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「WEリーグ以降」 アンジュヴィオレ広島存続問題に揺れる広島女子サッカーの未来は?これは全国に通じるモデルケースだ

2021年にスタートするWEリーグの参入クラブ数は11となりました。この狭き門に手を上げていた17クラブのうち2つのクラブが広島県を活動拠点にしています。一つは広島市のサンフレッチェ広島F.C。そして、もう一つは安芸郡熊野町のディアヴォロッソ広島です。2020年10月15日14時よりJFAハウスでWEリーグ 参入クラブ発表記者会見が行われ、YouTubeで生中継されました。残念ながら、ディアヴォロッソ広島の名前が岡島チェアから呼ばれることはありませんでした。参入する11クラブの最後に名前を呼ばれたのはサンフレッチェ広島F.C。ネット上では「広島から『女性の社会進出・男女の平等』を発信していくため」とWEリーグへの参入理由を発表していますが、この記者会見では、代表取締役社長の仙田信吾さんが、挨拶の時間のほとんどを、自らのクラブのことよりも、2015年9月20日に開催に開催されたアフガニスタン女子サッカー代表チームとアンジュヴィオレ広島の親善試合の思い出、先駆者であるアンジュヴィオレ広島関係者への感謝に費やしました。サンフレッチェ広島独自の記者会見では「アンジュヴィオレ広島様が手弁当で横川地区を中心に、女子サッカーの文化を作るために、そして育成、普及をしていくために奮闘しておられたことに対して、心より敬意を表し、リスペクトしております。」と前置きした上で「女子のプロサッカーリーグは日本代表クラスが参加してくるトップリーグです。そこに我々がチャレンジしていくために、1からチームを作る必要がある。」と、今後のチームづくりの方針を説明しています。

存続問題に揺れているアンジュヴィオレ広島

広島市西区の横川地区を中心に活動するアンジュヴィオレ広島はプレナスチャレンジリーグ(3部リーグに相当)で戦っています。横川地区・三篠地区は広島市の中心部に近く、Jリーグファンにはおなじみです。サンフレッチェ広島のホームスタジアムであるエディオンスタジアム広島へは、横川駅からシャトルバスで移動する方法が一般的だからです。その横川駅には、アンジュヴィオレ広島の大きな幕が掲出されていますが、これは、広島市西区地域おこし推進課が行っているスポーツによる地域おこしの取り組みの一つなのだそうです。

横川駅 提供:アンジュヴィオレ広島

広島は1970年代までサッカー御三家(浦和、静岡、広島)の一つと言われたサッカーどころ。県内には広島大河フットボールクラブ、広島フジタレディースサッカークラブ等、歴史あるサッカークラブの女子チームがあります。13の一般加盟チームが広島県サッカー協会に登録されています。そんな広島県からWEリーグ参入を申請したのは、まだ女子チームの活動実態がないサンフレッチェ広島と2019年に設立されたディアヴォロッソ広島でした。2012年の設立以来、日本の最高峰のリーグ戦で戦うことを目指して歩んできたアンジュヴィオレ広島ですが、WEリーグ参入を申請するまでに至りませんでした。そして、202094日にアンジュヴィオレ広島を運営するNPO法人広島横川スポーツ・カルチャークラブは臨時総会を開催し「このまま10月末までに支援企業やスポンサー資金の目処がたたない場合は、アンジュヴィオレ広島は存続することを断念する」と決議しました。

今回は「WEリーグ以降」をテーマに広島市を題材として女子サッカー・クラブの置かれている現実をレポートします。取材をさせていただいたのはアンジュヴィオレ広島、SRC広島レディース、ディアヴォロッソ広島の3つのクラブです。「サッカーどころ」と呼ばれてきた、政令指定都市の広島市で、各クラブが「WEリーグ以降」に何をしていきたいと考えているのか、何が必要なのかについて探ります。

トップチームから誕生したアンジュヴィオレ広島

 アンジュヴィオレ広島の運営をしているのはNPO法人広島横川スポーツ・カルチャークラブです。そのスタートは街づくり。手段として、例えば「芸術家の卵の方を支援する」「女子サッカーチームを作っていく」があり、第一弾のプロジェクトとしてアンジュヴィオレ広島が誕生しました。チーム名は「広く広島の方に愛してもらえる名前」を公募。チームカラーは広島市民のサッカーファンにお馴染みの紫。広島県リーグ、中国リーグを、それぞれ1年間で通過し、3シーズン目の2014年シーズンには、当時は全国リーグだったプレナスチャレンジリーグに参戦しました。2015年、2016年シーズンは、プレナスなでしこリーグ2部。現在はプレナスチャレンジリーグで戦っています。

20209月に「存続断念」が報じられ、現在まで存続運動が展開されています。横川駅前で展開される「アンジュヴィオレ広島応援イベント」は、横川カンパイ王国に参加されている皆さん、横川商店街の皆さん、三篠地区社会福祉協議会の皆さんの手で行われています。横川ゾンビナイト、ガワフェス等の地域イベントを開催し賑わいを作り出している横川地区と三篠地区に、集う人たちがアンジュヴィオレ広島の存続を願って仲間を集めているのです。

女子サッカー選手の受け皿に、下部組織を継続したい・・・アンジュヴィオレ広島の存続価値とは?

一方、スポンサー企業、新たな支援団体のお願いに奔走しているのは事務局長の三谷光司さんと営業・広報を担当している宮地弘充さんです。今回は宮地弘充さんにお話をうかがいました。宮地弘充さんはNPO法人広島横川スポーツ・カルチャークラブの職員ではありません。本職は広島市内の広告代理店に勤務。つまりボランティアスタッフです。しかし、アンジュヴィオレ広島が活躍し昇格していけば本業にもプラスになるのではないかという考えもあり、勤務先は宮地弘充さんにアンジュヴィオレ広島の活動を許可。宮地弘充さんは、本業がありながらも、昼間の時間帯も多くをアンジュヴィオレ広島のために費やしてきました。なぜ、ここまで情熱的に取り組めるのでしょうか。

「横川地区・三篠地区の皆さんが『アンジュヴィオレ広島応援イベント』を立ち上げてくださいました。そのパワーはありがたいです。存続断念が報じられた後に『なくなったら困る』という声がここまで上がるのは、私たちの想像を超えていました。アンジュヴィオレ広島がここまで、地域にとって重要になっていたのだと気づきました。そこに動かされています。」

とはいえ、少しばかりの募金活動で救済できる状況ではないということは、ご本人の口から説明がなくとも解ります。臨時総会がタイムリミットに設定した10月末までに、残された時間はわずかしかありません。

アンジュヴィオレ広島は日本の最高峰のリーグ戦で戦うことを目指して歩んできました。WEリーグ入りを断念した時点で、次の目標を定めて進んでいかなければなりません。これから支援してくださる企業は「何に対して支援するのか」目標を明確に把握したいからです。そして「WEリーグ以降」アンジュヴィオレ広島の存在意義は、どこに置かれるのでしょうか。宮地弘充さんは、こう言います。

「選手は、みんながみんなプロでプレーしたいわけではないと聞いています。そして、プロでやりたい選手が、みんなプロでやれるわけではありません。仕事のスキルも身につけながらサッカーをしたいという考えの選手もいます。まず一つは、そういったプロにならなかった女子サッカー選手の受け皿になりたいということです。そして、もう一つは、下部組織の継続です。保護者の皆さんから『なんとかして残してほしい』という想いをいただいています。子どもたちにとって地域のクラブはとても重要な存在です。そうした地域の声をたくさんいただいています。広島市内には他にも女子サッカークラブがあります。そうしたクラブとの相乗効果で、広島市内で女子サッカー選手を志す女性にプレーの場をたくさん提供することが、プレナスなでしこリーグやWEリーグ、なでしこジャパンの強化に繋がっていくと思います。」

2014年に結成された「アンジュヴィオレ広島U-18」は2019シーズン第29回もみじレディースサッカー大会優勝、第1回日本クラブユース女子サッカー大会(U-18)中国地域予選で準優勝となり全国大会へ出場するなどの活躍を見せました。中学生年代のアンジュヴィオレ広島U-15もなでしこアカデミーカップなどへのリーグ戦へ参加し、経験を積んでいます。ただ、宮地弘充さんによると、スクールは採算がとれていないようです。

「スクールは参加人数が少ないという問題があります。会場によっては参加人数が5名というケースもあります。また、三篠学区体育協会等との共催をしている会場もあり、参加費は安価に設定しているのですが・・・。」

提供:アンジュヴィオレ広島

 

県のトップが社会人チームでないと、選手が長くプレーを続けてくれない SRC広島レディース

 参加人数は広島市内の女子チーム共通の問題なのかもしれません。SRC広島レディースのテクニカルディレクター・廣田将久さんにお話をうかがいました。SRCとは「Soccer Representative Club」の略で「広島を代表するサッカークラブ」を意味します。 広島で最も歴史のある「広島教員サッカークラブ」を前身に2011年に改名しSRC広島となりました。2018年にSRC広島レディースをスタートし、男女のチームを有するクラブとなり、現在は広島県女子サッカーリーグで戦っています。

「環境が、なかなか厳しいです。広島県女子サッカーリーグでは11人揃わないチームが続出しています。若い年代がプレーを続けてくれない。広島市内では高校を卒業後にプレーを続けられない選手が多くもったいないところがあります。それと中学生年代でプレーできる環境がなくてやめてしまう女性が多いです。ここをどうにかしないと女子のプレー人口は増えないです。たくさんの選手にプレーしていただきたいので、今、SRC広島レディースは選手個人から活動費をいただいていません。」

提供:SRC広島

「SRC広島レディースは、真剣にサッカーをできる(中国リーグ昇格を目指す)環境を提供したいと考えています。山陽高校(広島市西区)の人工芝グラウンドを借りて練習しています。サンフレッチェ広島がWEリーグ入りすると、身近にプロのチームが出来るので、その下の受け皿を用意できるようにしたいです。男子の話ですが・・・SRC広島の男子チームはサンフレッチェ広島という素晴らしいチームに追いつき追い越せではなく『サラリーマン集団ですけれど限界まで挑戦したらここまでできる』という、真剣にサッカーを取り組める環境を提供しています。これが広島県のサッカーの支えになるという想いがあります。女子も同じです。まずは県のトップにならないといけません。県のトップが大学チームではなく社会人チームでないと、選手が長くプレーを続けてくれないという想いがあります。大学を卒業したらレベルが落ちるプレー環境しか選べないとなれば、県内で選手がプレーする目標を失ってしまいます。

とにかく若い年代の女子にサッカーを続けてほしいです。SRC広島レディースは良い環境を用意出来ていると思います。サッカーとフットサルの共存も可能です。とにかく女子サッカーを続けてほしいです。気軽に練習見学もできるのでボールを蹴りに来てほしいです。」

提供:SRC広島

事業性、選手人数の確保等の問題がありながら、広島市のサッカーのために女子チームを運営している「サッカーどころ」の指導者の気概を感じるお話でした。SRC広島は男子チームでサンフレッチェ広島との明確な役割分けを経験しているので、「WEリーグ以降」の目標設定もはっきりしています。廣田将久さんの言われる通り、県内のトップが大学チームになると、大学を卒業した後に選手の行き場がなくなってしまいます。とはいえ、全ての選手がプロでやっていけるわけではないですし、強いチームでのプレーを求めて県外に転居するわけにもいかない。サッカーをやめてしまう・・・だから、「WEリーグ以降」に受け皿となるアマチュアの強豪チームが広島県内に必要となってくるわけです。

練習場から生まれたディアヴォロッソ広島

 広島市安芸区と隣接する安芸郡熊野町にディアヴォロッソ広島(株式会社ゼロ・バランス)のゼロ・バランスフィールドという練習場(サッカー場・フットサル場)があります。熊野町は江戸時代から伝わる筆を製造し栄えてきた町です。「熊野筆」は、なでしこジャパンが国民栄誉賞を受賞した際に副賞として授与されたことから、サッカーファンの間でも一躍有名になりました。熊野町は広島市のベッドタウンとなっています。

株式会社広創不動産を母体とするディアヴォロッソ広島は、なぜ誕生し「WEリーグ以降」に何を目指しているのでしょうか。吉岡隆二さんにお話をうかがいしました(テキストでのご回答)。

ゼロ・バランス-フィールド 提供:ディアヴォロッソ広島

「広島市近郊ではサッカーフィールドが不足しており、各チーム共、練習場の確保に困難な状況を知っていたためにゼロ・バランスフィールドの建設を決意しました。女子サッカー界を見る中で『選手達がサッカーに専念できる環境にない』と思い自分達でその環境を作り上げることが出来ないかと模索し、現在のディアヴォロッソ広島の形となっています。また、ゼロ・バランスフィールドの建設をすでにスタートさせていたためにそのフィールドを活用したチームづくりを行いたいとも考えました。(WEリーグ参入を目指した理由は)元々、会社の意向が「女性活躍社会」を目指していたため、WEリーグの理念に賛同し参入を決定しました。今後はゼロ・バランスフィールドを利用しながらU-15U-18世代等の育成にも努め、TOPチームのディアヴォロッソ広島をより強いチームにしていく。また、女子サッカー選手が生涯に亘ってサッカーに関われる環境(職場)を提供できるようにハード面の強化も図っていきます。」

提供:ディアヴォロッソ広島

2019年に設立されたディアヴォロッソ広島は、現在、中国女子サッカリーグ2部で戦っています。第36回広島県女子サッカー選手権大会 兼 皇后杯 JFA 第42回全日本女子サッカー選手権大会 広島県予選会を無失点で勝ち上がり優勝しました。

アンジュヴィオレ広島は、なぜ「WEリーグ以降」もプレナスなでしこリーグを目指し続けるのか?

 アンジュヴィオレ広島の宮地弘充さんからうかがうお話とアンジュヴィオレ広島を運営するNPO法人広島横川スポーツ・カルチャークラブの活動計算書を照らし合わせてみると、下部組織、スクールが収益を生み出せていないようだということが分かります。ここからは、アンジュヴィオレ広島存続の課題についてお話を進めていきます。

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