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【女子サカの街を訪ねて】横浜でレガシーを味わいながらTokyo2020(東京五輪)を、スポーツを愛する人たちの手に取り戻してほしいと思う

開催に賛成・反対の意見が分かれるTokyo2020(東京五輪)は、次世代に何を残してくれるのでしょうか。私たちは、何を伝えることができるのでしょうか。「レガシー」という単語が、ひと頃、よく使われていました。「精神的・物理的遺産」のことです。オリンピックにおいては、業績、ノウハウ、そして競技場やアリーナのような施設を指すことが多い単語です。

根岸線(関内駅)

根岸線(関内駅)

解体が進む横浜文化体育館

ニッパツ横浜FCシーガルズのホームタウン・横浜市の中心部として戦後から栄えてきた関内駅近くに、1964年の東京オリンピックでバレーボール競技やバスケットボール予選の会場になった横浜文化体育館があります。数々の名勝負を生み出した舞台です。コンサート会場としても、美空ひばりさん、石原裕次郎さん、クイーンやボン・ジョヴィ等、410を超えるアーティストが公演を行いました。筆者は、闘龍門プロレスの旗揚げシリーズで足を運んだ思い出があります。横浜文化体育館が出来た時代には「レガシー」という単語は、あまり使われていなかったことでしょう。

解体工事が進む横浜文化体育館

東京オリンピックの時代に生まれた根岸線、4代目伊勢佐木町ウェルカム・ゲート

桜木町駅から磯子駅までの根岸線は、東京オリンピックに合わせて1964年に開通しました。この鉄道の開通により、横浜市の労働力を支える大規模な団地が、沿線に出現します。そして、関内駅に近い伊勢佐木町が横浜市の中心街として栄えていきます。横濱大空襲で焼け野原となった伊勢佐木町は復興が遅れていましたが、根岸線が急速に街を蘇らせたのです。聖火リレーのコースにもなりました。聖火ランナーを迎えるために4代目伊勢佐木町ウェルカム・ゲートを竣工しました。その美しいデザインは、この地域の戦後のイメージを一新したそうです。現在は、白い5代目の伊勢佐木町ウェルカム・ゲートが訪れる人を迎えています。

かつては横浜市全域からの買い物客を迎えた伊勢佐木町のウェルカム・ゲート

かつて、筆者は、この街でサッカー映画を見ました。しかし、現在の伊勢佐木町に、横浜市の中心街としての賑わいはありません。古い小さな商店街の佇まいとなっています。144年の歴史を持つ横浜松坂屋は2008年に閉店。ここには、シンボルとなる百貨店・ショッピングセンター、映画館がありません。

横浜文化体育館が、1964年の東京オリンピックで使用されたこと、伊勢佐木町を聖火ランナーが走ったこと……記憶に残している人は、どれほどいることでしょう。「レガシー」という単語は気軽に使われますが、実際は、あっという間に風化してしまいます。

横浜のレガシーを次世代の人々に渡すことに成功したハーバー

ハーバーは1954年に発売されたお菓子です。1950年代は第二次世界大戦から復興直後。栗を使ったお菓子、洋菓子はまだ贅沢とされた時代です。「マロン」に夢を託す意味を込めて「ロマン」と命名。その後、ハーバーに名前を変えました。

ところが、販売元だった有明製菓株式会社が不動産投機などの失敗により、1999年6月に倒産しています。横浜銘菓として愛されてきたハーバーは市場から姿を消してしまいました。倒産の翌年「あの、ありあけのハーバーをもう一度食べたい!」という、昔からのハーバーファンの地元市民の方々、元有明製菓の社員とが一致団結し「ハーバー復活実行委員会」を結成。2001年にハーバーは復活しました。2021年で復活から20周年になります。ハーバーは、横浜のレガシーを次世代の人々に渡すことに成功しました。ハーバーは、今も横浜銘菓として愛されています。

味と香りを楽しめる焼きたてロイヤルハーバー

日本大通りに近くに「ありあけ本館 ハーバーズムーン」があります。カフェの人気メニューはエッグベネディクト。そして、ホカホカの「焼きたてロイヤルハーバー」です。

ボリューム満点のエッグベネディクト

政治問題に染まったTokyo2020(東京五輪)

この数年、Tokyo2020(東京五輪)を巡る話題は、スポーツそのものというよりも、政治や経済の文脈で語られるものが多いと感じます。メディアが、そのように報じるだけではなく、政治アピールを好む属性の市民も同様にTokyo2020(東京五輪)を語ります。メディアに所属するジャーナリストが、政治を語る目的でSNSから発信するTokyo2020(東京五輪)の話題も膨大です。

大学生・池江璃花子選手に対して、SNSを通じてTokyo2020(東京五輪)の出場辞退等を求めるコメントが多く書き込まれた事件は、その典型例です。池江璃花子選手に対するコメント全体の23.%程度が辞退の要請の書き込みでした。辞退を求めるツイートを行っているアカウントの33%はフォロワー数が10以下であり、33%のアカウントのプロフィールが空白。これは、正々堂々と意見を述べるのではなく、匿名により池江璃花子選手に対して圧力をかける意図を示しています。それが血の滲むような努力をして病に打ち勝ち、出場権を得た大学生に対する仕打ちです。※鳥海不二夫教授(東京大学大学院工学系研究科)による

なぜアスリートが政治主張に巻き込まれなければならないのか

こうしたアスリートへの圧力に対して、大手メディアが足並みを揃えて「アスリートを守れ」と声を挙げないことに、筆者は不満を感じています。それどころか「池江選手に五輪辞退をお願いするのは酷くない/アスリートと一般市民の利害は今や根本的に対立している。そうさせたのは、コロナ無策のまま五輪を強行しようとする政権の姿勢だ」という記事まで掲載され、いくつかのメディアは市民とアスリートの対立を煽っているのです。

ニッパツ三ツ沢球技場の前にある平沼さんの像(秩父宮妃殿下の御手蹟)

この記事を掲載する時点で、Tokyo2020(東京五輪)は開催されるか、それとも開催されないか、全くわかりません。ただ、一つ言えることは、このままだと、いずれの結果になったとしても、レガシーとして後世に引き継がれるのは「Tokyo2020(東京五輪)を巡る醜いプロセス」になってしまうということです。Tokyo2020(東京五輪)に出場するためのアスリートの努力、素晴らしいスポーツの記録、美しいスポーツの記憶も、後世に引き継がれることはないでしょう。それで良いのでしょうか。このままでは、スポーツを嫌いだ(政治・経済的な理由で)という人が増えてしまうことを危惧します。

日本中のスポーツを愛する人が、今一度、皆で楽しくスポーツを語ることは許されないのでしょうか。開催予定日まで、あとわずかしかありませんが、なんとか最後に、Tokyo2020(東京五輪)を、スポーツを愛する人たちの手に取り戻してほしいものです。無邪気に笑い、叫び、泣き、感動するだけのスポーツに戻してほしい。横浜文化体育館の解体現場を見学し、「ありあけ本館 ハーバーズムーン」で「焼きたてロイヤルハーバー」を味わいながら、そんなことを思いました。皆さんは、どのようにお考えになられますか?

(2021年5月20日 石井和裕)

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