J論プレミアム

時代が変わっても、そこにあるサッカー普遍の原理(海江田哲朗)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 

 


この日はあいにくの雨模様。ミクニワールドスタジアム北九州のバックスタンドの裏手に砂津泊地、対岸に門司区の山である風師山、矢筈山、戸ノ上山を望む。

 

時代が変わっても、そこにあるサッカー普遍の原理(海江田哲朗)[えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]六十七段目

 

■街のサッカー好きの気になる反応

仰向けになってシャンプーしてもらいながら、ミクニワールドスタジアム北九州は聞きしに勝るすばらしさだったと思い返していた。球技専用のコンパクトな設計はもちろん、メインスタンドから海と山が同時に一望できる。あの景観と潮風は特別だ。16日のJ2第34節、残留争いのど真ん中にいるギラヴァンツ北九州は予想どおり手強く、東京ヴェルディは2‐2で引き分けるのがやっとだった。

「かゆいところはないですか?」と訊かれ、「大丈夫です」と返す。毎度、あったとしてもどう言っていいやらわからない。

美容師のMさんは福島県の尚志高校サッカー部の出身だ。全国大会常連の強豪校で、Jリーガーを数名輩出している。後輩の活躍は気になるらしく、特に昨年プロ入りした世代きっての俊英、染野唯月(鹿島アントラーズ)の動向に注目していた。

「知らなかったですよ。アウェーの中国戦やサウジ戦をテレビでやらないだなんて」

そう言って、Mさんは髪の毛をわしゃわしゃやって温水ですすぐ。知ってのとおり、今回のワールドカップ・アジア最終予選はDAZNが全試合を配信。日本代表のホームゲームはテレビ朝日系列で中継されるが、アウェーゲームは独占することになった。

MさんはJリーグや海外サッカーに取り立てて興味はなく、お正月の高校選手権や代表の試合があれば観るというサッカーファンである。それなのに、東京Vの試合告知ポスターを貼ってくれるありがたいお店だ。立川のショップを回ってポスターを届ける知り合いのサポーターは「スタイリッシュなイメージを大事にする美容室は断られることがほとんど。珍しいですよ」と言っていた。もし機会があれば、立川駅北口から徒歩5分、地元で長く愛される『セラリリィ』をどうぞよろしく。

Mさんの口調に憤りはなく、「まさか代表の試合を気軽に観られなくなる時代がくるとは」と驚いている様子だった。さりとて、当面のところDAZNに加入する予定はないという。

 

■大事なことを北九州のスタジアムで見つけた

最終予選、日本は早くも2敗を喫し、第4戦でオーストラリアを2‐1で下して土俵際で踏ん張ったものの現在4位。2位以内に入って本大会への出場権をすんなり獲得できればよいが、追い上げ届かず3位でプレーオフに回る可能性もある。

 

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