寺田紳一はなぜシーズン中に「自分勝手」な引退をしたのか……チームに迷惑をかけてもつけなかった嘘【サッカー、ときどきごはん】
シーズン途中に突然引退を表明して周囲を驚かせた寺田紳一。インタビュー中、節々で「申し訳ない」という言葉を発する彼が、チームに迷惑をかけてでも引退を決意した理由は何だったのか? 新たな道を歩み出した今、現役時代には見えていなかったものが見え始めている。山あり谷ありのキャリアを振り返ってもらった。
■このままだとサッカーが嫌いになりそうだった
まだシーズンの途中だった8月19日に引退したんですけど……今年始まる時点で、今年1年やりきって引退しようというのは最初から決めてたんです。正直、身体のこともあって。古傷の左ヒザが痛かったし、ケガが多かったり治りも遅かったりで。だから今年1年やなというのは、最初の時点であったんです。
ヒザは2011年の横浜FCのときですね。左膝骨折と内側靭帯と後十字靭帯を一気に持っていかれるケガして。やっぱりヒザは選手生命に関わってきますね。そんな言うても36歳までできましたけど、あれがまだちょっと痛くて。
そのヒザもそうなんですけど、それとは別に引退しようと思ったきっかけがあって。僕って6歳からずっとサッカーが楽しくてやってきたんですよ。サッカー楽しくてここまでずっと続けてきたんですよね。
そうしてる中でプロになることができて、楽しむだけじゃできないサッカーになってきたんです。やっぱり仕事ですし、責任を伴うサッカーになってきたんですけど、でもそんな中でもやっぱり一番の軸に「サッカーを楽しむ」っていうのをずっと置いてやってきて。
今年もそうやってプレーしてたんですけど、7月7日に天皇杯3回戦のヴェルスパ大分戦が大分であって、75分から出たんですけど、初めてサッカーの試合をして終わった後に、楽しいっていう気持ちが、初めて……。
日々の練習とかも、体がきつかったりケガが痛かったりとか……それに今年からは午後に普通の仕事もやり始めたのでケアもする時間も正直なくて、なかなかきつい中で、ちょっと練習行くのもつらいなっていうのは日々続いてて。
でも試合に出たら「やっぱり楽しいな、サッカー」っていうのがあったんで、ずっと続けてたんです。けど、そのヴェルスパ大分戦のあと、楽しいって気持ちが初めて感じられなくて。その試合負けてしまったんですけど、横でチームメイトたちがすごい悔しがってる姿を見ても、僕はなんかそういう気持ちすら湧き上がってこなかったというか。
その前の天皇杯2回戦ではサンフレッチェ広島を破ってたんでチームメイトも張りきってて。次勝ったらジュビロ磐田とやれる可能性があるぞって。すごいみんな頑張って、でも負けて悔しそうで。でも横で僕は試合負けてるのに悔しいとか、サッカー楽しいという気持ちはいつもあったのに、そういう感情もなくて。
チームにこんな選手がいたらアカンし、しかも僕なんか上の立場で、みんなの手本にならなあかんのに。そういった選手が残り半年間おるのもどうなんやろうとか。気持ちそこでほんまにもうバーンと切れて、だから「オレ、これでサッカー辞めよう」って思ってしまって。
その日はナイトゲームだったんで大分で泊まりやったんですよ。その日一晩自分の中で考えてみて、明日もし気持ちが変わってなければもう引退しようって。で、やっぱり変わらなかったんです。だからシーズン途中やけど引退しようっていうのを決めましたね。
クラブからは、それでもチームのためになるから残ってくれと言われたんです。自分としても1年やるという契約でやってるのに、シーズンの途中で引退してチームを離れるっていうのは、みんなには迷惑かけて本当に申し訳ないという気持ちもありました。
ありましたけど、このまま自分の気持ちに嘘ついて残り半年、毎日サッカーの練習行くってなったらなんかサッカー嫌いになりそうだなと思って。それが一番の理由ですね。自分勝手な理由なんですけど、それで引退したんです。
辞めても他の仕事があったわけじゃなかったから、プレーせんと収入ないから困るっていう気持ちもあったんですけど、それよりもサッカーに対して嘘をつけないというか。やっぱりサッカーにはね。そうですね、嘘つけなかったです。
だから今、思いっきりニート、無職です。自分勝手に引退してチームに迷惑かけて辞めんなよって言われそうやと思って、ビビリながら今、しゃべってますけど。
■「チン(寺田)、申し訳ないが…」ガンバ移籍を決意した松波監督からの評価
最初は2004年にガンバ大阪のトップチームに上げてもらったんですけど、毎日がついていくのに必死でしたね。周りも本当すごい選手たちで、ほぼ日本代表でしたからね。遠藤保仁さん、明神智和さん、橋本英郎さん、アキ(家長昭博)いて、フェルナンジーニョもいて、すごい刺激にはなりましたけど。ガンバでは本当に何分もできてないイメージですけどね。
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