WE Love 女子サッカーマガジン

「ジェフってどうなの?」と聞かれたら「良いクラブだよ!」と気軽に即答できるクラブにする 船田麻友選手の #女子サカ旅

2021年にWEリーグ参入が決まったジェフユナイテッド市原・千葉レディースは、2020プレナスなでしこリーグ1部を6位で終えました。2019年よりも順位を一つ落としましたが、得失点差は-1から+1となり、得点は18から30に大きく伸びました。2020年に大きく成長したチームの一つだったと思います。欧州でのプレー経験がある大滝麻未選手(2019年から)、山根恵里奈選手(2020年から)、岸川奈津希選手(2020年から)が加わりました。近年でチームの雰囲気は大きく変わったように、筆者は感じました。特にFIFAマスターを修了している大滝麻未選手は得点力(9得点・5位)はもちろんですが、2019年に、なでしこ(女子サッカー選手)による社会活動を行う⼀般社団法⼈ なでしこケアを設立し、オフザピッチの活動でもクラブ内外に大きな影響を与えています。それでも、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースのベースとなる、走って戦うスタイルは変わりません。試合前の円陣が弾けて一斉に選手が走り出す景色もいつもの通りです。

今回はジェフユナイテッド市原・千葉レディースの船田麻友選手のインタビュー記事です。2007年にジェフユナイテッド市原・千葉レディースに選手登録された船田麻友選手は、いわゆるベテラン選手です。船田麻友選手が長くジェフユナイテッド市原・千葉レディースでプレーする間に、多くの選手が加入し、移籍または退団していきました。WEリーグ参入に向けて、船田麻友選手は女子プロサッカー選手という仕事をどのように考えているのか、社会貢献活動にどのように取り組んできたのか、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースをどのようなチームにしてきたいのかについて、お話をうかがいました。また、後半では、船田麻友選手に美しい写真を提供していただいた、遠征の思い出をご紹介します。

怪我で離脱してしまった2020年シーズン後半

船田–今シーズンは、前半になかなか勝てなかったのですが、後半に勝率が良くなって、(みんなが)伸びたシーズンでした。自分は、怪我で離脱することが12年目にして初めてです。でも、前向きにやることは出来た感じです。指の怪我だったので「ただGKを出来ない」だけです(笑)。身体はぴんぴんしているので、逆に、それがもどかしかったですね。ステップワークとか、フィールドプレイヤーのような足元の訓練を念入りにやっていました。

—怪我明けに「異常に足元が上手いGK」として帰ってくるのですね。

船田–(笑)元々、足元は嫌いじゃないし得意な方なので、長所を伸ばせるようにガッツリやりました。でも、足元を(上手く)出来るGKが、今は多いので、まだまだ、これからもやっていかなければという感じです。

海外プロ経験者から学んだオンオフの切り替え

—チームメイトには欧州のプロ最前線でやってこられた選手がいらっしゃいますね。

船田–海外でプロを経験している、大滝(大滝麻未選手)、岸川(岸川奈津希選手)、山根(山根恵里奈選手)は、しっかりと「自分を持っている」と思います。彼女達の振る舞いを見ると「海外(のプロ)に行くとちょっと変わるのかな」と思います。海外の選手はオンオフがはっきりしていると大滝からよく聞きます。日本では「練習しなきゃ、練習しなきゃ」となりがちで、自分も「チームを勝たせるためにもっとやらなきゃ」と思い詰めてしまうタイプなので、話を聞いてからは、ちょっと気分が楽になりました。山根の引退記者会見の「自分を大切にしてほしい」なんて、あんな良いエピソードは本人から聞いたことがないのですが、ああいう感覚は、海外(のプロ)を経験しないと出てこないんじゃないかなと思います。

船田選手より山根選手に花束 提供:ジェフユナイテッド市原・千葉レディース

—オリンピック・リヨンでのプロ経験のある大滝選手の活動(⼀般社団法⼈ なでしこケア=なでケア)はどうですか?

船田–正直に言って「先を越された!」と思っています。自分自身の夢が「現役選手のうちに起業する」だったのです。「プレナスなでしこリーグの選手が誰もやっていない」と思ったから。最初にやってやろうと思っていました。昨年に「なでケア」が誕生することになり「自分、やりたかったことなのに!」と思いました。

—様々な方に「なでケア」のお話をうかがっていますが、ライバル視している方と出会ったのは初めてです。

船田–(笑)今、私も「なでケア」の活動に関わらせていただいています。今となってはライバルではなくて、私が始めた「チームGolazo(ゴラッソ)」の一つのモデルとして参考にさせていただいています。

 

「チームGolazo(ゴラッソ)」とは2020722日に設立を発表したアスリートの力で災害支援をする団体です。7月上旬に九州地方などを襲った豪雨被害にあった地域を支援する活動をしています。

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船田麻友選手が九州で活動を始めたアスリートの力で災害支援をする団体「チームGolazo(ゴラッソ)」

船田–私の母親の実家が熊本県人吉市にあります。おばあちゃんの家の1階が全て浸水しになり2階も川の水がギリギリまで迫る大きな被害を受けました。これをきっかけに、自分が出来ることはないかと考えました。アスリートサポートZ-IRIA(ジリア)の高橋(高橋侑志さん)に相談し、そこからブラジルでプレーしている藤尾きらら選手、アルビレックス新潟レディースの平尾知佳選手、AC長野パルセイロレディースの大久保舞選手らの力を借りて、アスリートの力で災害支援をする団体を立ち上げました。

目標とするフェイズが4つあります。第1フェイズが「ボールを集める」。洪水でボールを流されてしまった現地に贈るためのサッカーボールを100球集めることができました。第2フェイズが「想いの詰まったボールを現地に届ける」。今は、これをやっています。ただ、自分たちが直接に届けに行かれないので、熊本県にある一般社団法人 FUNFITの力を借りて、各地の被害を受けた学校に届けていただいています。第3フェイズは「私たちが一緒に届けたボールを蹴る」。そして夢を持ってもらうことを目指しています。

ボールを集めるときは「チームGolazo(ゴラッソ)」のメンバーだけではなく、プレナスなでしこリーグのいろいろな選手から連絡をいただきました。ボールを送ってくださったチームもありました。女子サッカー選手の輪って凄いと思いました。

—取り組みの際に何か参考にされたものはありますか?

船田–なでケアは参考にしています。それと熊本県だと巻誠一郎選手が活動されているので参考にしました。現在も、巻誠一郎選手は熊本県内で支援活動をされています。

—始める前と今で予想と違うところはありますか?

船田–漠然とした想いで始めました。始めてみたら、根気がいるのと、小さな進捗が目に見えにくいので「想いの見える化」が難しかったです。迷ったときは、とにかくやってみようと試行錯誤しながら進んできました。災害支援を始めるときに「一方的にやるだけでは意味がない」「やりっぱなしは意味がない」という言葉をいただいていたので、こちらがアクションをしたら相手の反応を感じながらやっています。現地から届く子供達の笑顔を見ると「よし!次に進もう」という気持ちになります。あとは、自分たちが現地に行って一緒にサッカーを出来ると嬉しいのですが、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の問題もあったりして……また、本業はサッカーなので、なかなか行けないのですが、来期の日程が決まったらオフシーズンに行きたいと思っています。

清水由香コーチからジェフユナイテッド市原・千葉レディースの選手に深く浸透しているスポンサー活動の重要性

—WEリーグ参入決定を知ったときの感想はどうでしたか?

船田–「おっ決まった」くらいで、ふわふわーとして実感が無いのが正直な感想です。でも、初年度にジェフユナイテッド市原・千葉レディースというクラブが参入できるのは凄いことだと思います。女子プロサッカー選手という職業が出来て、何が大きく変わるのかについては、まだイメージが出来ていません。「プロになれるかも!?」というワクワク、ドキドキがあります。でも、不安もあります。「お客さんが入ってくれるのだろうか」とか……。今、選手はスポンサー企業で働いています。選手は、各々の勤務先でファンを獲得して観客を増やしてきたのですが、プロになると、そうした職場での活動をできなくなります。地域との密着性がどうなるのだろうと考えます。

2008年1部昇格 清水由香コーチ(中央前列)とともに 提供:船田麻友選手(右前列)

—不安といっても、かなり前向きに進んでいくための不安が多そうですね。一人でも多くの方に試合を見ていただきたいという活動を日頃から行なっているがゆえに生まれる不安ですね。思い出したのですが、コーチの清水さん(清水由香コーチ)がサッカーを始める以前から勤務していた企業が、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースのスポンサーに付いてくださったという過去の経緯もあるので、そうしたスポンサー活動の重要性がチーム内に深く浸透しているのではないかと思いますがどうですか?

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