「補強がうまいJ2クラブの共通点は…」代理人・田邊伸明が語るJ2移籍マーケットの最新動向と異変
100人近くの契約選手を抱える大手エージェント会社のジェブエンターテイメントの社長を務める代理人・田邊伸明。J2選手も多くサポートする氏は激しく動き始めたJ2移籍マーケットをどう見ているのか? これから何が起こるのか? 最新の動向やトレンドを踏まえつつ、J2の移籍事情を深読みしてもらった。
(インタビュー・構成/木崎伸也)※情報は取材時(12月7日)時点
【おもな内容】
・補強がうまいと思ったが降格してしまった相模原
・強化がしっかりしていると感じるクラブは京都、長崎、秋田、新潟、琉球…
・J2で選手を預けたいと思うクラブは水戸ホーリーホック
・「個人昇格」予想は…ジェフ、東京ヴェルディ、大宮アルディージャ、ヴァンフォーレ甲府、ジュビロ磐田、水戸ホーリーホック、町田ゼルビアの選手
……など
■J1のスカウトは減ったのにJ2からJ1へ移籍する選手が増えた理由
―今年は浦和レッズの小泉佳穂(前琉球)、明本考浩(前栃木)、平野佑一(前水戸)やセレッソ大阪の加藤陸次樹(前金沢)など、J2クラブからJ1クラブへ移籍して活躍する選手が多かったように思います。J2のレベルが上がったのでしょうか?
田邊 J2のレベルが上がったのか、それとも新卒の選手が出場機会を優先するようになった結果、こういう事態が起きているのか。そこは判断がわかれると思いますね。
―今までJ1へ行っていたような選手が出番を求めてJ2へ行く。そんなキャリア設計をする選手が増えたのでしょうか。
田邊 特に大学生たちが、そういう選択をするようになった感じがしています。
―それは賢いキャリア設計ですね。
田邊 あとはJ1へ入った選手が出場機会がないからレンタルへ出ようとしても、そう簡単にレンタルされないことも、彼らの判断に影響しているかもしれません。
ヨーロッパだと加入した若手をすぐにレンタルに出すのが珍しくないですが、日本の場合、すぐにレンタルに出すと学校に怒られてしまうことがある。自分のところで育てないのかと。
なので、Jリーグの場合、すぐにレンタルへ出せないという風習が、昔から脈々とあるんです。
―J2からJ1への飛躍が増えているのは、J1の強化担当の見る目が変わってきた部分はありますか?
田邊 はい、そう思います。J1側も「J2にいい選手がいたら取ろう」という感じですごくJ2を見ている感じがしますね。逆にJ2ばかり見ている人もいるんじゃないでしょうか。
誰が最初にやり始めたかわからないんですが、大熊清さん(現清水エスパルスGM)がセレッソ大阪の強化部長だったときに、そういう感じがすごくしたんですよ。J2から積極的に補強していた。
―セレッソの坂元達裕(前山形)は、まさにその成功例ですね。
田邊 他には福満隆貴(現千葉)や片山瑛一(元岡山)がいましたよね。
―代理人として、今のJ2をどう見ていますか?
田邊 実は弊社(ジェブエンターテイメント)は昔からJ2の選手が多いんですよ。以前「サッカーマガジン」でエージェントの特集号が組まれたとき、弊社は「J2専門」と紹介されたくらいで(笑)。J1やヨーロッパでプレーする選手も多く所属しているんですが、そう見られるんだと思ったことがありました。
最近、弊社でもJ2からJ1へ移籍するケースは増えてます。J2からJ1への移籍は昔は1シーズンでリーグ全体で片手で数えられるほどでしたが、今は10人を超えるんじゃないでしょうか。
こういう傾向があることで、Jリーグのスカウトのあり方も変わってきていると思います。スカウトは主に大学生や高校生を見るために存在していたと思うんですが、その人数を減らし、J2にフォーカスするのが当たり前になってきた印象です。
―Jクラブがスカウトの人数を減らしている?
田邊 正確に言うと、クラブ専任のスカウトの人数が減っているということですね。クラブが専任のスカウトを1人雇うと、経費を含めると2000万円くらいかかると思います。それだけコストをかけて、1年間に何人取るのかという話。高卒でJリーグへ入る選手は、ますます減ってきていますしね。
だからパートタイムでスカウトを採用して、クラブから遠いエリアをチェックしてもらう方が効率がいい。たとえば九州のクラブの場合、関東でパートタイムのスカウトを雇えば、交通費を大きく節約できます。
また、スカウトが減っていることで、より代理人にスカウトの役割が求められるようになっていると思います。
―そんな変化が起こっているんですね。
田邊 J2のクラブとしても、「この選手は将来的にJ1に売却しよう」と思って新卒を獲得するケースが増えていると思います。
昔はルールの盾もあって、選手を移籍させないのが当たり前の時代がありましたが、今は「選手売却も収益の1つとして考えなきゃいけないよね」と、多くの人が思うようになってきた。
今は才能豊かな選手がJ2やJ3のクラブへ入るときに、J1からのオファーに対して移籍を容易にするような設定を入れるケースが増えていると思います。たとえば、J1からのオファーには違約金を安く設定する、という感じで。
―選手売買の活性化は、ビジネスとして健全ですね。
田邊 健全だと思いますね。
■目利きが見る、強化がしっかりしているJ2のクラブと個人昇格しそうなJ2の選手
―ここ1、2年のクラブ経営は、新型コロナの影響を抜きには語れないと思います。どこも経営が苦しいと思うんですが、代理人として影響を感じますか?
田邊 感じてます。もともと契約交渉のときに「うちはお金があります」なんて言うクラブは当然ないんですが、「本当にお金がない」と言って給料の減額を求めるクラブが増えていると思います。
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