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【森雅史の視点】2021年6月26日 J2リーグ第20節 東京ヴェルディvs栃木SC

J2リーグ第20節 東京ヴェルディ 2(0ー1)1 栃木SC
18:03キックオフ 味の素スタジアム 入場者数4,740人
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東京ヴェルディが逆転勝利を収めた1戦は、両チームの監督采配が楽しめる熱戦だった。

前半は栃木SCのペース。立ち上がりから素早いプレスで東京Vを押し込むと同時に、両サイドの守りをしっかり固めて反撃を許さない。その流れのまま16分に畑潤基が素晴らしいミドルシュートを決めて先制すると、今度は後方でブロックを敷き入り込むスペースを与えなかった。

ところが後半、永井秀樹監督は両サイドの小池純輝と山下諒也を入れ替え、栃木の右サイドの攻略を始めた。特に山下がワイドに開き、山口竜弥がその内側を使い始め、栃木の守備のスライドを混乱させる。すると前半崩れそうになかった栃木は左右に穴ができはじめ、右サイドの小池のクロスを山下で同点ゴール、左サイドに開いた山下から内側に走った山口に出したパスから逆転のオウンゴールが生まれた。

永井監督の妙は、前半うまくいっていなかったにも拘わらずハーフタイムまで修正しなかったことだった。もし前半のうちにポジションを変えていれば栃木は後半から対応できただろう。しかしそこを我慢したことで、栃木が混乱している5分間に東京Vは逆転した。

もっとも、栃木の田坂和昭監督も東京Vがどう動いてくるかハーフタイムに読み切っていた。田坂監督は「後半は(東京Vが)斜めのボールを入れてくるし、サイドバックの裏に走ってくる」と伝えたと明かす。だが「自分たちのほうがパワーダウンしてしまった」とインテンシティの高いプレーを続けるチームならではの弱点が出た形になった。

それでも栃木が随所に見せたセットプレーはどれも練り込まれ、意外性に溢れていた。この日はゴールに結びつかなかったが、一発のあるチームが最後まで粘って1点差という試合は最後まで手に汗握る展開として、いいエンタテインメントだったと言えるだろう。

 

 

森雅史(もり・まさふみ)
佐賀県有田町生まれ、久留米大学附設高校、上智大学出身。多くのサッカー誌編集に関わり、2009年本格的に独立。日本代表の取材で海外に毎年飛んでおり、2011年にはフリーランスのジャーナリストとしては1人だけ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本戦取材を許された。Jリーグ公認の登録フリーランス記者、日本蹴球合同会社代表。2019年11月より有料WEBマガジン「森マガ」をスタート

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