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【森雅史の視点】2022年7月2日 J1リーグ第19節 清水エスパルスvs横浜F・マリノス

J1リーグ第19節 清水エスパルス 3(1-2)5 横浜F・マリノス
19:03キックオフ 国立競技場 入場者数56,131人
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清水の「クラブ創設30周年記念マッチ」と銘打たれた清水vs横浜FMは、確かに清水にとって特別な一戦となった。

国立競技場に5万6131人を集め、満員御礼、クラブ史上最高動員数、今季のJリーグでの最高動員数を記録したこの試合は、3-5という屈辱の敗戦となった。47分に獅子奮迅の活躍を見せていたチアゴ・サンタナの同点ゴールが決まったまでは互角の戦いだったと言えるだろう。だがわずか2分後の49分、そのチアゴ・サンタナのパスが乱れたところからレオ・セアラに3点目を奪われると清水の集中力は切れた。52分に4点目を奪われ、その後も攻め続けられて88分には5点目を決められてしまった。

試合前、スタジアムの広場で行われていたトークショーに登場していたのは森岡隆三、久保山由清、市川大祐の3人だった。全員が1999年ステージ優勝したときのメンバーだった。優勝を決めた相手は横浜FM。清水の街は歓喜に沸いた。

その後、今日までに横浜FMは3回リーグ優勝を飾った。清水はJ2降格まで味わった。この日も「17位」対「首位」という構図で迎えなければならなかった。国立を満員にできるだけのパワーを持つサッカーどころ清水のチームにとって、大観客の前で彼我の差をまざまざと見せつけられる、屈辱的な試合だったに違いない。

だが、それくらいのインパクトがあったからこそ前進する力が生まれるのではないだろうか。そういう反発心のあるチームだから90+6分に片山瑛一がゴールを決められた。1999年もファーストステージのホーム磐田戦で2-5と大敗したことが、後期の初ステージ制覇につながったのだ。その意味でこの試合は清水にとって特別になったに違いない。1999年は専門誌の清水担当記者として試合を見ていた私だから抱いてしまった、清水に対する甘い幻想ではないと思う。

 

 

 

森雅史(もり・まさふみ)
佐賀県有田町生まれ、久留米大学附設高校、上智大学出身。多くのサッカー誌編集に関わり、2009年本格的に独立。日本代表の取材で海外に毎年飛んでおり、2011年にはフリーランスのジャーナリストとしては1人だけ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本戦取材を許された。Jリーグ公認の登録フリーランス記者、日本蹴球合同会社代表。2019年11月より有料WEBマガジン「森マガ」をスタート

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