WE Love 女子サッカーマガジン

「さいたまダービーでスペクタクルな試合を見せる使命」に応えるチームにしていきたい 大宮アルディージャVENTUS 佐々木則夫トータルアドバイザー兼総監督インタビュー

トップ写真提供:大宮アルディージャ

アジア人初のFIFA女子世界年間最優秀監督賞受賞者である佐々木則夫さんを追うように鮫島彩選手、阪口夢穂選手、有吉佐織選手が大宮アルディージャVENTUSに加わり、女子サッカーファンの間で話題となりました。鮫島彩選手、阪口夢穂選手はFIFA女子ワールドカップ2011ドイツ大会で日本女子代表が優勝したときのメンバーです。

あの頃の流行語だったのは「絆」。あれから10年。日本の女子サッカーを一大ブームに押し上げた、当時の日本女子代表監督佐々木則夫さんは、WEリーグに参入する大宮アルディージャVENTUSの総監督として、何を起こそうとしているのでしょうか。新チーム立ち上げ(FC十文字VENTUSが母体)の抱負をうかがいました。

大宮を愛する少女の一言から始まった大宮アルディージャVENTUS

大宮アルディージャVENTUSはWEリーグ参入に向けて立ち上がった新チームです。参入の目的を教えてください。

佐々木大宮アルディージャVENTUS立ち上げのきっかけは、大宮アルディージャのクラブとしてのビジョンからであると同時に、大宮を愛してくださる少女からです。僕は「のりさんガールズ&レディースサッカーフェスティバル」をさいたま市で開催していました。

参加者に大宮アルディージャのユニフォームを着ている少女がいました。あるとき、大宮アルディージャのユニフォームを着た小学校4年生か5年生くらいの少女が「(レッズのユニフォームを着ている子は、あのユニフォームを着て、将来、ピッチに立つことができる。けれど)のりさん、私たちは、このユニフォームを着てピッチに立てるのでしょうか?」と、僕に疑問をぶつけてきました。

ハッとして「僕は本気で動かなければならない」と思いました。大宮のサッカー文化を考えていかないといけない。本当は我々が先に考えなければならないことを少女たちが既に疑問に思ってくれていた。それに我々が気づかなかったということを思い知らされました。

それと、プレナスなでしこリーグの集客にもかげりが見えてきていて……我々がFIFA女子ワールドカップ2011ドイツ大会に優勝して、日本の女子サッカーは盛り上がったのですが、女子のサッカーの熱が下がってきている傾向を感じていたので、どうにかしないといけないと思いました。

そんな二つのことがあって、アクションし始めたのが、大宮アルディージャVENTUSの始まりです。

私たちは「子どものときに着たユニフォームを着て、大人になってもプレーできるはずだ」という当たり前のことに大人が気づかなかったのですね。知らず知らずのうちに、女子サッカーのカルチャーが育っていたことを感じますね。

佐々木そうですね。2011年以降、サッカーをプレーする少女たちが増えている現実は把握していました。その中で、中学生年代のプレー環境の整備や、少女たちの選手登録増加の施策を(日本サッカー協会は)やっているのですが、それぞれが点になっていて、連携した線になっていないところから、女子サッカーの環境整備が十分ではなかったことを強く感じたわけです。

さいたま市内では浦和レッズレディースさんが、一所懸命にやってきていただいている経緯はあるのですが、我々も同時に(WEリーグ参入を)やることで、線にして女子サッカーの環境を良くしていくアクションが必要だと思います。

埼玉県にWEリーグ3クラブは多くない

さいたま市は大きな街なので、複数のクラブがあるのは自然だと思いますが、いかがですか?

佐々木埼玉県にはサッカーを経験した大人も少年団の選手も多いです。埼玉県のご家族にお子さんが生まれれば半分は女の子。今回、WEリーグクラブが埼玉県に3つ参入します(浦和、大宮V、ちふれ)が、身近に目標や環境があれば、良い選手は必ず生まれると思います。

皇后杯 JFA全日本女子サッカー選手権大会の決勝戦をNACK5スタジアム大宮で開催しています。とても臨場感があり、僕は、選手たちと応援する人たちの一体感のある試合を何度も見てきました。女子のサッカーをする上で、間違えなく好条件なスタジアムであると強く思います。移籍してきてくれた選手の中に「NACK5スタジアム大宮で試合をできる」ことを移籍理由の一つに挙げている選手もいました。

Jリーグでも使用されるNACK5スタジアム大宮 写真提供:大宮アルディージャ

大宮の街をどのように捉えていますか?

佐々木様々な文化が融合していて、東口・西口で違った特徴を伸ばす可能性を秘めています。大きな商業ビルも出来つつあります。大宮に住居を求める人も増えています(「2021 LIFULL HOME’S 住みたい街ランキング」2位)。商業も居住もとても環境の良い街になっています。そんな街が男子のみならず、女子のサッカーでもホームタウンになる。東日本の玄関となる素晴らしい街だと思います。

大宮の市民はさいたま市への帰属意識よりも大宮区への帰属意識が強いような気がします。そう考えると、浦和レッドダイヤモンズレディースとファンを奪い合うよりも、それぞれのホームタウンでファンを広げていく気がしますがいかがでしょう?

佐々木まさしく、競争しあって、お互いが伸びる要素が生まれます。同じさいたま市がホームタウンなので、共に良さを生かしながら成長していけると思います。現状は、男子は(浦和)J1と(大宮)J2であり、浦和レッドダイヤモンズレディースは昨年のプレナスなでしこリーグの優勝チームです。浦和レッドダイヤモンズレディースは間違いなく、大宮アルディージャVENTUSの先を行くチームです。大宮アルディージャVENTUSは追いつき追い越せの遡上効果で成長できます。

笑顔があふれる初練習 写真提供:大宮アルディージャ

佐々木則夫さん 写真提供:大宮アルディージャ

「フットボール本部」で大宮アルディージャ全体が一貫した育成体制へ

佐々木大宮アルディージャの強化本部と育成普及本部は「フットボール本部」へ統合しました。アカデミーから一貫した育成体制により、男子も、女子(VENTUS)も強化・運営を行います。

(残り 2585文字/全文: 5331文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ