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Jリーグ開幕で気になるスポーツのタコツボ化(えのきどいちろう)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 

Jリーグ開幕で気になるスポーツのタコツボ化(えのきどいちろう)[えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]五十二段目

 

■地上波でJリーグが放送されなくなってきた

2021年シーズンのJリーグが始まった。僕は開幕週(正確には2月23日の祝日)、文化放送の朝ワイド(「くにまるジャパン極」9AM~1PM)の代打パーソナリティーを務めて、コメンテーターの二宮寿朗さんとめっちゃフライデーナイトマッチ「川崎‐横浜FM」を盛り立てたんだけど、その3日後、いざJリーグ開幕となってハッとした。

記念すべきオープニングマッチ「川崎‐横浜FM」はDAZNでしか見られない。いや、それが現実なのだった。僕と二宮さんはゼロックス杯でも再確認された川崎フロンターレのすごさ&輝かしさを言いつのり、「今季のJ1の見どころはフロンターレ包囲網だ」くらいの言い草だった。それが地上波で見られない。僕の感覚で言うと、AMラジオの朝ワイドリスナーはそこそこスポーツ好きでもNHK‐BS1どまりだ。DAZN加入者は少数派だと思う。

つまり、二宮寿朗さんとあれだけあおりにあおった「川崎‐横浜FM」はリスナーの大半にとって無いも同然だったのだ。まぁ、期待するにしても「Jリーグタイム」で見てくれる人がいるかもしれない程度。平均的なサッカー好きは27日、地上波(NHK総合)で放送された「浦和‐FC東京」を見たのだと思う。

これは大上段に振りかぶれば「ユニバーサルアクセス権」の問題だ。天下万民が公共財としてのスポーツを享受する権利。まぁ、「ユニバーサルアクセス権」は主にオリンピックやワールドカップのような大イベントのとき問題とされる。例えば2002年日韓ワールドカップのとき、スカパーが放送権を取得した際、「そういうのはいいのか?」的なニュアンスで話題になった。(半分)自国開催のワールドカップだ。国民的イベントだ。それを衛星波のペイチャンネルが買ってしまった。見られない人が大勢出るんではないか…。

まぁ、実際には、独占放映権を持つスカパーからNHKや民放がサブライセンスを買う形でほとんどの試合は(スカパー以外でも)放送された。日本代表戦やベッカムのイングランド戦等、目玉試合は当然、地上波でやった。

僕は当時、スカパーでサッカー番組MCをやっていたからよく覚えているのだが、テレビは今より盛んにサッカーを放送していた。Jリーグ生中継ならNHKとTBSが毎節1試合やっていたし、フジもたまにやってくれた。CSのJスポーツに加入していればJ1全試合の録画中継が見られた。サッカー情報番組は「やべっちFC」と「スーパーサッカー」の全盛だ。懐かしいなぁ、テレ朝・前田有紀アナと白石美帆さんの競演だ。

その「やべっちFC」が終わり、「スパサカ」ももうすぐ終わろうとしている。DAZNで「やべっちスタジアム」が新装開店したが(それ自体は嬉しいけれど)、それは冒頭のAMラジオリスナーの話の繰り返しである。DAZNの番組はDAZN契約者にしか届かない。世間一般の尺度からすると無いも同然だ。

Jリーグは面白いのに、Jリーグの存在感は希薄になっている。Jリーグは前より小さくなっている。

 

■DAZN以前を忘れてきてしまっている

僕はDAZNの機微を語りたい。といって大げさにケシカランなどと騒ぎたいわけじゃない。DAZNがJリーグにもたらしてくれた恩恵は十分わかっているつもりだ。今、DAZNとJリーグが二人三脚になって令和のスポーツビジネスを切り拓いているのもわかる。

そうだ、知人のNBAファンの嘆きを補助線にするとわかりやすいんじゃないか。「超」のつくNBA好きの編集者が身近にいる。僕はバスケはほとんど見ないので、話を聞いて生返事してるだけだが、彼の嘆きは深いのだ。彼は「日本にはNBAの存在感がゼロだ」という。八村塁、渡邊雄太が出現し、爆発的なブームになってもおかしくないのに、日本では誰もNBAを見ていないという。いや、正確には「NBA Rakuten」の独占配信だから、そこに加入しているファン、マニアだけが見ている。

知人に言わせると今のNBAはスポーツの進化系の究極だそうだ。八村ら日本人プレーヤーの活躍も見逃せないが、大概のスポーツで起きている「金満ビッグクラブが勝つ」現象の次が見られるんだそうだ。

 

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