J論プレミアム

日本一のラジオサッカー応援番組が終了してしまった(えのきどいちろう)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 


左から角野達弘アナ、坐間妙子アナ、大平まさひこさん

 

日本一のラジオサッカー応援番組が終了してしまった(えのきどいちろう)[えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]二十四段目

 

▼radikoで出会った日本一のラジオサッカー応援番組

2019年の年末はショックなことがあった。当連載の僕の担当コラム第1回で取り上げたツエーゲン金沢応援番組『達弘・まさひこのアディショナルタイム』(MRO北陸放送)が終わってしまったのだ。最終回放送の12月28日は予定を入れず、午後12時10分からの放送をオンタイム(radikoなので微妙に遅れるが)で聴いた。聴き終えて、寂しくて凹んでいる。残念だなぁ。かねて主張してきたけれど、この番組こそ「サッカー応援番組」日本一だったのに。

ツエーゲンのファン、サポーターでもない僕が同番組に肩入れすることになったのには、radikoか関係している。2016年秋、radikoがタイムフリー機能を始めて、世界がガラッと変わったのだ。radikoプレミアムのエリアフリー機能と併せると、つまり、日本じゅうのどの番組も(1週間前までの範囲なら)基本的に聴くことができる。

僕はさっそくスポーツ中継をチェックしてみた。ちょうど始まったパ・リーグCSファイナル中継では、HBC北海道放送(日ハム側)では大谷翔平が165キロを出して牛耳った目線、RKB毎日放送(ソフトバンク側)では165キロを出されて牛耳られた目線を両方知ることができた。従来は(エリアフリー機能があっても同時に2つの放送は聴けないから)不可能だったことだ。試合が2つのサイドから楽しめる。

サッカーではどうだろうと思ったら、J2J3入れ替え戦プレーオフ、金沢vs栃木戦(第2戦)の中継がMRO北陸放送とCRT栃木放送の両方で組まれていた。ラジオ中継だから、まやかしの「公平・中立」でなく、応援実況だ。これを両方聴いて、すごく面白かったのだ。中美慶哉(金沢)がPKを決めた後、もちろんMRO北陸放送の実況は声を弾ませ、CRT栃木放送は「よりにもよって…」と元気なくなる。中美選手は栃木県宇都宮市出身、キャリアのスタートは栃木SCなのだった。あぁ、何か映像では伝わらない生の感情のようなものが伝わるなぁ、radiko最高だなぁと思った。

その入れ替え戦を聴くに当たって発見したのが『達弘・まさひこのアディショナルタイム』だった。おお、ツエーゲンの応援番組がある、事前に聴いておこう。達者な2人のパーソナリティーの掛け合いで進行する番組だった。MROのアナウンサー角野達弘さんとタレントの大平まさひこさん。フリートークがすごく上手いんだ。僕は自分自身、ラジオパーソナリティーの経験があるから、スタジオの空気は大体想像がつく。この人たちは「ざっくりダンドリを打ち合わせただけで、しゃべりは剣道の道場みたいにその場で合わせてる」と思った。

その後、radikoのエリアフリー&タイムフリーを駆使して、全国のありとあらゆるサッカー番組を聴いたんだけど、僕は『達弘・まさひこのアディショナルタイム』が断然好きだった。で、2018年民放連のシンポジウムでコーディネーターを務めたときに(全国のラジオ局の社長、編成部長がオーディエンスという席で)この番組を絶賛したのだ。そうしたら、(よく考えたらそりゃ道理なのだが)MRO北陸放送の人が飛んできて名刺交換をすることになり、年末の同番組特番に出演することになった。

以上が当コラムの第1回に記した概略だ。ツエーゲン金沢は今年、3年目の柳下正明監督の下、充実したシーズンを過ごした。ハードワークする好チームが仕上がった。僕が毎節、原稿を書いているアルビレックス新潟なんてホーム&アウェー、天皇杯も込みで3敗、いわゆる「トリプル」を食らったくらいだ。チームの充実は『達弘・まさひこのアディショナルタイム』にも反映され、今年の放送は実にいい感じだった。

 

▼終了の理由は「地方局あるある」

が、番組終了なのだ。11月下旬だったか、番組スタッフから連絡を受けて呆然とした。終了の理由がなかなかつらいものだった。

 

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