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【六川亨の視点】2022年4月16日 J2リーグ第10節 大宮アルディージャvsジェフユナイテッド千葉

J2リーグ第10節 大宮アルディージャ2(1-0)1ジェフユナイテッド千葉
14:03キックオフ NACK5スタジアム大宮 入場者数5,432人
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大宮が、今シーズン10試合目にしてようやく初勝利をサポーターにプレゼントした。試合後の霜田正浩監督は「何はともあれ、まずは1つ勝ちたい。今日の勝点3はうれしい勝点3。内容はまだまだ、ここから積み上げていきたい」というのは偽らざる本音だろう。そして「やっと試合後に選手の笑顔が見られた。今日一日くらいはちょっと喜んでもいいのかな」と肩の荷を降ろせたのか安堵の表情を浮かべた。

殊勲者は2ゴールを決めた河田篤秀だが、この日の大宮は現実的なサッカーを選択したことが吉と出た。昨シーズン半ばに監督に就任した霜田監督は、GKからDF陣を経由してビルドアップする、ポゼッションスタイルを指向した。しかしなかなか結果が出ずにシーズン終盤を迎えると、パスサッカーではなくロングパスによるリスク回避の攻撃へと舵を切った。その結果、最終戦の群馬に3-1と勝利したことでJ2残留を決めた。

そして迎えた今シーズン、主力選手が移籍しても、資金力不足から外国人選手は獲得できず、“オール・ジャパン”で臨むことになった。しかし開幕戦の横浜FC戦のように、アディショナルタイムでの失点で勝点を逃す試合が多かった。このため千葉戦では、それまでのポゼッションスタイルを捨て、昨シーズンの終盤戦のようにロングパスを多用するサッカーを採用。FW河田が「ロングボールをよりシンプルに生かそう。足元にもらうより、DFの背後を突こうと(選手同士で)話した」と言えば、今シーズン金沢から移籍してきたMF大橋尚志も「シンプルに裏を使おう。相手を裏返しにさせようとチームでも話し合った。わりと割り切ってやっていた」と明かしたように、ロングボールを両サイドのFW柴山昌也と高田颯也に出して、彼らの個人技による突破に活路を見いだそうとした。

ほとんどの時間帯でボールを支配していたのは千葉だった。元日本代表MF田口泰士のゲームメイクからチャンスをつかんだものの、大宮DF陣を崩しきれずにシュートは7本にとどまる。そして大宮はシュート4本で2ゴールを決める効率の良さで今シーズンの初勝利をたぐり寄せた。この1勝で大宮は琉球を抜いて21位に浮上。次節、4月23日のアウェー山形戦に勝てばさらなるジャンプアップも可能だが、霜田監督がこのまま「現実路線」を歩むのか、それとも「理想」を追求するのか。先週、電撃的に就任した原博実フットボール本部長との二人三脚も含め、霜田監督の決断に注目したい。

 

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。

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