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ベストイレブンは浦和から8名 プレナスなでしこリーグ・プレナスチャレンジリーグ 2020 表彰式 そして読んでほしい表彰式に寄せる言葉

COVID−19(新型コロナウイルス感染症)感染拡大による緊急事態宣言により、従来より大幅に規模を縮小してプレナスなでしこリーグ・プレナスチャレンジリーグ 2020 表彰式がリモート開催されました。独走優勝を反映して、ベストイレブンのうち8名の受賞者を浦和レッドダイヤモンズレディースの選手が占め、これまで多数を独占していた日テレ・東京ヴェルディベレーザからは2名、2位となったINAC神戸レオネッサからは1名が受賞しました。そして、INAC神戸レオネッサ終盤戦の急上昇へ原動力となった水野蕗奈(みずのふきな)選手が新人賞に輝きました。

新人賞を受賞した水野蕗奈選手の活躍でINAC神戸レオネッサは2位に食い込んだ

新たな顔ぶれ、浦和レッドダイヤモンズレディースから最多の8名

浦和レッドダイヤモンズレディースから選ばれたベストイレブン8選手のうち、池田咲紀子選手、清家貴子選手、塩越柚歩選手、水谷有希選手が初受賞。また、長船加奈選手は浦和レッドダイヤモンズレディースでは初めての受賞です。初受賞が意外な印象を受ける池田咲紀子選手はともかく、浦和レッドダイヤモンズレディースの2020プレナスなでしこリーグ1部優勝は、従来からプレーしていた選手の潜在能力が、森栄次監督により引き出された結果によるものということが、この表彰によって裏付けられた感じがします。MVPとなった菅澤優衣香選手は6回目のベストイレブン受賞です。

・池田 咲紀子 GK 浦和レッドダイヤモンズレディース(初)
・南 萌華 DF 浦和レッドダイヤモンズレディース (2回目)
・清家 貴子 DF 浦和レッドダイヤモンズレディース(初)
・長船 加奈 DF 浦和レッドダイヤモンズレディース (2回目)
・清水 梨紗 DF 日テレ・東京ヴェルディベレーザ (4回目)
・長谷川 唯 MF 日テレ・東京ヴェルディベレーザ (4回目)
・柴田 華絵 MF 浦和レッドダイヤモンズレディース (2回目)
・塩越 柚歩 MF 浦和レッドダイヤモンズレディース(初)
・水谷 有希 MF 浦和レッドダイヤモンズレディース(初)
・菅澤 優衣香 FW 浦和レッドダイヤモンズレディース(6回目)
・田中 美南 FW INAC神戸レオネッサ(6回目)

初のベストイレブン受賞となった塩越柚歩選手

4年連続6回目のベストイレブン受賞となった菅澤優衣香選手

過去10年間のベストイレブン推移 数字が語るプレナスなでしこリーグの推移

日テレ・東京ヴェルディベレーザからの受賞者が2名になったのは2012年シーズン以来です。女子サッカー史を辿ると、翌年2013年シーズンはINAC神戸レオネッサが圧倒的な強さで三冠を獲得。しかし、INAC神戸レオネッサと日テレ・東京ヴェルディベレーザのベストイレブン受賞者数が拮抗し、浦和レッドダイヤモンズレディースが優勝した2014年シーズンを挟んで、2015年シーズンから日テレ・東京ヴェルディベレーザの黄金期が始まります。2014年シーズンから2016年シーズンの3年間で、INAC神戸レオネッサからの受賞者は合計2人に。ベストイレブン表彰は、各シーズンのクラブの勢いを示しているものといえます。前回、浦和レッドダイヤモンズレディースが優勝した2014年シーズンは、浦和レッドダイヤモンズレディースから3名が選出されました。今回は、その倍以上の8名ですから、プレーの高いクオリティが評価されたことがうかがえます。

ベストイレブンを初受賞した清家貴子選手(浦和レッドダイヤモンズレディース)はWEリーグ開幕までに怪我からの復帰を目指す

長船加奈選手は2回目のベストイレブン受賞。前回の受賞はベガルタ仙台レディース(当時)に所属時の2013年でした。2021年は東日本大震災から10年です。東京電力女子サッカー部マリーゼやベガルタ仙台レディースでプレーしていたときのチームメイトが引退していく中、ご自身は気持ちを新たにWEリーグに臨まれるようです。

2回目のベストイレブン受賞となった長船加奈選手

移籍で変わる2021年シーズン。日テレ・東京ヴェルディベレーザの巻き返しはあるか!?

長谷川唯選手は、ベストイレブンと敢闘賞を受賞。やや硬い表情で、お話しされました。

チームとしては優勝ができずに悔しい結果になりましたが、個人としてこのような素晴らしい賞をいただけてすごく嬉しいです。なかなか良い結果が出なかったので自分の力不足も凄く感じました。ですが、凄く成長できたシーズンでもあり、充実した1年になりました。」

長谷川唯選手のベストイレブン受賞は4年連続4回目

2020年シーズンを終え、INAC神戸レオネッサから、鮫島彩選手、仲田歩夢選手、スタンボー華選手、岩渕真奈選手が移籍。日テレ・東京ヴェルディベレーザから、山下杏也加選手、宮澤ひなた選手、原衣吹選手が移籍します。これから移籍が発表される選手がいるかもしれません。女子サッカーはプロ化で新時代に突入します。多くのクラブは、プレナスなでしこリーグを卒業し、次の舞台がWEリーグ。とはいえ、歴史が唐突に生まれることはありません。2021年から始まるWEリーグの歴史はプレナスなでしこリーグの歩みとつながっています。ピッチ上では、2020年シーズンの何が引き継がれ、何が刷新されるのか、過去10年間のベストイレブン推移の数字をベースに、変化を見極める私たちは歴史の証人となるわけです。

おつかれさまでした2020年シーズン……ようこそWEリーグへ。WEリーグの9月開幕が待ち遠しいです。

この表彰式の肝は冒頭の寄せる言葉にありました

最後に、この表彰式の冒頭で日本サッカー協会名誉総裁であられる高円宮妃 久子殿下より表彰式に寄せる言葉が代読されましたことをご報告します。それは、COVID−19(新型コロナウイルス感染症)感染拡大防止のために尽力されている皆さん、試合を開催するために努力されてきた皆さん、女子サッカーの普及や発展に尽力されてきた多くの方へ感謝の想いが詰まったあたたかなメッセージでした。サッカーが、寛容やリスペクトを促進し、女性や若者のエンパワーメントや個人、コミュニティーに寄与していくことを再確認しました。

岩上和道理事長が、高円宮妃 久子殿下からの表彰式に寄せる言葉を代読

高円宮妃 久子殿下より表彰式に寄せる言葉

初めに、新型コロナウイルス感染症により命を落とされた方を悼むと共に、現在、さまざまな形で感染症により苦しんでおられる方々にお見舞い申し上げます。また、私たちの命を守ってくださっている医療従事者の方々、生活を支えてくださっているエッセンシャルサービスの方々に心より御礼申し上げます。新しい年が世界中の人々にとって少しでも穏やかな年であることを祈るとともに、スポーツ界に、早く、安心してプレーし、思う存分、声を出して応援できる日常が戻って来ることを願っております。本日、2020年プレナスなでしこリーグ、2020年プレナスチャレンジリーグ表彰式で表彰を受けられる皆さんに心よりお祝い申し上げます。1部では浦和レッドダイヤモンズレディースが2014年以来、6年ぶり3回目の優勝、2部ではスフィーダ世田谷FCが初優勝、そしてチャレンジリーグではJFAアカデミー福島が初優勝されました。誠におめでとうございます。2020年シーズンを振り返りますとサッカーファミリー全員が「努力賞」に値するように感じます。4ヶ月遅れでの開催となりサポーターの方々には、最初、リモートで応援していただき、少しずつスタジアムに足を運んでいただけるようになりました。選手を励ます太鼓と手拍子の応援が、選手に届いていることを喜ばしく思うとともに、クラブチームとサポーターの強い絆に心を動かされました。残念ながら、2020プレナスなでしこリーグカップは中止となりましたが、みんなで支え合い、リーグ戦を無事、終えることができて安堵しております。今シーズンは、猛暑の中での開催、厳格な行動管理、開幕前のPCR検査、選手の皆さん、そしてご家族の方にとって困難なシーズンであったと思います。自粛要請が出て練習がままならない中、選手一人一人が「自身に何ができるか」を考え、責任を持って行動していたことを、とても嬉しく思います。日本サッカー協会名誉総裁として、サッカーを守り抜いた選手やクラブ関係者、レフリー、ファン・サポーターを誇らしく思うとともに、一緒に歩み続けると決めてくださったスポンサーの皆さまに感謝申し上げたいと思います。ありがとうございました。今年はWEリーグ開幕の年です。これまで、日本の女子サッカーの普及や発展にご尽力くださいました多くの方のご努力に対し、心から敬意を表する次第です。「ここからが本当の勝負」と気を引き締め、選手の皆さんにはプロとして日本の女子サッカーを引っ張っていっていただき、日本のサッカーファミリにーには、厳しい目と優しく温かい心をもって選手を叱咤激励、WEリーグを育てていただきたいと思います。なでしこリーグ、そして、女子サッカーの益々の発展を願うとともに、まだしばらく続くであろうwithコロナの時代を、一丸となって賢く乗り切っていかれるよう祈念いたしまして、表彰式に寄せる言葉といたします。

(2021年1月17日 石井和裕)

 

 

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