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女子サッカー本「女の答えはピッチにある」がいろいろ教えてくれた 【石井コラム】

韓国オンライン書店YES主催の「2018年今年の本」に選ばれた話題の女子サッカー本「女の答えはピッチにある 女子サッカーが私に教えてくれたこと」の日本語版が発売になりました。ここ10年間で読んだサッカー本で最も面白かったです。日頃、女子サッカーと設定がない方にもお勧めできる女子サッカー本です。ご紹介します。

韓国で「真のフェミ本」と話題沸騰!中身に入る前に・・・知らなかった韓国の中の日本

政治では対立が続く日韓関係ですが、いざ、人と人の付き合いであったり、エンターテイメントの世界では、本当に距離が縮まりました。私が韓国に行ったのは1990年が最初で、最後に行ったのは10年ほど前のこと。合計で5回、足を踏み入れ、韓国国内でサッカーを5試合見ていますが、今は、当時と全く違うらしいですね。今では、日本の女子中学生、高校生にとって韓国は憧れの国です。さて、この本の中に、このようなことが出てきます。

●主人公が日本のドラマを見ている。
●イザカヤ(日本の居酒屋形式の飲食店)をチームメイトが経営している。そして、知らなかったイザカヤと「ワンピース」の関係。
●数ある古典文学やサッカー本の引用に混じって「スラムダンク」の一節が出てくる。

韓国のサッカー用語にもびっくりする

日本のサッカー用語と比較してみると面白いです。雰囲気は似ているのですが、表現が大きく違います。

●ハリウッドアクション → シミュレーション
●拾い食い → ごっつあんゴール
●ワンチーム → ワンチーム あれ、一緒ですね。

原題は「優雅で刺激的な女子サッカー」

この原題も、何か皮肉めいています。そう、そういう皮肉も交えたユーモラスな表現が満載なのです。主人公は30歳代の普通の女性です。所属チームは、初心者歓迎の普通のサッカーチームです(優雅ではない)。でも、女性がサッカーに足を踏み込むと「普通」じゃないって感じることが、たくさんありますよね。そんな物語なのですが、読んでいても痛くないし、重くない。それは、作者のキム・ホンビさんの独特の文章表現のなせる技です。サッカーをプレーしている女性に説教をしたがる男たちの話なんて日本も韓国も同じで、読み始めて、数分間で、何回、声を出して笑っただろう。

ちなみに、この本に書かれていた「韓国で女性が男性から聞かされてウンザリする話」ベストスリーはこちらです。

3位 サッカーの話
2位 軍隊の話
1位 軍隊でサッカーする話

でも、この本の世界観を綺麗に見せると、この動画みたいになります。

実は女子サポーター本でもあります

初心者の女子サッカーの話だというのに、やたらとプレーの描写が詳しく、男子の韓国代表選手の名前や海外の選手の名前がたくさん出てきます。なんと、この主人公、実はKリーグの女子サポーターなのです。だから、出てきました、女子サポーターにやたらと教えたがる「ご親切な男性サポーター」。いますよね、Jリーグにも。

そんな主人公のキャラクター設定だから、サッカー好きには堪らない描写がたくさん出てきます。でも、ちょっと待ってください。いくら主人公がサポーターでサッカープレーヤーといっても、こんなエッセイをそう簡単に書けないですよね。そして、この小気味良いリズム。事態の深刻さを笑いで流してしまうようなユーモア。どこかで読んだことがあるような・・・。

答えは巻末の作者プロフィールにありました

作者のキム・ホンビさんが、どのような人なのか気になってプロフィールを読んで驚きました。キム・ホンビさんの「ホンビ」は、あのイングランドの小説家ニック・ ホーンビィさんの「ホーンビィ」から取ったというではありませんか。ニック・ ホーンビィさんといえば、そう、あのサポーターエッセイの不朽の名作「ぼくのプレミアライフ(Fever Pitch: A Fan’s Life)」。この「女の答えはピッチにある 女子サッカーが私に教えてくれたこと」の小気味良いリズムは「ぼくのプレミアライフ」のリズムだったのか!

サッカーをプレーされる方にもサッカーを応援される方にもおすすめのサッカー本です。ぜひ、手にとってみてください。韓国の女子サッカーについては、近日中にWKリーグで活躍する日本人選手のインタビュー記事を掲載する予定です。

(石井和裕)

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