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【六川亨の視点】2021年7月3日 J2リーグ第21節 大宮アルディージャvsモンテディオ山形

J2リーグ第21節 大宮アルディージャ1(1-2)3モンテディオ山形
19:03キックオフ NACK5スタジアム大宮 入場者数4,374人
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日本サッカー協会の技術委員長を務めた霜田正浩氏が大宮の監督に就任したのは6月7日のことだった。2試合続けて引き分けだったが、6月27日のアウェー山口戦で14試合ぶりの勝利をあげた。

山口の監督時代から練習は面白いと定評があったので、6月30日の練習を取材した。紅白戦ではサイドに展開して攻撃するが、そのほとんどがアーリークロスで終わる。サイドに展開してもドリブルで仕掛けず、バックパスで攻撃を組み立て直すチームが多いなか、これはこれで徹底してチームの約束事にすれば面白いと思った。

シュートは打たないと点にならない。同じようにクロスを入れればOGの可能性だってある。山口時代もパスをつなぐサッカーにこだわったが、それは大宮でも同じだ。紅白戦ではしばしば試合を止めて、その都度、選手に細かい指示を出す。いわゆる「ストップ・ゲーム」で、その場で問題点を指摘して修正していた。

そして迎えた7月3日の山形戦、相手も今シーズン中に監督交代があったが、元清水監督のピーター・クラモフスキー氏は4月30日に就任したため、監督としては霜田氏より1ヶ月早い。そして直近の7試合を6勝1分けで順位を上げている好チームだ。

試合はホームの大宮がイバのゴールで先制したものの、山形は今シーズン加入したMF中原輝の3点に絡む活躍などから3-1の逆転勝利を収めた。

率直なところ、大宮もパスをつなぎながら、サイドチェンジの際はサイドバックが攻撃参加するなど練習で見せた攻撃パターンを披露。まだ考えながらプレーしているシーンもあるが、やろうとするサッカーがだいぶ整理されてきた印象を受けた。

しかし、その習熟度が山形の方が一枚上手だった。ここらあたり、チームを指揮して1ヶ月と2ヶ月の違いかもしれない。加えて山形はフィジカルの強さも印象に残った。

霜田監督自身も「山形さんとは目指すフットボールが非常に似ていて、彼らは少し僕らの先を行っているなというのが実感です」とチームの完成度の違いを口にした。

まだまだ降格圏内の21位だが、大宮番の記者によると、「練習中に選手から声が出るようになりました。雰囲気もいいですよ」とのこと。チームに一体感が生まれつつあることも好材料と言っていいだろう。

 

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。

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