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後篇「農業×サッカー」そしてアート FC越後妻有から見えるWEリーグとは

アート作品が点在する新潟県越後妻有地域(十日町市・津南町)で活動するFC越後妻有は「農業×女子サッカー」 のプロとしてサッカーをプレーしながら、棚田の保全活動を行う、全国見渡しても類を見ないプロジェクトです。クラブの立ち上がり経緯やユニフォームデザイン、新潟県女子サッカーリーグでの初戦から第3節までの活躍については前篇をご覧ください。

2015年に設立されたFC越後妻有ですが、2020年にメンバーが揃い(現地に6名、関東近郊を中心としたサポートメンバーを含めて合計15名)ついに新潟県女子サッカーリーグに単独チームとして参戦することができました。ここに至るまで、選手のやりがいはどこにあったのでしょうか。GM兼監督の江副良治さんは、どのようにして環境を整え、新たな仲間を見つける活動をしてきたのでしょうか。

そして、対局の位置にあるように見えるWEリーグをどのように見ているのでしょうか。その言葉の端々に、異色の女子サッカークラブが、これから、どのように進んでいくのかのヒントが隠されているかもしれません。

山あいの道を抜けるとその先にFC越後妻有

「NHK きょうの料理ビギナーズ」等、連載多数、新潟県出身のお米料理研究家しらいのりこさんは、FC越後妻有にこんなエールを贈ります。

新潟出身ということもあり、大地の芸術祭には過去に何回か訪れています。山あいの道を抜けるとその先に広がる棚田。その姿は美しく、いつまでも眺めていられるお気に入りの風景です。もちろん、十日町の棚田のお米もおいしいですよね。そこで女子サッカーチームが活動していることは、奴奈川キャンパスを訪れたときに初めて知りました。しかも、棚田の担い手として米作りにも参加しているとは!田植えから稲刈りまで、米作りの流れについては米農家でなければなかなか知る機会は少ないですが、FC越後妻有の活躍を通してもっと知られていけばよいなと思います。試合に勝ったら、勝利の美酒ならぬ、おいしいごはんでお祝いしたいですね!

「ごはん同盟」 しらい のりこ、シライ ジュンイチ

 

大学の健康栄養学科で学び、卒業後に神奈川県からFC越後妻有にやってきた渡邊彩海選手に越後妻有の好きな場所を聞いてみると、このような答えが帰ってきました。

「私は棚田がもの凄く好きです。上から見たときに、田んぼが何個も何個もあって、その田んぼの大変さも、今、身に染みているところなので『農家の方の想いを含めて見た景色』が好きです。」

棚田にはおいしいお米を作ろうと、毎日汗水を流して働いている農家の方の想いが詰まっている。棚田の保全活動を行いながら、サッカーをしている渡邊選手の充実した毎日が感じられる回答でした。

祖父母が農家で大学の農学部で農業を学び越後妻有にやってきた大平(おおだいら)理恵選手は、このように答えています。

「私は四季折々でいろいろな景色があって、1日の中でも日の当たり具合とかで変わる、この越後妻有エリアの何気ない自然の風景が凄いと思っています。あ、雪はとても多いですが練習は体育館でできます。」

自然に恵まれた越後妻有には芝生のグラウンドと冬の間もトレーニングをできる体育館(室内トレーニングルーム)があります。どんな練習場なのか、その辺りから、この後篇は始まります。

アートに囲まれている日本で唯一のユニークな練習場を整備

—練習場は以前からあったのですか?

江副–廃校になった小学校(奴奈川キャンパス)のグラウンドを利用しています。廃校になったタイミングで、地元の方などと一緒に芝生を手植えしてサッカーのグラウンドに整備しました。今は、僕が週に何回か芝刈りを行っています。

「奴奈川キャンパス」Photo by NAKAMURA Osamu

—大地の芸術祭では、廃校をアート作品として再生することで、地域の景観を維持し、記憶と知恵を未来に継承する試みが行われています。アート作品以外にも、宿泊施設(かたくりの宿)になったり、いろいろと使われていますね。

江副–この(グラウンドの)奴奈川キャンパスの中には米澤文雄シェフ監修のTSUMARI KITCHENがあります。3階には室内トレーニングルーム(体育館)もあります。トレーニングルームは手作りなのですが、トレーニング器具も揃えて、より充実した施設にしています。

—日本では稀な「アートと一体になったトレーニング施設」じゃないですか。

江副–芝生のグラウンドの周囲にトロッコを使ったアート作品「はなしるべ」が走っている・・・本当にどこにもない施設が出来つつありますね。

日本をびっくりさせたい「誰かの幸せに繋がる仕事」

—選手のお二人のやりがいはどうですか?

大平–私は農学部出身で、農業にずっと興味があったので、農業をやりながらサッカーをやっていることで日本をびっくりさせたいという気持ちが一番大きいです。それと、今まで地元の皆さんにはお世話になっているばかりで、プレーを見てもらうことが出来ていないので恩返しをしていきたい、ぜひ、見てもらいたいという気持ちです。

渡邊–サッカーに関してはやりがいしかない、と思っています。前に進むしかないチームで、徐々に人数が増えていっているとか、トレーニング室が出来たり、環境が良くなっていく。その中で、どうやったら自分がチームに、地域に貢献できるかなと考えて、本気でサッカーに向き合って練習していこうと思えるところがやりがいです。農作業においては、棚田保全という大きな問題に取り組んでいるのがやりがいに繋がっています。美しい棚田の景観や美味しい米は誰かの幸せに繋がっていると思うので、誰かの幸せに繋がる仕事をできているということが何よりもやりがいになっています。

photo by Miho HOSHINO

—楽しんで、それ発信すればするほど仲間が増えることにつながるんじゃないですか?

渡邊–それを願っています。まだ見ぬ仲間たちにもっともっといっぱい来てほしいです。

江副–次年度の新卒の選手たちなんかはSNSの検索で我々のクラブのことを知って問い合わせの連絡をくださった例があります。SNSの更新もご縁の一つになるんじゃないかなと思います。(有力な選手を)人づてに紹介してもらうこともあります。今までは、僕は青森から沖縄まで飛び回ってやっていたのですが、今年は(コロナ禍で)、今までで一番、越後妻有にいる生活になっていますね。

photo by Miho HOSHINO

FC越後妻有は、地方創生の専門家の目に、どのように映るのでしょうか。内閣府地域活性化伝道師、総務省地域力創造アドバイザーの中島淳さんに、FC越後妻有への応援メッセージをお願いしたところ寄稿していただきました。

FC越後妻有さんへの応援歌

関係者からFC越後妻有さんへの応援メッセージを依頼された時、私は失礼ながらこのチームのことを存じていませんでした。ただ、私で良いのかどうかを見極めるためにチームやプロジェクトのストーリー、コンセプトに触れた瞬間からすっかりファンになってしまったのは事実です。

私は長年いわゆる地方創生の分野で仕事をしていて、少子高齢化がもたらす課題に触れています。そんな時どうしたら良いのかでいつも悩んでいるのですが、地域の人たちは「こうすれば良い」という答えが欲しいのではなく「希望」が欲しいということに気づかされます。

半農半X(専業農家ではなく、何かをしながら農業に臨む)は全国で認知されていますが、このXがサッカーというケースを私は他に知りません。初めての取り組みには不安がつきもので、正しいかどうかの解はありません。でも確かなことは、このチームには地域の夢と希望があるということです。

このようなプロジェクトは地元の理解と環境、タイミング等多くの要素が必要となるので、全国女子サッカーのロールモデルになるとまでは思えませんが、地域と一緒に創りあげていくというケースではサッカーに限らない多くの取り組みの見本となるはずです。

「ないことが当たりまえ」でも「出来ないことはない」を前提に何でも試行錯誤し夢を実現していくその様はまさにももいろクローバーZ。きっと多くの人が共感し応援してくれることになるでしょう。私もその一人です。

内閣府地域活性化伝道師、総務省地域力創造アドバイザーの中島淳

WEリーグに入りたい!日本の女子サッカーのためにやれることがある

ここから先はWEリーグについてのお話です。仕事をせずにサッカーに専念して年俸を得ることが出来るプロ契約選手が多数誕生するWEリーグを「農業×女子サッカー」 プロはどのように見ているのでしょうか。そして、秋春制のシーズン、過疎地である越後妻有という地域性・・・予想は良い意味で裏切られ、インタビューが進むにつれて明るい希望の光にあふれ、会話が弾んでいきました。

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