツワールドカップに参戦した茂庭が、今季から4部リーグに相当するJFLに身を投じたことは、傍目から見ると意外な決断に映った。けれども本人は「割と早い段階で話をもらって、それほど迷わずに決めた」とキッパリ言う。
「愛知県は嫁さんの地元で、FC東京に在籍していた頃からよく来ていたんで、土地勘はあったんです。クラブのいろんな人が誘ってくれましたけど、監督の北村隆二さんは高校生の時の国体選考会で一緒に紅白戦をやった間柄。1つ年上で『物凄くうまい選手がいる』と思っていた先輩でした。親近感のある方から評価してもらえて、1人のプロ選手として扱ってもらえるのなら、カテゴリーは別に気にならなかった。J1も300試合出ましたし、『サッカーを追求できる環境がほしい』という思いでここに来たんです」と茂庭は今のチームを選んだ理由を明かす。

しかしながら、昨季まで過ごしたJ1とJFLのサッカーの質は全く異なるものだった。「みんなガチャガチャしてるし、ガチャガチャできる選手が試合で活躍できる」というのが、最初に彼が抱いた印象だった。
「マルヤスに来て分かったのは、Jで普通だった守備の対応とは違うプレーをする選手が多いこと。1対1にしても、僕はギリギリまで駆け引きしてリスクが一番低いことを選んできましたけど、JFLでやってる選手は『これは一番危ないだろう』と思うようなリスクの高い対応を真っ先に選択する。スライディングタックルなんかも普通は行けないのに、ここでは平気で行く。自分の意識を変えて、そういうことに慣れようと思ってもなかなか体がついていかない。そこには苦労しましたね」と茂庭は神妙な面持ちで言う。

サッカーのギャップに戸惑ったうえ、シーズン前半は長期離脱が続く。4月にハムストリングを負傷し、3~4週間後に復帰するや否や今度は太もも前の筋膜炎に見舞われた。6月もリハビリに費やし、7月になってようやく復帰。コンディションが上がりつつあったところで中断期間に入ってしまった。

夏場はミニ国体などに参加してパフォーマンス向上に努めていたが、環境的にはとにかく厳しかった。マルヤスの練習場所は岡崎市の阿知和グランド、豊田市の柳川瀬公園、豊田スタジアムサブグラウンドなどを転々とする日々。筆者が訪れた日は豊田サブでの午前練習だったが、ギラつく太陽を避ける場所もなければ、シャワーもなく、選手たちは当然のごとく外で着替えざるを得ない。2000年からプロキャリアを過ごしてきた茂庭にとっては、まるで平塚ユース時代に戻ったような心境だったのではないだろうか。

加えて言うと、社員選手とプロ契約選手が共存しているマルヤスは、基本的にトレーニング時間は夜。毎週木曜日だけ午前練習がある。そのケースだと、選手たちは水曜深夜23時頃に帰宅し、翌朝に家を出て朝9時から再びピッチに立つことになる。取材日がたまたまそういう流れだったため、茂庭は「ホントにキツイっすよ」と苦笑していた。

 

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