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なでしこジャパン山根恵里奈選手引退会見 「甘い」と言われるかもしれないですけど「自分自身を本当に大事にしてほしい」と思っています。

2020年11月10日に行われた山根恵里奈選手(ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)の引退記者会見の模様をお送りします。

山根–たくさんの方に会見に入っていただき、誠に感謝を申し上げます。クラブから先日発表がありました通り、今シーズンをもって現役を引退することを決めました。自分は引退にあたって会見を開くようなキャラでも器でもないと思っていたので、驚きながら、皆さんの質問を受けることになると思うのですが、最後の一仕事だと思って頑張りたいと思いますので、よろしくお願いします。

引退を決めたのが、どうしてこのタイミングだったのかについて、お話しさせていただきます。新型コロナウイルスの影響でリーグの開幕が延期になり、随分とイレギュラーなシーズンになりました。リーグが開幕したときには、自分は来年も選手を続けるってことについて、何の疑いもなく思っていました。ある日というか、ある時期から突然、ちょっと自分の中に来年ユニフォームを着てピッチに立っているイメージが全く浮かばなくなっていることに気づいて・・・本当に突然だったので、最初びっくりしたのですが・・・でも、自分の中で少し動揺しながらも考える時期はあったのですが、やっぱり何をしても、何を考えてもイメージは浮かばないままだった。それで、ずっと、もやもやしながらいた時期もあったのですが、もうこれは「決めどき」なんだなって・・・そのとき、引退を自分自身で決めました。

提供:ジェフユナイテッド市原・千葉レディース

質問)引退されてもやりたいこと、夢はありますか?

山根–ジェフレディースの試合を観客席から、いちファンとして応援することを全力でやりたいです。一番大好きなこのチームで育った一人の女子サッカー選手だと思っているので、その恩返しをまずしたいと思っています。あとは、自分のキャリアを還元できる方法があれば積極的にやらせてもらいたいと思っています。

 質問)チームメイトにお伝えしたときは、どのような反応だったでしょうか?

山根–若手の子たちは動揺じゃないですけど「どう受け取ったらいいのだろう」「どうしたらいいのだろう」って表情をしている子もいたのかなって思っています。ベテランは言った直後からいじってきたので・・・「もう一年やる?」とか「今ならまだ間に合うよ?」・・・今でも言われるのですけれど(笑)、そういう感じです。一回こうだって決めたことはもう絶対に揺るがない、変わらないっていう私の性格を知ってくれているので、そこはしっかりと受け止めてくれたんじゃないかなと、私は思っています。

これまでの歴代のスタッフ、チームメイトに心から感謝をしたい。

質問)一番心に刻まれていると思い出に残る試合や出来事というものがあれば教えてください。

山根–一番新しい所になっちゃうんですけれど、一番に印象に残っている試合は、今年の9月の西が丘でのベレーザ戦です。多分ですけれど、私が思う「私の現役史上最高の試合」だと思うので、それを、このタイミングで出来たっていうのも嬉しく思っています。100試合出場の、ほぼ全てをジェフで出させてもらったので、これまでの歴代のスタッフ、チームメイトに心から感謝をしたいと思っています。ありがとうございました。

質問)共に闘ってこられましたGKの船田選手、木稲選手にお伝えしたいこと、伝えしたこと、または託したいことなどがあれば教えてください。

山根–伝えたいことは本当に「ありがとうの一言」だけです。船田(麻友)は、15歳で出会っているので、本当に人生の半分を一緒にサッカーしているようなものです。「長きにわたって、本当に厄介な性格のめんどくさい、この私にお付き合いいただいて、ありがとうございました」って伝えたいです。るな(木稲瑠那)に対しては、先日の100試合出場セレモニーのときにみんなからいただいたメッセージの中に「(私の)体の動き方、使い方を見て勉強させてもらっています。ありがとうございます。」というメッセージがあったんです。やっぱり彼女も女子の中では比較的長身の選手で、そういう言ってもらえて、私も一緒にやれて良かったなーって思います。残り少ないですけれど、その中で参考にしてもらえることがあったら、一生懸命に伝えたいと思っています。

船田選手より花束 提供;ジェフユナイテッド市原・千葉レディース

質問)「ある時期から突然」というのは、今、振り返るとどの辺りで何がきっかけだったでしょうか?

山根–わからないです(笑)。本当に「ふと気づいたら」っていう言葉がぴったりはまるぐらい・・・自分自身でも本当にびっくりして「どう、どうしたらいいのだろう」っていう状況になったのが最初だったのです。本当にいつだったのか分からないですね、ごめんなさい、こんな答えで。

長い自粛期間の中でいろんなことを考えて・・・「自分の人生をどうする」ってことも、確かに考える時間はありました。2014年から三井住友海上で働かせていただいているのですが「保険の勉強をちゃんとしよ」って資格をちゃんと取ろうと思ってテキストを読んだり、見たり、勉強し始めて・・・人生について考える時間っていうのはあったんですけど・・・ただ、本当に選手を続けることに何の疑いもなく思っていたのは確かです。

代表合宿から帰ってきてすぐにチームにお話をしました。

質問)10月に代表合宿に呼ばれたときにはどのような気持ちだったのでしょうか?

山根–自分の頭の中に「代表」っていうワードが、もう入っていなかったので、合宿に呼ばれることは全く想定していない状況でした。聞いたときは本当に驚きました。ただ、本当に自分も調子が良くて「もしかしたら気持ちがまた『もう一度』ってなるんじゃないか」っていう期待もあって、それをしっかり確かめてみようと思いながら行ったのですが、その気持ちは全く変わらなかった・・・というか、本当にイメージが全然出てこなかった。これは本当に「もうないんだな」っていうことを確信したので、帰ってきてすぐにチームにお話をしました。

質問)来年のWEリーグという新たなステージが出来るということについて影響は?

山根–WEリーグに対しては希望を凄く持つ部分もあり、不安を持つ部分も正直あります。チームで話していても、やっぱり若い子の中にも不安に思っている選手がいるので、一緒にやりながらそういう部分をサポートしていけたらと感じていたのは本当に正直な気持ちです。WEリーグでやりたいって気持ちがあったのは確か、不安があるのも確か、でも、しっかりサポートしようと思っていたのも確か。ただ最終的な決断に関しては自分自身の問題で決断しました。本当に自分の問題ですね。

質問)悩んでから決定するまで、どれくらい時間がかかったのでしょうか?誰に最初に報告したのでしょうか?

山根–今、現役生活でノリに乗っていると思っています。ただ、自分の中のイメージが浮かんだことを正直にやってきたタイプです。イメージがないことはできないというか、イメージが浮かんだ方に進むってことをずっとやってきたので、今回も自分のイメージ通りに決断しました。

最初に報告したなでしこリーガーはアルビレックス新潟レディースの川村優理さん。

最初に報告したのは誰だった・・・覚えていないんですけれど・・・親には「多分、私は今年で引退をすると思います」っていうのをLINEで一言、入れただけです。親にはもうそれ以上のことは言わずに次に「リリース出ます」みたいな連絡を取りました。最初に報告したなでしこリーガーだとアルビレックス新潟レディースの川村優理さんです。

質問)2023年にはオーストラリアとニュージーランドでワールドカップがありますが、やっぱりビジョンが見えてきた時に復帰の可能性は?

山根–100%ない!現役復帰は本当に100%ないです。すっきり納得した上で「これがベストだ」と思った決断なので、これからも暖かく見守ってくれたら嬉しいです。

提供;ジェフユナイテッド市原・千葉レディース

188センチの女子のGKは、しばらくは見納めだと思う。

質問)イメージの中で「ちょっとこれはもう引退かな」ということが頭の中に浮かんでから、ゴールが決まったからこそ頑張れたことはありました?

山根–すっきりと吹っ切れた部分はあるんじゃないかなと思っています。自分が決めたことなのですが、正直、終わりに向かっている実感はあまりなくて、ナチュラルに練習も試合もチームメイトとの時間も、仕事の部分もいつもと変わらない毎日、本当に日常を過ごしているって感覚です。すっきりしているっていうところだけかな、今は。

質問)思い返して特に影響を受けた選手は?

山根–印象的だったのは、やっぱり米国女子代表のホープ・ソロ選手。世界のトップのGKの方だったと思うので。でも、影響を受けたという点では、ベティスの選手、スタッフだったと思います。

質問)まだシーズンが残っています。最後までこうやりたい、ここを見てほしいというところがあれば教えてください。

山根–ここを見てくださいっていうのはないんですけど(笑)188センチの女子のGKは、しばらくは見納めだと思うので「あーこいつ、でっけーなー」と思って見てもらえたらと思っています!

質問)ジェフの、どのようなところが好きで、どこを続けていってほしいなと思っているか?

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