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「ジャッジリプレイ」の知られざる苦悩……深野悦子が女子レフェリー時代から貫く信念【サッカー、ときどきごはん】

 

日本を代表する国際審判として活躍し、現在は審判インストラクターを務める深野悦子。女子審判として貫いてきた志はいま後進の育成という形で徐々に花開こうとしている。いまの彼女の目に映るレフェリーの世界と思い描く未来について語ってもらった。

 

■「ジャッジリプレイ」への出演は苦行

私は「Jリーグ ジャッジリプレイ」(毎週火曜午前中にDAZN、金曜日YouTubeで配信中)という番組に「FIFA・AFC・JFA審判インストラクター」としてときどき出演しています。Jリーグの試合のジャッジをみんなで討論する番組ですね。

4人の出演者がいて、そのうち審判関係者は1人だけなんですけど、ただ今はもはやアナウンサーの桑原学さんが解説できるぐらいのレベルにまでなっていらっしゃるんで、私はもういらないんじゃないかと思ってます。

私が出演して、評価してくださる方もいらっしゃるんですけど、物事って「賛」もあれば「否」もあるので絶対誰か叩きますよね。私、そういうのに慣れてないんで、言われるところに出たくないっていうのが本音です。「いい人」でいたいんで(笑)。

だってJリーグで笛を吹いたことはないのに、その私が何を言うかってことですよね。Jリーグを担当する審判員がどういう気持ちで吹いているのかというのは、多分本当のことは分らないと思うんです。

判定に対して、審判員とか審判委員会が考える答え、ファン・サポーターのみなさんが思う考え、クラブや選手が思う内容、そのどれにも当てはまるような「いいとこ取り」をしたらいいんでしょうけど、そんなこと出来るはずがないんです。そうすると絶対誰かに嫌われる。そういう損な役回りですよ。

だいたいあの番組って、難しい判定に限って取り上げるんですよ。サッカーの「回答」って白黒つけられることばっかりだったら楽なんですけど、グレーゾーンの幅がすごく広くて、グレー寄りの黒なのかグレー寄りの白なのかというのがあるんですよね。

レッドカード寄りのイエローカードなのか、イエローカードだけどノーカード寄りもあって、そこを分かっていただくのが難しいですね。みなさん、白黒はっきりしたいでしょうから。

だからあの番組は辛いです。苦行なんです。でも私、Jリーグの職員なんで、出なければいけない事情もありまして。

しかもルールっていろいろ変わっていきますからね。今年もここ数年で加えられたいろんな言葉が削られたじゃないですか。なんか、建て増しした旅館で非常口が分からなくなったから、もう一度きれいに建て替えようって変更になった感じがします。

今回のルール改正で主審の判断が広がったかもしれませんし、この主審だったらこの場面では吹くだろうというのは今でもあっていいと思うんですよ。そういう主審の「くせ」というか、グレーゾーンを右と判断するのか左に取るのか、あるいはコミュニケーションが取りやすい人なのかどうか、私はチームが事前に調べることがあってもいいと思います。

「ジャッジリプレイ」でも「どっちにも取れますけど、主審の判断ですから」って終われるのが一番楽ですしベストだと思います。まぁそういうと「審判贔屓」といわれちゃうんで難しいんですけど。

 

■男子の1級審判が女子の試合を吹いてもうまくいくとは限らない

現在、審判は4級、3級、2級まで男女一緒です。でもその先がフィットネスなどの違いで「女子1級」と「1級」に分かれます。

「女子1級」を取得した審判は「1級」が求められる試合の笛は原則吹けないんですけど、やっぱり女子だと男子の基準で求められるフィットネスは難しいし、身体的なことなのでライセンスが分かれているのは正しいと思います。

ですがJリーグ初の女性主審になった山下良美さんのように、女子でも「1級」を目ざそうという人が出てきたんです。でもそれも、2004年に女性で初めて1級審判員の資格を取得した大岩真由美さん、2009年に取った山岸佐知子さん、2011年に1級審判員になってJリーグの第4審も務めた梶山芙紗子さんという先輩たちの積み重ねてきた歴史があってのことです。

 

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