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J論プレミアム

Jサポのための「ポジショナル・プレー」解体新書。川崎、浦和、横浜FM、鳥栖の進化は必然である

 

いきなり浦和のサッカーが劇的に変わったり、ただでさえ強い川崎の戦闘力がマシマシになったり、横浜FMのハイプレスがどんどん鋭利になったり、経営危機に揺れた鳥栖が大躍進したり…それもこれも「ポジショナル・プレー」の効能によるところが大きく、今季は多くのJクラブがその概念を採用するようになっています。もはや標準装備。
で、どんどんポジショナル・プレーって何? と聞きづらい状況になると予想されるなか、戦術ライティングの第一人者である西部謙司さんに図解をふんだんに用いてわかりやすく解説してもらいました。
さらに、さきほど挙げたクラブのほかに札幌、神戸、徳島、大分などを含むポジショナル・プレーを採用するクラブのそれぞれの進化や違いもチェックしてもらいました。
ポジショナル・プレーをやらなくても恥ではないが役には立つ、ということで全Jサポに捧ぐ解説、ぜひ最後までご一読ください!

文◎西部謙司

 

■チームのプレーが前と変わったと感じたら…「ポジショナル・プレー」始めましたのサイン?

最近、ときどき耳にするようになった「ポジショナル・プレー」とは一体何なのか。この言葉を聞いた覚えがないとしても、ウチのチームが今までとは何か少しプレーが変わってきたぞと思い当たるサポーターも少なくないことでしょう。

ポジショナル・プレーという言葉は、もともとチェスからきているようです。どうプレーするかという考え方を表していて、いわゆる概念です。どういう概念かというのは、サッカーを見るのにべつに必要ではありません。なので、これを採り入れているチームは何のために、実際どういうふうにしているのか。そこに焦点を絞って進めたいと思います。

まず、サッカーの試合の優劣を決めるのはつまるところ「精度」と「強度」です。技術やポジショニングの正確さ、タイミングも含めて精度は必要ですよね。「強度」のほうは、一時期さかんにいわれていたインテンシティです。守備のときに寄せていく速さ、球際の強さ、攻撃でも切り替え時のスプリントや運動量などが強度に関係してきます。

例えば、中学生と大学生が試合をするとします。中学生にも大学生を上回るテクニックのある子はいるかもしれません。ただ、強度の面で圧倒されてしまうので大学生が優位な試合になるでしょう。しかし、その大学生も日本代表と試合をしたら、今度は代表の精度を抑えられる強度は明らかに不足していて、代表の強度をかわせる精度もなく、やはり圧倒されてしまうでしょう。中学生が相手ならマンチェスター・シティみたいにプレーできる大学生でも、日本代表には何もできない。日本代表もシティにはおそらく歯が立たないと思います。

つまり、戦術やポジショナル・プレーが良くても、それだけで試合には勝てないということです。ポイントは精度と強度です。2つとも負けていたらまず勝てません。

 

■で、何のために「ポジショナル・プレー」なのか?

ではポジショナル・プレーは何のためにあるのかというと、まさにこの精度と強度を補強してくれる仕組みなわけです。ゲームを優位に進める(精度&強度)ために、適切なポジションをとることがポジショナル・プレーです。

じゃあ、その「適切なポジション」って何よ? という話になるわけですが、それは申し訳ないけど簡単には説明できません。ただ、そのための目安があって、それがよく聞く「5レーン」というやつです。フィールドを縦に5分割した5レーン。

なぜ5レーンなのか。ざっくりいえばフィールドプレーヤーの数が10人だからです。まず5人いれば5レーン全部埋まり、さらに5人が5レーンを埋めれば二層できます。しかし、実際には5-5というフォーメーションはほぼありません。先にいってしまうと、ポジショナル・プレーの原則として「隣同士のレーンは同じ高さにならない」があるからです。

配置としては4-3-3、3-4-3あたりが、初期配置の時点で5レーンが埋まっていて、隣同士が並行になっていないわかりやすいフォーメーションといえます。ただ、これも初期配置の話で、後述しますが初期配置は実はけっこうどうでもいいです。とりあえず、こんな感じでバランスよく配置するのねと思っていただければオーケー。

 

 

 

 

ポジショナル・プレーの効果は、攻撃面ではパスコースを作りやすいこと、守備面では早く真っ直ぐにプレスできることです。

パスコースを作りやすいのは何となくわかると思うのですが、「早く真っ直ぐにプレス」がどういうことかといいますと、守備は自分の前に置いた相手に寄せていくときに最も強くプレッシャーを与えることができるからです。

横から、あるいは後ろからでは、ボールホルダーの2メートル以内に到達するまでは実質フリーです。ボールホルダーの前方が開いていますからプレーに制限がかかりません。一方、正面からならば少なくともパスコースは1つ塞いでいます。そこ以外のコースにパスするしかないので、味方が次のプレーを予測しやすくなるわけです。

5レーンを埋める意味がこれで明快でしょう。守備者が誰もいないレーンで相手がボールを持っているなら、隣のレーンから寄せていくしかありません。そうするとプレスの強度は確実に弱くなってしまいます。5レーンが埋まっていることで、ボールがどこへ行っても常に真っ直ぐ(斜めでもいいです)のプレスを早いタイミングで行えるということです。

逆に攻撃では、いかに相手のいないレーンを作り、使うかということがポイントになるわけですね。相手がプレスしにくい、あるいは弱いプレスになる状態を作る。そのためにレーンの移動や交換をします。初期配置はけっこうどうでもいいと書いたのはこのためです。初期配置どおりでなくなることがけっこうあるからです。

ジョゼップ・グアルディオラ監督はバイエルン・ミュンヘンを指揮していたとき、練習グラウンドに縦線を引いて5レーンを意識させていたそうです。来季バイエルンの監督になるユリアン・ナーゲルスマンは「7レーン」だそうです。

5レーンといっても、ずっと幅が同じではなくて、状況によってボールサイドにレーンが寄っていって、逆サイドのレーン幅が広くなると都合よく考えてください。ナーゲルスマン監督の7レーンというのは、5レーンの伸び縮みではなく予めもう少し区切ってしまおう、視覚的にもはっきりさせようということなのでしょう。ただ、埋められないレーンがあるのはポジショナル・プレー的には「不都合な真実」なので、7レーンというのはどうなんだろうと個人的には思いますが。

 

■川崎、横浜FM、浦和、鳥栖、徳島、大分、神戸、札幌…それぞれのポジショナル・プレー診断。十人十色の実践スタイル

ポジショナル・プレーを最も上手く活用しているチームが川崎フロンターレでしょう。というか、「精度」と「強度」が図抜けています。だから強いわけで。

昨季から初期配置を4-3-3にしています。ポジショナル・プレー的に相性がいいフォーメーションにしたのも成功の要因でしょう。川崎の強さの基盤として「止める蹴る」の精度が高いことがあげられます。ポジショナル・プレーがさらにそれを際立たせていて、強度にもつながっている。

象徴的なのがサイドのトライアングルでしょう。

川崎のトライアングって、小さいんですよ。距離が近いほうが当然精度は上がりますし、パスワークのテンポも速くなります。逆にそれがないと狭いトライアングルでプレーできません。例えば、初期配置どおりなら右のトライアングルはこんな感じです。

 

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