世界に通じる逸材は、なぜWEリーグに行かないのか!? 元なでしこジャパン大矢歩選手の # 女子サカ旅 得点王、オリンピック出場を目指します!
大矢歩選手が今シーズンも愛媛FCレディースでプレーすると知って驚きました。群馬県出身の大矢歩選手は、短大に入学するために愛媛県に移住。愛媛FCレディースでのプレーは2021年で8年目になります。すでに、日本女子代表でもプレーし、インパクトを残している選手です。多くのチームメイトがWEリーグクラブに移籍したのと同じように、多くに人は大矢歩選手も移籍するであろうと考えていました。しかし、予想に反して、大矢歩選手は今シーズンも愛媛FCレディースでプレーしているのです。何が理由なのか、筆者は知りたくなりました。まずは愛媛県の魅力を質問するところから始めてみました。
大矢歩選手が愛媛FCレディースを選んだ理由とは?
—まず、愛媛県のお話をうかがいます。松山市はどのような街ですか?
大矢—松山市は住みやすい素敵な街です。瀬戸内海に面して気候が温和で人が温かいです。自分はパンが好きでパン屋さんによく行きます。ブランジュリ・ユロという自家製天然酵母100%のパン屋さんが三津浜の方(松山市石風呂町42)にあります。自分はハード系のパンが好きなので、ハード系のパンをよく買います。
—確かにハード系のパンが並んでいますね。マークも可愛いです。では、環太平洋大学短期大学部に通った宇和島市はどうですか?
大矢—故郷の群馬県には海がないので、初めて宇和島市に来たときに驚きました。ミカン畑の山から見る海が絶景でした。自分の中では好きな景色です。それと、衝撃を受けたのはお刺身が美味しいことです。
—故郷の群馬県のお友達に松山市や宇和島市への移住はお勧めできそうですか?
大矢—はい!! いつでもお願いします!
—
どうやら、愛媛県(松山市、宇和島市)へのイメージは、すこぶる良いようです。ブランジュリ・ユロは、松山市民でも、あまり便利が良いとは思えない場所にあります。この店を選ぶことからも、大矢歩選手が松山市の生活を満喫していることがうかがえます。しかし、それだけが理由で愛媛FCレディースでのプレーを選択したとは思いにくいです。そこで、筆者は、様々な質問を繰り返し、気になる理由に迫ることにしました。
愛媛FCレディースが大好き
—得意なプレーを教えてください。
大矢—中盤右ワイドでのプレーが多いです。両サイドでプレーできます。身体の強さを生かして、一瞬のスピードで相手の背後に抜け出すことが強みです。ワンタッチ目のプレーは凄く意識していています。「ワンタッチでいつでもプレーできるように」と教わってきました。あとは、ロングキックが得意です。あまり女性の選手ではやらないサイドチェンジをやります。これも強みです。
—山なりではなくて、低くて強い球でサイドを変えますね。あれは効果的ですね。なでしこジャパン(日本女子代表)の試合でも何本も見ました。大矢選手が考える、愛媛FCレディースの良いところを教えてください。
大矢—ボールを大切にすることです。パス、コントロール……こだわってやっています。そして、見ている人が楽しいサッカー……やっている自分たちも楽しいサッカーです。それを日々学べる愛媛FCレディースが大好きです。(プレナスなでしこリーグ1部に初挑戦だった2020年シーズンは)「後ろで回すな」「前に蹴った方が良いじゃないか」という声もありましたが、ここでスタイルを変えてしまったら愛媛FCレディースの良い部分がなくなってしまいます。これは先輩が積み上げてきてくださったものです。簡単にはいかないと思いますが、絶対に、愛媛FCレディースの良い部分をなくしてはいけないと思います。
—簡単にはいかないと思いますし大変だと思います。でも、やっていて楽しいことなのでしょうか?
大矢—やってみて、相手を崩したときに、自分たちの成長が見えてくると思っています。2019プレナスなでしこリーグ2部で優勝した試合で得点したシーンなのですが、GKからスタートしてフィールドプレーヤー全員がボールに触って得点を決めました。それが、これまで、みんなで積み上げてきた成果でした。2020プレナスなでしこリーグ最終節の日テレ・東京ヴェルディベレーザ戦は自分たちの良さを出せたと思います。第1節のINAC神戸レオネッサ戦は0-1で負けたのですが、それでも、けっこうやれていたと思います。
みんなで積み上げてきた成果、雰囲気の良い愛媛FCレディース
—INAC神戸レオネッサ戦は素晴らしい試合でしたね。
大矢—1失点がもったいなかったです。勝てるチャンスはありました。でもその後の、2020プレナスなでしこリーグ1部では、やりたいことをほとんど出来なかった。まだまだ見える自分たちの弱さが解ったから、ここから成長できると思っています。
2021年シーズンはメンバーがガラリと変わりました。それでも、チームの雰囲気は以前と変わらずに作れています。以前の選手が築いてくれたものを生かして、より良いものを作ろうとしています。愛媛FCレディースはフェアプレー賞をとれるくらい、みんな冷静に、チームのために戦える選手が多いと思います。試合ではコーチや監督が怒鳴って抗議してくれていますが、選手たちは冷静だったりします(笑)。
—チームメイトとは仲が良いですか?
大矢—仲が良いと思います。プレーについて話し合える雰囲気があります。三田一紗代選手は同じ会社で勤めているので四六時中、一緒にいる感じです。三田一紗代選手は最年長のGKです。後ろから自分たちを支えてくれます。
大矢歩選手の #女子サカ旅 は高校2年生の時のドイツ留学
大矢—高校2年生のときにFCR2001デュースブルクに留学しました。ちょうど、なでしこジャパン(日本女子代表)が世界一になったときで、FCR2001デュースブルクには安藤梢さん、ドイツ女子代表選手が何人もいました。一緒に練習することができ、かけがえのない大切な時間でした。本当に、ドイツの選手が凄くて圧倒されたことを覚えています。
留学は母に反対されたのですが、本当に行きたかったので説得しました。今は母も応援してくれています(笑)。家族でドイツに行けた期間(留学半年のうちの1週間)もあって楽しかったです。ドイツでは言葉の壁があって自分のプレーを伝えられない……言葉の大切さを実感しました。スーパーマーケットの売り場にチョコレートがいっぱい並んでいたりするのを体験出来て嬉しかったです(笑)。それと、どこのパン屋さんに行ってもパンがおいしかったです。
—ドイツだからハード系ですね?
大矢—そうです。大好きです。そこから自分はハード系を好きになりました。クリスマスマーケットもとてもきれいで好きです。またチャンスがあれば行きたいと思っています。
—次にチャンスがあれば、それ、移籍ですね?
大矢—(笑)行けたらいいなと思います。でも、あのとき、ドイツでプレーすることの難しさも実感しています。
—
サッカーの代理人を描いた『となりの代理人 -フットボール・エージェント-』、女子サッカー選手を描いた『レディース!』を連載している愛媛県松山市出身の漫画家・能田達規さんに大矢歩選手の選択について質問してみました。すると、このような答えが返ってきました。
能田—女子サッカー選手にとってWEリーグとプレナスなでしこリーグと選択肢が広がったことはとてもいいことだと思います。大矢歩選手のように、多くの選択肢の中で、愛媛FCレディースでプレイすることを選んでくれた女子サッカー選手の期待に応えられるかどうか、地元の方のこれからの環境整備、サポートの充実が問われていると思います。愛媛FCレディース、応援しています!
WEリーグに行きたい気持ちもあった
—今シーズンも愛媛でプレーされます。なぜでしょうか?
(残り 2018文字/全文: 5824文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ