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どうしても大晦日に熊谷へ行かなきゃマズイのだ(えのきどいちろう)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 

どうしても大晦日に熊谷へ行かなきゃマズイのだ(えのきどいちろう)えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]七十二段目

 

■なぜ佐賀東高校を応援しに行くことになったのか

2021年は最後の最後にちょっとした冒険をした。いや、当コラムをご覧の読者は大前提として「相当なサッカー好き」なわけだから、もうぜんぜん鼻で笑われるようなことでしかないのだが。

僕にとっては冒険なのだ。

単刀直入に聞くけど、高校サッカー選手権ね、例年は12月30日に開幕して年をまたいで熱戦が繰り広げられる冬の風物詩。あれ、どうしてますか?

21‐22年開催の第100回大会の場合、12月28日開幕で中一日の日程が組めた。28日は開幕戦1試合だけで、29日から1回戦が関東のあちこちで行なわれた。野球の「夏の甲子園」に匹敵する大会だ。寒いけど、見に行きたい。見に行きたいけど、テレビや動画配信でも見れる。身軽な独身時代はいいけど、家庭を持つと年末年始は行事も多くて身動き取れんのだ。28、29日なんて大掃除してるでしょ。大晦日と三が日(年明け初戦は2日)は「サッカー見に行きます」とはなかなか言い出しづらい。僕は過去、(最大頑張って)正月4日くらいの試合は見に行ったことがあるはずだ。それが限界だった。何しろご父兄でもOBでもないからなぁ。ただ「見たいから見る」というだけで、必然性が足りない。

個人的にはいちばん「サッカー見に行きます」が言いにくいのは大晦日だった。一年の締めくくり。調子に乗って遠征に明け暮れた「ゆく年」を反省し、煩悩を鎮めるときだ。僕は仕事部屋の片づけなどをして、静かに過ごすようにしている。何か家人から正月の買い物を頼まれたら、ソッコー出かけてソッコー帰ってくる。夕方くらいからダウンタウンか紅白見ながら「いよいよ年があらたまりますなぁ」みたいなことを言う役をこなさなきゃいけない。高校サッカーなんか見に行ってる場合じゃないのだ。

が、2021年の大晦日は勇気を出して熊谷へ行った。行き先も駒場とかNACK5みたいな近場じゃない。もっと長いこと高崎線に乗って(急ぐ人は新幹線に乗って)たどり着くような「関東甲信越ちいさな旅」だ。

「熊谷に行かなきゃマズイんだよ!」

家人にそう主張した。「どこ高校の試合?」というので素直に「佐賀東」と打ち明けたら「はぁ?」だ。確かに佐賀県の佐賀東高校は何の縁もゆかりもない。一応、相手校は前回優勝の山梨学院だが、山梨県の山梨学院にもなーんも縁がない。「知らん高校vs知らん高校」の一戦と言っていい。それを見たさに熊谷スポーツ公園陸上競技場へ行く。折しも年越し寒波が襲来していて、日本海側は暴風雪、関東は耳のちぎれそうな強風だ。それでも行く。理由はただひとつ。

 

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